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R3.6.23夫婦別姓訴訟補足意見

大法廷決定を受けて、他の件も蹴散らしていく最高裁の振る舞いが報道されている

「上告棄却」がこれだけインパクトをもつこと自体に重みを感じていく

一気に市民権を得ているといえるのではないだろうか

補足意見も読んでおこう

裁判官深山卓也,同岡村和美,同長嶺安政の補足意見は,次のとおりである。
私たちは,本件各規定は憲法24条に違反するものとはいえず,平成27年大法廷判決の判断を変更する必要はないとする多数意見に賛同するものであるが,その趣旨等について若干の点を補足して述べておきたい。

多数意見自体があっさりしていたから、ようやく中身の解説

1 まず,所論は,本件各規定が,夫婦となろうとする者の一方が従前の氏を改めて夫婦同氏とすることを婚姻の要件としており,婚姻に対する法律上の直接的な制約となっているという。
確かに,民法750条を受けて,戸籍法74条1号は,夫婦が称する氏を婚姻届の必要的記載事項としており,これを記載しなければ,婚姻届は受理されず,婚姻は効力を生じないのであるから(民法739条1項,740条),その点を捉えれば,本件各規定は,夫婦同氏とすることを婚姻の要件としており,婚姻に制約を加えるものということもできる。
しかしながら,ここでいう婚姻は法律婚であって,その内容は,憲法24条2項により婚姻及び家族に関する事項として法律で定められることが予定されているものであるところ,民法750条は,婚姻の効力すなわち法律婚の制度内容の一つとして,夫婦が夫又は妻の氏のいずれかを称するという夫婦同氏制を採っており,その称する氏を婚姻の際に定めるものとしている。他方で,我が国においては,氏名を含む身分事項を戸籍に記載して公証する法制度が採られており,民法739条1項において,婚姻は,そのような戸籍への記載のための届出によって効力を生ずるという届出婚主義が採られている。そして,これらの規律を受けて,戸籍法74条1号は,婚姻後に夫婦が称する氏を婚姻届の必要的記載事項としているのである。
民法及び戸籍法が法律婚の内容及びその成立の仕組みをこのようなものとした結果,婚姻の成立段階で夫婦同氏とするという要件を課すこととなったものであり,上記の制約は,婚姻の効力から導かれた間接的な制約と評すべきものであって,婚姻をすること自体に直接向けられた制約ではない
また,憲法24条1項は,婚姻をするかどうか,いつ誰と婚姻をするかについては,当事者間の自由かつ平等な意思決定に委ねられるべきであるという趣旨を明らかにしたものであるところ,ここでいう婚姻も法律婚であって,これは,法制度のパッケージとして構築されるものにほかならない。そうすると,仮に,当事者の双方が共に氏を改めたくないと考え,そのような法律婚制度の内容の一部である夫婦同氏制が意に沿わないことを理由として婚姻をしないことを選択することがあるとしても,これをもって,直ちに憲法24条1項の趣旨に沿わない制約を課したものと評価することはできない
したがって,夫婦同氏とすることを婚姻の要件と捉えたとしても,本件各規定が憲法24条1項に違反すると直ちにいうことはできず,平成27年大法廷判決もこの趣旨を包含していたものと理解することができる。

例えば再婚禁止規定は、まさしく、婚姻を制約していた(それでも事実婚の暮らしは開始できるけどね)

その規制とは違うということなのだろうか?

2 そこで,本件各規定が憲法24条に違反するか否かは,平成27年大法廷判決が判示するとおり,本件各規定の採用した制度(夫婦同氏制)の趣旨や同制度を採用することにより生ずる影響につき検討し,個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠き,国会の立法裁量の範囲を超えるものとみざるを得ないような場合に当たるか否かという観点から判断すべきこととなる。
現行の夫婦同氏制の下において,長期間使用してきた氏を婚姻の際に改める者の中には,アイデンティティの喪失感を抱く者や種々の社会生活上の不利益を被る者がおり,これを避けるために婚姻を事実上断念する者がいることは,平成27年大法廷判決においても指摘されているところである。このような実情を踏まえ,夫婦同氏制について,婚姻に際し当事者の一方が意に反して氏を改めるか婚姻を断念するかの選択を迫るものであり,従前の氏に関する人格的利益を尊重せず,また,婚姻を事実上不当に制約するものであると評価して,いわゆる選択的夫婦別氏制の方が合理性を有するとする意見があることも理解できる。また,男女共同参画社会の形成の促進あるいは女性の職業生活における活躍の推進という観点からの施策として,選択的夫婦別氏制の導入を検討すべきであるとする意見も存在する。
しかしながら,平成27年大法廷判決が判示するとおり,婚姻及び家族に関する事項は,関連する法制度においてその具体的内容が定められていくものであって,当該法制度の制度設計が重要な意味を持つものであり,国の伝統や国民感情を含めた社会状況における種々の要因を踏まえつつ,それぞれの時代における夫婦や親子関係についての全体の規律を見据えた総合的な判断によって定められるべきものである。したがって,夫婦の氏に関する法制度の構築は,子の氏や戸籍の編製の在り方等を規律する関連制度の構築を含め,国会の合理的な立法裁量に委ねられているのである。そうすると,選択的夫婦別氏制の導入に関して上記のような意見があるとしても,平成27年大法廷判決が指摘する,氏の性質や機能,夫婦が同一の氏を称することの意義,婚姻前の氏の通称としての使用(以下「通称使用」という。)等に関する諸点を総合的に考慮したときに,本件各規定が個人の尊厳と両性の本質的平等の要請に照らして合理性を欠き,国会の立法裁量の範囲を超えるものとみざるを得ないような場合に当たると断ずることは困難である。
また,所論は,平成27年大法廷判決以降,女性の有業率の上昇,共働き世帯の数の増加その他の社会の変化,選択的夫婦別氏制の導入等に関する国民の意識の変化,地方議会における選択的夫婦別氏制の導入を求める意見書等の採択,通称使用の急激な拡大,我が国が批准した「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」に基づき設置された女子差別撤廃委員会からの勧告などの事情の変化が生じており,これにより夫婦同氏制の合理性は失われたという。
確かに,平成27年大法廷判決以降も,女性の有業率は上昇するとともに共働き世帯の数も増加しており,これに伴い,婚姻の際に氏を改めることにより職業活動において不利益を被る女性が更に増加していることがうかがえる。また,平成29年に内閣府が実施した世論調査の結果等において,選択的夫婦別氏制の導入に賛成する者の割合が増加しているなどの国民の意識の変化がみられる。さらに,全国の地方公共団体の議会から,地方自治法99条に基づき,国又は関係行政庁に対して,選択的夫婦別氏制の導入又はこれについての国会審議の促進を求める意見書が提出されている。他方で,通称使用が,公的な文書における使用を含めて,更に拡大,拡充してきている。そして,一般論として,この種の法制度の合理性に関わる事情の変化いかんによっては,本件各規定が上記立法裁量の範囲を超えて憲法24条に違反すると評価されるに至ることもあり得るものと考えられる。
しかしながら,平成27年大法廷判決以降の上記の事情の変化のうち,まず,国民の意識の変化についていえば,婚姻及び家族に関する法制度の構築に当たり,国民の意識は重要な考慮要素の一つとなるものの,国民の意識がいかなる状況にあるかということ自体,国民を代表する選挙された議員で構成される国会において評価,判断されることが原則であると考えられる。そして,法制度をめぐる国民の意識のありようがよほど客観的に明らかといえる状況にある場合にはともかく,選択的夫婦別氏制の導入について,今なおそのような状況にあるとはいえないから,これを上述した女性の有業率の上昇等の社会の変化と併せ考慮しても,本件各規定が憲法24条に違反すると評価されるに至ったとはいい難い。
また,通称使用の拡大は,これにより夫婦が別氏を称することに対する人々の違和感が減少し,ひいては,戸籍上夫婦が同一の氏を称するとされていることの意義に疑問を生じさせる側面があることは否定できないが,基本的には,平成27年大法廷判決が判示するとおり,婚姻に伴い氏を改める者が受ける不利益を一定程度緩和する側面が大きいものとみられよう。
以上のほか,全国の地方公共団体の議会から地方自治法99条に基づく意見書が提出されていることや,女子差別撤廃委員会から平成28年にも勧告がされていることを含め,平成27年大法廷判決以降,本件処分時(平成30年3月6日)までの間に生じた諸々の事情を併せ考慮しても,憲法24条適合性に関する平成27年大法廷判決の判断を変更すべきものと認めるには至らないといわざるを得ない。

かなーり平成27年判決が蔓延っている

3 もっとも,上記の法制度の合理性に関わる国民の意識の変化や社会の変化等の状況は,本来,立法機関である国会において不断に目を配り,これに対応すべき事柄であり,選択的夫婦別氏制の導入に関する最近の議論の高まりについても,まずはこれを国会において受け止めるべきであろう。この点に関しては,平成27年大法廷判決及び本件多数意見も,選択的夫婦別氏制の採否を含む夫婦の氏に関する制度の在り方は,国会で論ぜられ,判断されるべき事柄にほかならないと指摘しているところである。
もとより,本件多数意見がいうように,選択的夫婦別氏制を採るのが立法政策として相当かどうかという問題と,夫婦同氏制を定める現行法の規定が憲法24条に違反して無効であるか否かという憲法適合性の審査の問題とは,次元を異にするものであって,民法750条ないし本件各規定が憲法24条に違反しないという平成27年大法廷判決及び本件多数意見の判断は,国会において上記立法政策に関する検討を行いその結論を得ることを何ら妨げるものではない選択的夫婦別氏制の採否を含む夫婦の氏に関する法制度については,子の氏や戸籍の編製等を規律する関連制度を含め,これを国民的議論,すなわち民主主義的なプロセスに委ねることによって合理的な仕組みの在り方を幅広く検討して決めるようにすることこそ,事の性格にふさわしい解決というべきであり(平成27年大法廷判決の寺田逸郎裁判官の補足意見参照),国会において,この問題をめぐる国民の様々な意見や社会の状況の変化等を十分に踏まえた真摯な議論がされることを期待するものである。


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