【お題拝借】人前で発表するのが苦手です。
日曜日は皆様からの質問やテーマをいただいて「お題拝借」で書いています。質問は「Peing 質問箱」からお送りください。匿名で送ることができます。
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[Q] 人前で発表するのが苦手です。克服するにはどうしたらいいでしょうか?
ひとつは練習することです。特に原稿を見ないで話せるように練習しましょう。もうひとつは、失敗を恐れないことです。流暢に話すより、自分の話し方で話しましょう。そのほうが聞き手は聞いてくれますよ。
人の前で何かを話すという機会は誰にでもあります。自分の意見や話をおもしろく、楽しんでできるといいことがたくさんあるでしょう。2017年2月から6月にかけて「みんなの前で話す技術」という記事を全12回で連載しました。今回はその最初の3回分をお届けしましょう。
みんなの前で話す技術
01 おとなの"Show and Tell”
02 「これについて聞いてほしい!」ということがあれば話すのが楽しくなる
03 15分で一区切りする
01 おとなの"Show and Tell"
この連載講座に「みんなの前で話す技術」というタイトルをつけてみました。「みんな」というのはどれくらいの人数なのでしょうか。多いところでは数百人、少ないところでは3人くらいの人数を想定しています。
私は大学の授業で100人とか200人くらいのクラスを持って、その人たちの前で話しています。定期的に大勢の人の前で話す機会があるのは、教員や研修講師といった職業についている人でしょう。しかし、こうした職業についていない人でも、3人とか5人くらいの人の前で話をすることはあります。
友達と一緒にお茶を飲んでいて、「そういえばこんなことがあってね……」とか「この前こんな映画を観たんだけど……」という出だしで話を始めれば、そこにいるみんながあなたの話を聞こうとするでしょう。その瞬間、あなたは「みんなの前で話す技術」を使って話をしていくことになるのです。
「いやいや、そんなにすごいことじゃないですよ。私は単に"おしゃべり"をしているだけですから」。そのとおりかもしれません。しかし、単におしゃべりをしているとしても、そのおしゃべりがわかりにくい人と、わかりやすくてしかも面白い人がいます。つまり、おしゃべりの上手い人と下手な人がいるわけです。それはどこで分かれるのでしょうか。
アメリカやカナダでは、キンダーガーテン(幼稚園)から小学校の低学年では「Show and Tell」という活動を行うそうです。これは、子供が自分の好きなもの(おもちゃとか写真とか絵本など)を持ってきて、みんなの前でそれについて話をするという活動です。こうしたトレーニングを経て、自分の考えをうまく伝える技能やパブリックスピーキングといったスキルに繋がっていくのかもしれません。
一方、日本では「Show and Tell」のような、みんなの前で話す機会やそのトレーニングというのはめったにありません。みんなの前で話すのは「偉い人」なのであって、自分たちには関係のないことだという暗黙の了解もあるように感じられます。
しかし現代では、誰もがみんなの前で話す機会がやってきます。喫茶店でのおしゃべりから、少人数での打ち合わせやミーティング、公式・非公式な会議や会合など。また、テーマの決まった講演やプレゼンテーション、報告会などをする機会もあるでしょう。みんなの前で話す技術は、教員や講師や「偉い人」だけのものではなく、すべての人に必要な技能となりました。
この連載講座ではこの「みんなの前で話す技術」について考えていきたいと思います。「おとなの"Show and Tell"」をやっていきたいのです。この連載を読んでいただければ、みんなの前で話す機会がやってきても恐れることなくチャレンジしていけると思います。
02 「これについて聞いてほしい!」ということがあれば話すのが楽しくなる
前回はこの連載で「おとなの Show and Tell」をやっていきたいということを言いました。幼稚園の子供が Show and Tell をやっている様子は、YouTubeを検索して見ることができます。みんなすごく楽しそうに話していますね。なぜ楽しそうに話しているのかというと「このお人形について聞いてほしい!」「このオモチャのパトカーについて聞いてほしい!」という気持ちがあって、Show and Tell の時間にそれがかなえられるからなんだと思います。
「おとなの Show and Tell」でも同じことです。「これについて聞いてほしい!」という気持ちがまず最初にあります。そしてそれをみんなに聞いてもらう機会と時間があるわけです。そうするとみんなの前で話す機会がとても楽しいものになります。
私の講演や授業に参加してくれた方から、たまに聞かれることがあります。「先生はなんでそんなに楽しそうに話しているんですか?」と。ああそうなんだ。あまり気にしたことはなかったけれども、私が話しているときは楽しそうに見えるんだ。必ずしもいつも楽しく話しているわけではないですが、実際話していて楽しいなあと思うことはしばしばあります。
その理由は簡単です。私が「これについて聞いてほしい!」と思っている内容があって、それを大勢の人に聞いてもらえているからです。たとえ聞いてほしいと思っている内容があっても、聴衆がつまらなそうにしていると、私も楽しくありません。そんなときは、だんだん話しの流れも悪くなり、ますます聴衆も退屈し、しまいには自分で話していてもつまらなくなってしまいます。
そうすると、楽しく話すことができるためには次の2つの条件がそろうことが必要です。
(1) 話し手が「これについて聞いてほしい!」という内容を持っていること
(2) それを聞いている人が面白そうに聞いていること
誰でも「これについて聞いてほしい!」と思っていることがあります。面白い体験やびっくりした体験、読んで面白かった本、観て感動した映画、自分の長い体験の中から考えたことなど、それを話して相手にわかってほしい、広めたいと思っていることがあります。
そうなると、それを聞いている人が面白く聞いてくれるという条件がそろうかどうかが、楽しく話すことができるかどうかの決定要因になります。(1)を(2)につなげること、つまり、聞いてほしいと思っている内容を、相手が聞いて面白く思ってもらえるような形にすることがポイントです。これが「みんなの前で話す技術」ということです。
(1) 話し手が「これについて聞いてほしい!」という内容を持っていること
↓ 【みんなの前で話す技術】
(2) それを聞いている人が面白そうに聞いていること
聞いてほしいと思っている内容を、聞いて面白いと思ってもらえるような形にする技術とその訓練法について、次回から書いていきたいと思います。
03 15分で一区切りする
前回は、自分が聞いてほしいと思っている内容を、相手が聞いて面白く思ってもらえるような形にすることが「みんなの前で話す技術」だということを説明しました。
これから「みんなの前で話す技術」の具体的な方法について説明していきたいと思います。今回は「15分で一区切りする」という技術です。
何かを話す機会を与えられる場合、まずその時間の長さが決められます。「10分で話してください」と言われたときには、あまり悩む必要はありません。とにかく10分で話さなくてはならないのですから、どのように内容を整理して、どんなエピソードや具体例を入れればいいのかを考えればいいのです。10分ではあれもこれも話す余裕はありませんので、逆に何を削って、どんな内容に集中するのかということを決めればいいのです。
一般的に、みんなの前で話すという機会が与えられる場合は、30分、60分、90分のようなケースが多いでしょう。このようにある程度の長さの時間を与えられたときは、15分を1つの区切りとして考えるのがいいやり方です。
15分を1つの区切りにするということの根拠は、教えるときにどのような時間配分をするのが最適かという経験則によります。たとえば、以下のような経験則によるルールが提案されています。
・20-40ルール
60分のうちレクチャーは20分以内にして、残りの時間は練習や議論にあてる。
・15/85ルール
レクチャーやプレゼンテーションは全体の15%に抑えて、残りはグループ活動などにあてる。
・90/20/8ルール
1セッションは90分以内で終える。レクチャーは20分以内で終える。8分ごとに参加者が何か参加できる機会を作る。
(ロバート・パイク『クリエイティブ・トレーニング・テクニック・ハンドブック』)
つまりこれらの経験則が共通して言っているのは、スピーチは長くても20分を超えてはいけないということです。20分を超えるとどんなに集中力のある人でも集中力が途切れてきます。つい、あくびをしてしまう人も出てくるでしょう。あくびをする人が目に入ると、話し手は焦ります。「あれ? 私の話が面白くないのかな?」と考えてしまいます。そうするとますます焦って話が収拾つかなくなるという悪循環になってしまいます。
ですから話したいことがらがいくつかあるとしても、1つの話題については20分以内でまとめるようにしましょう。時間の目標を15分にしておけば20分以内に終えられるでしょう。
1つの話題を15分でまとめたらそのあとどうするのか。質問をうけつけるのもいいでしょう。質問を紙に書いておいてもらうのもいいでしょう。あるいは隣の人とペアを組んでもらって、今話したことについて簡単に感想を述べあうというのもいい活動になります。
要するに、「集中して話を聞く」というモードを、15分を区切りとしていったん解除してもらうということなのです。モードを切り替えることで、集中力が回復します。集中力が回復したあとで、2番目の話題に入っていけばいいのです。
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