039 [おとなの研究] 自分の授業を研究する〜混合研究法
自分が担当している授業で、何か新しい教え方の工夫や、ユニークな教材を導入したということがあれば、その効果を測りたくなります。良い効果があればその工夫を継続します。逆に、特に効果がないというのであれば、別の工夫を考えるということになります。それは自分の授業を改善するサイクルの一環です。同時に、そうしたことを積み重ねていくにつれて、それを研究の形にしたくなってくるでしょう。今回は、自分の授業を研究する方法を紹介します。
授業の成果を測る4種類の方法
授業を実施して、その成果を測る方法は、大きく分けて次の4つの種類があります。
(1) 受講生の最終的なパフォーマンス
1つ目は受講生の最終的なパフォーマンスです。これは、最終テストや最終レポート、あるいは最終プレゼンテーションなどによって、受講生がどれだけの知識とスキルを身につけたかを測ります。これは同時に、受講生の成績をつけるための基礎データとなるでしょう。授業を研究するかどうかにかかわらず得られるデータです。
(2) 受講生の体験としての授業評価データ
2つ目は受講生の体験としての授業評価データです。これは、コースの最後に実施される授業評価アンケートに代表されるものです。通常は大学で統一されたアンケートフォームが用意され、それに受講生が回答する形で得られるデータです。このアンケートでわかるのは、受講生がこの授業をどのように体験したかを感情的側面(おもしろかった、楽しかった)と認知的側面(ためになった、役立ちそう、自信がついた)で測ったものです。
(3) 心理尺度で測られる態度の変化
3つ目は心理尺度です。これは、この授業が間接的に目指している成果を測るためのものです。間接的に目指しているものとは、授業が直接的に取り扱っていない態度的な側面の成果です。たとえば、授業内のグループワークを通じて、リーダーシップ的な態度の形成と行動の変容を目指しているならば、リーダーシップに関連する心理尺度を使って、その変化を測りたいと思うでしょう。これは、授業が直接取り扱う内容とは独立したものです。
このとき使う心理尺度は、すでに確立した尺度があるならばそれを使います。これは論文を検索すれば見つけられるでしょう。一方、自分の研究で独自に測りたい概念があって、既存の尺度がない場合は、自分でオリジナルの心理尺度を開発することになります。この場合は、オリジナルの心理尺度を開発し、その信頼性と妥当性を確認するために、まずそうした研究をしておく必要があります。
心理尺度は、可能であれば、授業の事前/事後/フォローアップの3時点で取ります。事前調査は授業の1回目あるいは2回目で取り、事後調査は授業の最終回あるいはその1つ前で取ります。フォローアップ調査は、授業が終わってからなるべく期間をあけて取るのがいいです。たとえば、3ヶ月後、6ヶ月後、1年後のような時点です。この期間が長いほど、態度の変化が持続的であることを検証するのに適切なデータとなります。しかし、期間を長くあけるほど、回答の回収率が悪くなりますので、このトレードオフの関係を見ながらあける期間の長さを決めると良いでしょう。
(4) 自己評価ではないパフォーマンスデータや行動データ
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