嫡出子差別規定違憲判決に学ぶ違憲論

再婚禁止期間違憲判決に続き、嫡出子差別規定違憲判決からも同様に違憲論を学びたい。

最高裁判所 平成24年(ク)第984号,平成24年(ク)第985号 平成25年9月4日 大法廷 決定


この報道を、司法研修所の教室で触れたときの嬉しさは、今も色あせない。

憎むべき嫡出差別制度を知ったのは大学生の頃であり、以来、婚姻制度全般に絶望を覚えていた。長く浪人をして、目の前の暮らしで精一杯に過ごしているうちに、その問題を気にしすぎずに折り合いをつけていたが、世が動いていたことは歓喜を覚える。これも、意外に、深刻だが、該当する当事者が多いとはいえないため、不合理であることが明白でも長く凍結されていた問題に思う。法律婚が大勢の日本において、まず、非嫡出子がいない。夫婦別姓のために事実婚を選択する場合でも、出産時には、婚姻届を出し、嫡出性を得たのち、ペーパー離婚をすることもあるし、他方、事実婚関係を貫いて生まれた子はみな非嫡出子だから、嫡出子と非嫡出子の間の格差が問題にならない。

嫡出子がいて、非嫡出子もいる場合であり、かつ、相続財産がそれなりにある場合でなければ、なかなか訴訟を展開することもないだろう。二分の一どころか、放棄して解決するケースもあっただろう。

嫡出子対非嫡出子に関しては、法律婚父母の子対婚姻外父母の子の構造にあって、まるで正妻の子対妾の子のような対立構造に思われがちだが、実態はもっと根深い。

父母が婚姻中に生まれた子かどうかで区別するので、たとえ、同じ父母であっても、少なくとも同じ親から生まれていても、そのとき、親が婚姻状態かどうかで、子どもが差別されるのだ。例えば、ある母が、婚姻中に第一子を出産し、後に離婚した後、事実婚で第二子を出産した場合、同じ母の子同士であっても、第一子は、嫡出子となり、第二子は、非嫡出子となり、差別される。母を相続するとき、法定相続分が差別されていたのだ。同じ母に生まれ、共に暮らしている場合もあるかもしれないのに差別される。この不合理さは明白であろう(もっとも、遺言等で手当てしていたのかもしれないし、嫡出子差別問題のケースとしてあまり認識されぬまま、同差別は法律上解消された)。

個人的な問題意識が長くなってしまった。判決を読む。

原審の確認

 原審は,民法900条4号ただし書の規定のうち嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする部分(以下,この部分を「本件規定」という。)は憲法14条1項に違反しないと判断

敗訴からのスタートである(差別される側からの視点)。

そこで立ち上がる。

 論旨は,本件規定は憲法14条1項に違反し無効であるというものである。

憲法14条1項適合性の判断基準について

 憲法14条1項は,法の下の平等を定めており,この規定が,事柄の性質に応じた合理的な根拠に基づくものでない限り,法的な差別的取扱いを禁止する趣旨のものであると解すべきことは,当裁判所の判例とするところである(最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁,最高裁昭和45年(あ)第1310号同48年4月4日大法廷判決・刑集27巻3号265頁等)。

判例の確認から。憲法14条1項は、法の下の平等を定めている。さて、相続制度については?

 相続制度は,被相続人の財産を誰に,どのように承継させるかを定めるものであるが,相続制度を定めるに当たっては,それぞれの国の伝統,社会事情,国民感情なども考慮されなければならない。さらに,現在の相続制度は,家族というものをどのように考えるかということと密接に関係しているのであって,その国における婚姻ないし親子関係に対する規律,国民の意識等を離れてこれを定めることはできない。これらを総合的に考慮した上で,相続制度をどのように定めるかは,立法府の合理的な裁量判断に委ねられているものというべきである。この事件で問われているのは,このようにして定められた相続制度全体のうち,本件規定により嫡出子と嫡出でない子との間で生ずる法定相続分に関する区別が,合理的理由のない差別的取扱いに当たるか否かということであり,立法府に与えられた上記のような裁量権を考慮しても,そのような区別をすることに合理的な根拠が認められない場合には,当該区別は,憲法14条1項に違反するものと解するのが相当である。

やはり登場する、立法府の合理的裁量。ある程度はゆるいということ。そのゆるい枠組みであっても逸脱して、不合理な差別になっていないか、と展開する。何もかも区別が全て不当差別になるわけではなく、立法府の判断に合理性があるかどうかをチェックするということである。その前置きを経て、いよいよ中身に入っていく。

つづく

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