評価経済社会を生き延びるための「いいひと」戦略
2022年4月8日(金)
大学の生協食堂に行ったら、大勢の学生でにぎわっていました。本当に久しぶりですね、こうしたにぎわいを見るのは。いいですね〜。大学はワイワイガヤガヤしている場所であってほしいです。そう思いました。
さて、先週は岡田斗司夫の「評価経済社会」について紹介しました。
評価経済社会とは、評価と影響を交換し合う社会である。現代は貨幣経済社会から評価経済社会へと移行している。評価はお金に変わる(例:ディズニー)。しかし、お金だけでは評価を生み出すことはできない。これからの消費は単純にモノをお金で買うということではなく、自分の好きな対象を支えるというようなサポーター的なものになっていく。
評価経済社会の中での個人のふるまいの特徴は次の3点。
(1) 他人をその価値観で判断する
(2) 価値観を共有する者同士がグループを形成する
(3) 個人の中で複数の価値観をコーディネートする
では、このような評価経済社会の中で人がサバイバルしていくためにはどのような戦略が有利でしょうか。岡田斗司夫は、それは「いいひと」というキャラクターを演じることだと『超情報化社会におけるサバイバル術:「いいひと」戦略』の中で主張します。その内容を紹介します。
岡田斗司夫『超情報化社会におけるサバイバル術:「いいひと」戦略』(株式会社ロケット, 2014)
Googleやfacebookで求める人材について聞いてみると、それはすごいスキルを持った超天才ではなく「Good natured person」だという。つまり「いいひと」だ。単にスキルが高い人は外注で契約すればいい。その一方、本社に置いておくべき人は、まわりの人の仕事のじゃまをせず、楽しく協力しあえるグッド・ネイチャード・パーソンだというわけだ。
「いいひと」の特徴は、他人に親切、何を言われても心が折れない、うまく人を褒めてやる気にさせる、もめごとを起こさず仲良く付き合える、他人の失敗や非礼を許す、などだ。こうしたキャラを演じることがますます重要になってきている。
私たちが仕事をしていて使うエネルギーの大部分は対人関係で消費される。攻撃されないように慎重に発言したり、必要以上にお礼を言ったり、行きたくない飲み会に行くなどの高いコミュニケーション・コストを支払っている。
古代の日本や中国は評価社会をベースとした人格者文明だった。徳や人格を保証するものとして家柄や身分が重んじられた。現代は、再び人格者文明に入りつつある。しかし、それはハイパー情報化社会によって誕生した評価経済社会をベースとしたものだ。
オンライン・コミュニティは3つのC、つまり、コンテンツ(Content)、コミュニティ(Community)、キャラクター(Character)によって成立する。この中でコンテンツはキャラクターとコミュニティによって作り出されたものであり、あくまでも収穫物にすぎない。コンテンツは情報化社会の中にあってはどんどん無料に近づく。3つのCの仕組みは古くはプラトンのアカデメイアや江戸時代の適塾と同型である。
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このように現代では「いいひと」を演じることが重要なスキルになっています。でも、そんなことを続けていたら「本当の自分」を失ってしまうのではないかという不安もありますよね。そのような「近代的自我」というのは実はもともとないのだ、という立場をとることもできます。それでも「ここからは(誰も知らない)本当の私」と呼ぶべき領域を守りたい人はいるでしょう。
そこで最後の「スマートノート」に連結して3部作が完成します。この最後の本についてはまた別の機会に紹介します。
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