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森田たま『石狩少女』を聖地巡礼的に読む

森田たま『石狩少女』(ちくま文庫 2024年)を読んだ。
明治時代の札幌が舞台になっている、随筆家の著者の自伝的な小説。出版は昭和15(1940)年7月という。

「暮れてゆく門辺に立って、手稲、藻岩の山々を遠くながめていた」
この一文で読んでみようと決めた。

明治のころと現代とでは「小説を読む」ことの意味は大きく異なる。当時は立身出世、良妻賢母主義に反するものとされていた。しかし現代でも文学は「すぐに役に立たないもの」と見做されている。
しかし物語を読んで思考や想像力を養うことは、人生に深みと知恵をもたらすと考える。

舞台は札幌なので、作中に登場する場所について調べてみた。
森田たまの生家は、札幌市中央区南1条東4丁目7。個人宅の一部で小さい案内板が立っているようだ。
ここからなら作中の描写の通り、手稲山の左肩(西)に日が沈み、藻岩山が見える。

作中に出てくる「富貴堂」とは富貴堂書店。明治31年(1898)開業、2003年閉店。書籍や学用品を広く扱っていたという。
当初は狸小路にあり、1906年に南1条西3丁目に移転する。
この場所は札幌パルコの場所である。1975年8月に札幌パルコが開業すると建物をパルコに渡しテナントとして入居する。
81年からパルコブックセンター富貴堂として営業し、2003年に閉店した。


狸小路は作中でも買い物に行くという描写があるがもとは民営の遊郭で、のちに商店街となり、現在でも残っている。

女学校は庁立札幌高等女学校(現在の札幌北高校)で、当時は中央区北2条西11丁目にあった。ここには現在は大通高等学校が建つ。

学校をエスケープして出かける軽川は、手稲区を流れる川である。

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