見出し画像

フードデザイン事例集|フードデザインをよりよく知るための本

はじめに

前回の記事に引き続き、「デザイン文脈におけるフードデザイン」について、よりよく知ることに役立つ書籍を紹介したいと思います。
 食とデザインの文脈における取り組みだけでなく、食をデザインすることを考える上で学ぶべき事例は数多くあります。その土地での気候に沿った食材の加工方法や、食を起点にした都市計画、ひとつの食材を様々な角度で掘り下げる方法、食材を調達する方法、食のために作り出されてきた道具、持続可能性のために取り組むレストランなど、過去と現在のフードデザインを知るための書籍を集めてみました。


選書〈フードデザイン事例集〉

とにかく多様なジャンルに知見が広がっていることと、日本語でも読めるものがあることをお伝えしたいという意図で選んでみました。今回もこれまで同様に発行年の順に並べています。それではお楽しみください。

食と建築土木

後藤治/二村悟
2013/11/25
🔗

食と建築土木

・専門書、事例集
・農山漁村部にある食べものをつくるための建築物を解説
・干し大根や凍み豆腐などを作る地域の気候や住まい方、歴史などに言及

ここで食べた人がまた食べたいと思えば、それは続きます。文化としてね。 —藤森照信

p.57

〈プライマリー・ストラクチャー〉には、審美的であったり、抽象的であったり、思索的であったり、という都市的知的概念が介在する余地がほとんどない。
*景観に組み込まれている構築物を、第一次産業のための工作物〈プライマリー・ストラクチャー〉と呼ぶ。

p.97

Food Design in Italy: Product Development and Communication

Alberto Bassi
2017/04/11
🔗

Food Design in Italy: Product Development and Communication

・専門書、事例集
・イタリアの歴史の中で食とデザインの関係を辿る
・nutellaやilly coffeなどイタリアを代表する食品にまつわるストーリーを掲載

"because eating is a linguistic process - where language means the visual transformation of signs - and a cultural act, it is subject in a certain sense to a creative action which means that eating necessarily involves a creative processIn this sense it lies within the realm of the design profession." —Ettore Sottsass

「食べることは、記号の視覚的な変換を伴う言語的プロセスであり、文化的な行為だ。それは創造的な行為の対象でもある。そのため、食べることは必然的に創造的な行為に関連する。つまり、それはデザインの専門分野の範疇に位置付けられる。」—エットーレ・ソットサス

p.7

If food is examined from the perspective of design, many analogies with anonymous design will come to light. For most food products, the author is unknown

食品をデザインの視点から見ると、アノニマスデザインとの多くの類似性が明らかになる。食品の多くは、作者不明だ。

p.22

Farming the City: Food As a Tool for Today's Urbanization

Francesca Miazzo, Mark Minkjan
2013/07/31
🔗

Farming the City: Food As a Tool for Today's Urbanization

・専門書、事例集
・都市開発におけるツールとしての食のあり方を議論する
・ローカル主導で公正な脱炭素社会に向けたケーススタディを取り扱う

‘The first thing we need to do is to stop seeing cities as inert objects and recognise them as organic entities, inextricably bound to the natural ecosystem'

私たちが最初にすべきことは、都市を単なる無生物として見るのをやめ、自然の生態系と切り離せない有機的な存在として認識することだ。

p.7

In order to flourish, we need the company of others; yet the closer we cluster together, the further removed we get from our sources of sustenance.

繁栄のためには他者との交流が必要だ。しかし、私たちが密集すればするほど、いのちの源から遠ざかってしまう。

p.14

Cookbook of Possibilities

Welling School and HATO
2015
🔗

Cookbook of Possibilities

・ZINE
・パーソンズ美術大学の成果物に影響を受けたプロジェクトを記録
・ロンドンのWelling Schoolの生徒がパン作りを通じて食のリサーチや制作活動を実施

It [food] helps form our community, friendships and relationship with the world in a way that is outside the realm of how and what we usually learn at school.

食は、学校で通常学ぶ方法や内容とは異なる形で、私たちのコミュニティ、友情、そして世界との関係を築く手助けとなる。

p.3

Science of the Secondary #11: Banana

Atelier HOKO
2020
🔗

Science of the Secondary #11: Banana

・ZINE
・世界共通のアイコン的フルーツバナナを様々な角度で観察
・選び方や保存方法、熟れ具合などを通じてバナナと食べる側との関係を考察

a clear communication via the skin might just naturally discourage excessive handling.

皮に直接的に浮かび上がるメッセージが、過度の触れ合いを控えるよう、買い物客に自然に促している。

p.10

Even at its end, the banana skin continues to serve its purpose by ensuring that we dispose of it proper or suffer a comical fall.

皮となったその最期においてもバナナは、私たちにきちんと捨てること、さもなければ滑稽にこけてしまうぞと教えてくれる役割を持っている。

p.53

The Urban Forager

Wross Lawrence
2020/04/13
🔗

The Urban Forager

・ガイドブック
・都市環境の中で採集可能な植物、32種類の特徴や見分け方、調理方法を写真付きで紹介
・採れる季節や場所(公園や水辺など)を記載

We all used to be foragers before the invention of the supermarket: the city has taken us away from our roots.

スーパーマーケット誕生前、私たちは皆、自然から直接食材を探し求める採集者だった。都市化が進む中で、その原点から遠ざかってしまった。

p.3

*Never eat anything unless you're absolutely sure you have the correct plant.

p.184

おいしい昆虫記

佐伯 真二郎
2020/09/16
🔗

おいしい昆虫記

・専門書、自伝
・昆虫食学の実践を続ける著者がどのように昆虫食に出会い、何を目指すのか?の物語
・ラオスでの活動経験などを通じて、昆虫食との向き合い方や展望を示唆

多くの人間よりも、カマキリは昆虫がおいしいことを知っている。

p.49

昆虫を食べる前の7原則
第1条 必ず火を通す
第2条 新鮮なものを食べる
第3条 アレルギーに注意する
第4条 かぶれやケガにも注意する
第5条 「罰ゲーム」や「サプライズ」に使わない
第6条 種類のわからない虫は食べない
第7条 虫を採るときのルールにも注意する

pp.54-55

Notes from the Underdog: Agriculture for Subsistence in Porto

John Wriedt (ed.)
2021/06
🔗

Notes from the Underdog: Agriculture for Subsistence in Porto

・写真集、論考集
・2011年の金融危機の後にポルトガルのポルトに広がった都市近郊での農業実践と空間利用に注目
・果物や野菜の栽培によってブラウンフィールドを再生した10の農園を紹介
・運営者がロープや板材、ペットボトルなどを駆使して灌漑システムや堆肥化のインフラを整備する様子を切り取り、その創造力に焦点を当てる

the concept of "culture" is derived from the word "agriculture"

「文化」という概念は「農業」という言葉に由来する

pp.9-10

They organize and formalize grounds that were outside the current order, making visible fantastic "beaches under the cobblestones."

彼らは、現在の秩序の外にあった土地を整理し、形にすることで、「敷石の下の砂浜」を見えるようにしている。

pp.483-484

Democratizing Food: FDzeeN Issue 01

Food Design Nation
2021/09/03
🔗

Democratizing Food: FDzeeN Issue 01

・雑誌
・フードデザインのためのオンラインコミュニティFood Design Nationが発行
・すべての人々が安全で栄養価の高い食にアクセスできるようにするには?というテーマに対するアイデアや、実践的な活動を紹介

When you eat street food a subtle trust is established between you and the vendor.

ストリートフードを食べるとき、客と売り手の間には微かな信頼関係が生まれる。

p.53

introducing falafel has not only served to create community but also to share a previously underutilized option for nutrition.

ファラフェルの導入は、コミュニティ形成だけでなく、以前は不十分だった栄養の選択肢を共有するためにも役立っている。

p.59

Tools for Food: The Stories Behind the Objects that Influence How and What We Eat

Corinne Mynatt
2021/11/23
🔗

Tools for Food: The Stories Behind the Objects that Influence How and What We Eat

・専門書、図鑑
・世界中を取材して蒐集した調理器具を、用途別に分類して紹介
・調理器具とその歴史、形状、使い方、作り手などの観点から食文化を紐解く

These tools for food show how design has influenced our eating habits, traditions and rituals, accommodating changes in food behaviour that show where we've been and where we're going.

食の道具は、デザインが私たちの食習慣、伝統、そして儀式にどのように影響を与えてきたかを示す。またそれは、食に関する行動の変化に適応し、私たちの過去と未来の行き先を示す。

p.7

it [the Juicy Salif] epitomises design debates where the design no longer provides a solution for a problem (juicing lemons), but instead form overcomes function.

それ[the Juicy Salif]は、デザインがもはや問題の解決策(レモンを絞ること)を提供するのではなく、形態が機能を凌駕するというデザインの議論を体現している。

p.175

SoFF Report: Cookbook for 3D Food Printing

緒方胤浩ほか
2023/03/26
🔗

SoFF Report: Cookbook for 3D Food Printing

・ZINE
・フード3Dプリンタを軸に、食の可能性を探求する実験的なプロジェクトを紹介
・いますぐ作れる3Dプリント食のレシピを掲載

未来を想像しつつ、実際に食べられるものをつくり、未来の食を五感で味わいながら、また議論を進める、というサイクルを繰り返しながら、これからも思索は続いてゆく。

p.22

BETTER FOOD(ベターフード) VOL.1 持続可能な"食の未来"の作り方

モタ
2023/05/25
🔗

BETTER FOOD(ベターフード) VOL.1 持続可能な"食の未来"の作り方

・雑誌
・食の持続可能性を主軸に、より良いフードシステム実現に向けて実践を進めるレストランや企業、酪農家などの活動を取り上げ、インタビューと共に紹介

ガストロノミー業界における次の革命は”ヒューマニズム”だと信じています。

エネコ・アチャ・アスルメンディ、アスルメンディ、ララベツ、スペイン
p.38

私たちはもう持続可能ではない方法でビジネスを行う選択肢をとることはできないと思います。これはもはや、オプションではないのです。

ディラン・ジョーンズ、フード・トラスト/ウー、タイ
p.84

以上がフードデザインの事例を扱った書籍の紹介でした。デザインが得意とするエスノグラフィックな視点や、創造的な解を導くための発想につながる内容のものから、最新の動向を追った内容のものまでを取り上げてみました。次回は、フードデザインと関係が深いアートやカルチャーの側面に触れる内容のものを紹介します。

──
こうした内容を『フードデザイン:未来の食を探るデザインリサーチ』(BNN、2022)の中でも取り扱っています。この分野の変遷や周辺領域との関連性などを時間軸に沿ってまとめましたので、よろしければそちらもご覧ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。
──
本記事中で引用した文献はDeepLを用いて翻訳し、ChatGPTを用いて修正したものとなります。致命的な誤訳等ございましたら、ご指摘いただけると幸いです。また、記事は執筆時点での情報をもとに書いたため、最新情報であるとは限らないことをご承知ください。さらに、本記事の内容は私見によるものであり、必ずしも所属企業の立場や戦略、意見を代表するものではありません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?