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『フードデザイン 未来の食を探るデザインリサーチ』が出版されました

はじめに

『フードデザイン 未来の食を探るデザインリサーチ』の刊行から3ヶ月ほど経ちました。
主著者の緒方胤浩です。名もなき博士課程学生ですが、この度本書の執筆を任せていただきました。この記事では、改めて本書の紹介をさせていただこうと思います。

本書は、デザインの文脈から「フードデザイン」を本格的に語る、説明する、紹介する、実践する書籍は国内においては初めてのものになるかと思います。食に関わる全ての人(=全ての人類?)に読んでいただきたいですが、特に「食をデザインする」ことの視点を提供できればと考えております。以下、早速内容について各章ごとにざっくりと紹介していきます。

第1章

1990年代に自らをex-designerと称したマルティ・ギシェが食品をデザインの対象として捉え、デザインの新たな可能性を切り開いたことに始まり、現在では研究領域としても確立され始めたFood Designと、それに関連する分野について事例や作例などを幅広く取り上げ、「フードデザインとは?」について書いています。

第2章

一方で、作品や研究という粒度のフードデザインに限らず、現在すでに国内でサービスや商品として展開している事業者についても紹介することで、フードデザインの実務的な側面についても示すことを試みました。特徴的な4つの事業者に対するインタビューの中で、フードデザインを考えるヒントとなるような視点を掴んでいただけると幸いです。

第3章

そしてサブタイトルにもなっている通り、「未来の食を探るデザインリサーチ」のためのツールを比較的詳しく説明しています。「フードデザインについては分かった、じゃあ自分も考えてみよう、やってみよう!」となった読者の方々に役立てていただければと思います。フードデザインならではのポイントも掲載していますが、基本的には未来シナリオ作成とユーザー調査などを組み合わせたデザインリサーチのプロセスになっているので、デザインを学ぶ学生に広く役立つものになっているはずです(卒業制作や研究にもぜひ活用していただきたいです!)。

第4章

さらには、上述したようなプロセスを経て、どんな未来の食のシーンがデザインできるのか?というプロトタイプも掲載しています。食というものが生産から製造、輸送、販売、調理、食事、廃棄、再利用まで幅広い分野と密接に関わることから、フードデザインも必然的に領域横断的なものであると言われています。本書でも料理科、編集者、キュレーターの方々などと協働でプロトタイピングに取り組みました。他分野の人々と協働して実践や研究に取り組み、未来の食をつくっていくことに貢献するデザイナーが増えることを願っています。(というか、一緒にそうなっていきましょう!)

コラム1

コラムとして食、デザイン、サービス、未来、といったキーワードに基づく専門家による座談会を収録しています。「フードデザインを豊かにする社会性と予測不能性」「入学より卒業のデザインが食ならではの幸幸福感を育む」などの興味深いトピックが話されました。私からすると恐れ多いくらい著名な方々がフードデザインについて議論しているという意味で、非常に貴重な文献になったと改めて感謝しています。これを読むだけでも価値があると思います。

コラム2

そしてもう一つのコラムには、私が2ヶ月間毎日、毎食フード3Dプリンタで作った食品、料理を食べ続けた記録が日記として紹介されています。フード3Dプリンタのある暮らしでどんなサービスがデザイン可能か?を検討するために、(自らが被験者となって)ユーザー調査した真面目なものですが、ネタ的に眺めていただけると幸いです。そして2ヶ月の間、文字通り寝食を共にしていたので、フード3Dプリンタについては詳しくなったと思います。フード3Dプリンタに関してお困りの方がおられましたらご連絡ください、協力いたします!
(ちなみに、日記の中に示した時間は、3Dプリントを含めた調理全てにかかった時間です。明示しそびれでした、すみません!)

さいごに

変形なしのB5版で意外と大きいサイズかもしれませんが、事例、作例の写真をなるべくたくさん載せていただいたので、それも合わせて楽しんでいただけたらと思います。また、カバーが非常に可愛く仕上がっているので、ぜひお手元に置いていただけたらと思います!

オガタ

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追記(2023.12.09)
書籍の本文中に誤りがございました。読者の皆様ならびに、関係者の皆さまにご迷惑をお掛けしましたことをお詫び申し上げますとともに、下記の通り訂正いたします。
p.118 脚注番号26のタイトル表記
誤:Bruce Sterling (2005), Bruce Sterling, The MIT Press

正:Bruce Sterling (2005), Shaping Things, The MIT Press

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追記(2024.05.19)
p.24 脚注番号のズレ
フード「デザイン」という観点からは、食品の機能は3つに分類されている³⁸。

フード「デザイン」という観点からは、食品の機能は3つに分類されている³⁹。


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