反転授業の設計と実践(Part 4)
2016年12月31日
■グループワーク「グループワーク形式を使うとしたら」
ではここで、2回めのグループワークにいきたいと思います。「もし、皆さんが自分の授業の中でグループワークの形式を使うとしたら、どのようなものにしたいですか」ということを考えていただいて、先ほどと同じように、シェアしていきたいと思います。次は、ブルーのポストイットです。では、2分間で考えをまとめていただいて、書いてください。
向後 はい、どうもありがとうございました。それでは、またサイコロを振っていきたいと思います。(サイコロを振る)8の8。一番後ろのこちらから8列め。では、お1人ずつお願いします。
小﨑 聖書などを担当しています、小﨑と申します。
私は、聖書の物語をグループの中で役割を決めてやった後、この物語にはどのような続きがあるかということを学生同士で話し合ったり、その部分を考えたりするということを言いました。
それからもう一つは、命のこと、倫理のようなことも授業でやりますが、ディベートのようにして、たとえば、がんの告知をすべきかどうか、安楽死を認めるか認めないかということを、それぞれの立場に立って、いろいろな意見を出し合って、考えるようなことをしてみたいと思っています。以上です。
向後 はい、ありがとうございます。
中川 皆さん、こんにちは。教職課程センターの中川と申します。
私の授業は、教育カウンセリングの授業のことを言いました。不登校やいじめの問題がありますので、立場を決めて、いじめられている子と、いじめる子のロールプレーをやります。それを反転させて、逆の立場でやります。それを見ている人はどのように感じるかということを、グループでやります。
もうひとつ言いますと、それに関わるような教育自治的な記事を、1週間以内という中で一応持ってきまして、そのときのタイムリーな話題について、ディベートをしております。以上です。
向後 はい、ありがとうございます。
成橋 薬学部の成橋と申します。薬学部ではすでにこのようなグループワークを実習でやっているので、実践していることを申し上げました。
何らかの形のシナリオを、学生に渡します。医療に関わるシナリオ、そのようなものを渡して、まず、問題がどこにあるか、問題を抽出してもらいます。抽出してもらったその問題をどう解決するかということを、グループワークとして調べてもらう、考えてもらったらいいと思っています。
あと、ロールプレーとしても、患者役、薬剤師役とそれぞれ分けて、それをお互いに何らかの課題を与えて、ロールプレーをしてもらったらいいと思っています。
向後 はい、ありがとうございます。
塘 現代こども学科の塘です。発達心理学などを教えています。2点お話します。
一つは現代こども学科の宣伝といいますか、現代こども学科の教職実践演習というものがあります。教職を取らなければいけない学生は取っているものですが、そこで、教育実習や保育実習の体験、それから、「マイネカルテ」というものを、現代こども学科では膨大なものを書いています。学びの履歴と言われるものですが、それをグループの中で共有化して、具体を抽象化して、さらにプレゼンをさせます。1分間でプレゼンさせるというようなことを、本当に日常的にやっています。そうすると、そこの中で、学生たちは、自分たちのばらばらの体験を、どうやって共有化して抽象化していくかというようなスキルが身についていきます。
2点目は、私の授業でやっていますが、ロールプレーをやっています。特別支援が必要なこどもたちに対してどのようにするかという宿題を出しておいて、グループで考えさせて、それを発表させるというようなものです。そこで大事なことは、先生の役をする学生は大事ですが、もっと大事なのは、こどもの役をする学生です。こどもの視点から、どのような支援をされたいかというようなことを体験化させて、話し合わせるという授業をしています。以上です。
向後 はい、ありがとうございます。皆さん、授業の中で、このようなグループワーク型の授業をされているので、非常にバリエーションのある提案が出ました。ディベート、それからロールプレー、それからシナリオ・ベースのもの、それから記事などを使う事例ベースのもの、このような形で材料を集めてきて、さまざまな形式のグループワークができますので、ぜひ皆さん方の授業の内容に合った形の実習を、自分で作り上げていただきたいと思います。
私も時々ロールプレーをやりますが、ロールプレーは非常に疲れます。見ているほうも疲れるし、やっているほうも疲れますが、そこに対するフィードバックが大切です。学生に、ディベートならディベート、ロールプレーならロールプレー、シナリオ・ベースで問題解決するなら問題解決させるわけですが、その中に何らかのフィードバックを入れることが必要です。やりっぱなしではなくて、どのような点が良かったか、どのような点は改善すべきかということを、先生1人だけではなくて、TAも入れて、ファシリテーターという形で入ってもらって、フィードバックしていくほうがいいと思います。
それから、私の場合は、このようなグループワークをしてもらった後は、必ずショート・レポートを書いてもらっています。それは、グループで一つの作品を出すというわけではなくて、終わった後で、個別にショート・レポートを書いてもらいます。今回の授業でやったグループワークは、あなたにとってどのような意味があったのか、あるいは、あなたはどのようなことを学んだのかということを、300字でも400字でもいいので、言葉にしてもらうことが大事かと思います。それは個別の成績をつけるときにも使いますし、それから、個人で、自分で内省して、自分にとって今回のワークはどのような意味があったのか、振り返る機会にもなると思います。
■大福帳とは
ということで、早いもので、あと10分になってしまいました。この時間を使って、補足的な話をしたいと思います。
まず、大福帳ですが、これは三重大学の織田揮準先生という方が発案されたもので、普通ですと短冊型の出席カードのようなものを使いますが、それをまとめて、A4版の裏表、全15週ありますので、15回分、全部印刷してしまうという形です。このような形で、授業が終わると、授業の感想を自由に書いてもらっています。それが、出席の証です。
これのどこがいいかというと、代返ができません。2人分の感想を書くことはほとんど不可能です。それから、皆勤賞を目指すという、良い目標ができます。どこかで欠席してしまうとその欄が空欄になってしまいますので、なるべく出席しようという意欲が湧きます。
右側の欄に、先生からの返事が書けるようになっています。300人分を書くと、大体5時間かかります。私は、申し訳ないのですが、TAの方に書いてもらっています。前に、「読みました」判子を作ったのですが、不評でした。ですので、大福帳をやるのであれば、返事を書く覚悟をした方がいいです。織田先生も、全部返事を書いていますと言っていました。
■ビデオ収録の副産物
それから、ビデオを作っていくと、非常に良い副産物があります。最初の年はスライドを使ってレクチャーを収録するわけですが、その次の年には、それを文字起こししてもらいます。そうすると、何となくテキストのようなものができます。画像なども、画面からキャプチャーして貼り付けていくと、感じの良いテキストができます。自分オリジナルのテキストができます。
私の感覚だと、3年ぐらいかけて1冊のテキストができます。そのテキストを公開して、それを使えば、独習できるようにしています。ですので、授業をしゃべっただけで終わるのではなくて、それを収録することによって、こうした副産物を作っていただきたいと思っています。
■4コママンガを描く練習
他ではあまりやっていないと思いますが、4コママンガの練習もやったことがあります。私のゼミの卒業生に、すがやみつるさんというプロのマンガ家がいて、京都精華大学の教授になっています。その方がYouTubeで「4コママンガの描き方」を公開しています。それを使って、自分のキャラを作って4コママンガを作ることを、5週間の最初の授業の15分間を使ってやっていきます。そうすると、このように描くことができます。
これは何の利点があるかというと、いろいろなプレゼンテーションをするときに、自分のキャラクターを出して説得すると良い効果があるのではないかということなんです。もし、絵心があれば、そういうときに役立つと思います。これは非常に好評でした。
■ゼミをオンラインでシステム化する
最後に、ゼミをどのようにシステム化するかということは長年の懸案事項でした。「サイボウズLive」という無料のグループウエアのサービスがあります。そこの掲示板を中心に使って、一人ひとり個別指導を、オンラインと、それから対面のゼミもやります。このように、オンラインと対面の両方でサポートしていくと、卒論指導も修論指導もうまくいくことが分かってきました。
では時間が来ましたので、私の話は終りにしたいと思います。
(Part 4 終わり)
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