笑顔、弥立つ
東京を飛び立った機体は大きく揺れていた。
ベルト着用ランプが消えたのを確認し、ここにいたくないと言う長男を抱っこして席を立つ。トイレ前で長男の背中をトントンした。
「どうかされましたか?」
不安そうな長男を見て客室乗務員が声をかけてくれた。生まれて初めての飛行機なんです、僕が答えると彼女は長男に笑いかけた。
「わぁ、ありがとう。初めての飛行機に選んでくれて嬉しいな」
その後、ギャレーや壁の操作スイッチを見せながら飛行機の仕組みを教えてくれた。大人にも面白い内容。長男の顔から不安が消え、笑顔が戻る。積乱雲を抜け、機体の揺れもおさまっていた。
着陸後の降りぎわ
こちらに気づいた彼女は、しゃがんで長男と同じ目線で笑顔をくれた。
「大きくなったらまた乗ってね。お姉さん待ってるから」
経営破綻で会社が大きく揺れる中、彼女自身を鼓舞する笑顔にも見えた。
あれから10年
赤い翼が戻った機体は、今日も力強く空を飛んでいる
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