【連載】教える技術講座#03:教えることは協力すること。
2017年1月27日
(金曜日は現在開講中のオープンカレッジ講座「教える技術」をネタにして連載しています)
前回は「キャロルの時間モデル」を取り上げました。もし自分が学ぶのに必要な時間が与えられているならば、全員が100%習得できるはずです。これを「キャロルの時間モデル」と呼びます。
一見して当たり前のことのように思えるキャロルの時間モデルですが、学校というシステムではこれが実現されていません。クラス全体が決められたスピードと順番で学習を進めていきます。そのスピードがちょうど合っている人は全体の3割か4割くらいです。それ以外の人は、スピードが速すぎてついていけないか、あるいは逆にスピードが遅すぎて時間を持て余しているのです。
これがクラスを編成して教える形式の学校のシステム的な欠陥です。しかしそれを長所に変える方法があります。
あるスキルの習得にかかる時間を縦軸にとって、習得時間の短い人から長い人の順番に並べるとこの図のようになるでしょう。
横軸の真ん中あたりの人たちが習得時間の平均的な人たちであり、彼らには授業のスピードはちょうど良いものになります。しかし、横軸の右側の人たちは授業スピードよりも習得時間が長くかかりますので、結果として授業から置いていかれることになります。逆に横軸の左側の人たちは授業スピードよりも習得時間が短いので、時間を持て余して授業以外のことをして時間を潰すことになります。
習得時間が長い人に対しては、より効果的な教え方やトレーニングの方法を使えば、習得時間を短くすることができます。これも当たり前のことです。とすれば、習得時間の短い人たち(グラフの左側の人たち)が習得時間の長い人たち(グラフの右側の人たち)に教えて助ければいいのです。そうすれば、クラス全体としての習得時間が最も短くなります。
副産物として、教えた人は教えるために知識の整理をすることになり、結果として深い理解を獲得するでしょう。教えることが自分の学びになっているということです。
教える内容については各個人によって得意不得意があります。数学が得意な人は歴史が苦手だったり、美術が苦手な人がサッカーは得意だったりします。このようにある領域では教える人になり、別の領域では教えてもらう人になったりするのです。
こうしたシステムをクラスの中に作り上げることで「助け合い協力し合う文化」をクラスのメンバーが獲得することになるでしょう。
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