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[コラム5.3] 「不安」を利用して自分を訓練する

不安やイライラするというようなネガティブ感情は、「そこに問題がある」ということを私たちに知らせてくれます。そうすると私たちは、それを解決しようとして、注意の資源(注意力)をそこに集中します。このようにして、その問題をなんとか乗り切ろうというわけです。

ネガティブ感情は「何か問題がある」ということを知らせてくれるので、それ自体では悪いものではありません。問題は、注意をそこに集中しすぎてしまうので、しばしばまずい対応になってしまうことです。怒りのあまり、言わなくてもいいことまで言ってしまって、ますます問題をこじらせてしまうのはその例です。

バーバラ・フレドリクソンの『ポジティブな人だけがうまくいく3:1の法則』(日本実業出版社, 2010)という本では、ボジティブ感情を増やすことが成功と幸福の元になると主張しています。しかし、ネガティブ感情はゼロにすることはできませんし、むしろ役に立つことなのです。それは「何か問題がある」ということを知らせるという働きです。

アドラー心理学的な説明をすれば、そこに何か問題があるので、それをなんとかしようという「目的」のために「感情を起動する」ということです。何か問題があっても、それをなんとかしようと思わなければ、感情を起動する必要はありません。

さて、私たちは日常的にいろいろな課題に直面しています。その課題は大きく分けてみると、自分自身で問題を解決することと、自分と相手との対人関係をうまくやることに分類できます。

たとえば、テストが不安だとか、発表会でうまくできるかどうかが不安だというようなネガティブ感情はよくあることです。これは、自分自身で練習したり、努力することだけが問題解決になります。その結果として、不安はゼロにはならないにしても軽減されます。そうなんです。不安は努力を起動するためのスターターだったのですね。

とすれば「不安を感じる→練習する」というリンクを習慣づければいいわけです。しかし、不安を感じるとそれに対処できずに、違うことをやって気を紛らわせたり、先延ばしをしてしまったりするケースが多いのです。しかし、気を紛らわせても、先延ばししても、問題は解決していません。むしろ、そうやって回避してしまった自分を責めてしまったり、後悔したりすることもあります。

そうなるとネガティブ感情が循環的に増幅して解決しようがなくなります。ですので、唯一の解決策は、「不安を感じる→練習する」という行動パターンを習慣づけるように自分に訓練するということになります。

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