池田でございます。第1については今、存在そのものについて疑義も出されたようなところでしたり、あるいは、少なくともいろいろなものが盛り込まれすぎで、整理すべきでないかという意見もあったところですので、更に付け加えるような話をするのは、しにくいところなのですけれども、そういう指摘をまず、したいと思います。第1について2点と第2について2点、申し上げたいと思います。
まず、第1ですけれども、部会資料24では、幾つかの事項の解釈の根拠となるべき基本的規律を設けるということが提案されていまして、そのうちの一つにこどもの意見の考慮という点がありましたが、今回それがゴシック体の記載、注書の記載からも補足説明からも落ちているということが問題だと考えています。
今回の資料の冒頭で、要綱案の取りまとめに当たっての視座の第1に子の利益というのが挙げられているわけですけれども、以前私の方で、子どもの権利条約におけるこどもの意見表明権と子の最善の利益との関係についてお話ししたところでしたけれども、子の意見、意向、心情などを聴くことの先にしかこどもの利益は存在しないというのが権利条約の考え方といってよいと思います。つまり、抽象的なこどもの利益というのがどこかにあって、それを持ってくればいいという話ではなくて、子の意見を聴いてこどもと一緒に考えないと、そのこどもにとっての利益というのは決して浮かび上がってこないわけです。
この考え方の重要性を改めて踏まえますと、今回のゴシック体の(注1)では、こどもの人格の尊重という事項が挙げられておりまして、その点は積極的に評価できる反面で、人格の尊重の具体的な在り方の一つとして、やはり子の意見の考慮ということも挙げられるべきだと考えています。
なお、この点に関しましては第24回会議で水野委員の方から、一度子の意向や意思の尊重ということが法律に書き込まれると、非常に硬直化した家裁実務を招くという御懸念から、消極的意見があったということは承知しています。ただ、今回のゴシック体の第1の議論というのは親子関係全般、つまり、親が子に対するときにどんなことを旨とすべきかという議論だと理解していますので、直ちに家裁での実務への悪影響を心配するというのではないのかと考えているところです。むしろ、親子の間では何か課題があったときに、親は子としっかりと対話をして子の成長を促していく責任があるということを規範として示すという積極的側面を重視すべきではないかと考えています。子の意見をめぐっては、なぜか水野委員と私ばかりが意見を言っているようなところがありますけれども、他の先生の御意見も是非伺えればと思っているところです。
第1の2点目ですが、今回5人の民法学者の先生方から頂いた意見書を拝見しまして、なるほどと思ったところを引用させていただく形で意見を申し上げたいと思います。親権関係についても一定の文言の修正が必要ではないかという中の一つに、現行の第818条第1項で、成年に達しない子は父母の親権に服するという文言があって、修正の御意見があるところなのですが、これは私は賛成です。やはりこの規定が設けられた時代の色を色濃く残しているような表現ぶりですので、そこは少なくとも修正が必要ではないかと考えています。
以上が第1で、第2については、第2の1、双方が親権者の場合の単独行使ができる場面として、子の利益のために急迫の事情があるときというのがございます。これの具体的場面を考えますと、この判断を一時的にするのは当該行為を行おうとする親権者の一方ということになりますけれども、必ずしも自信を持ってやる場合ばかりではなくて、これで大丈夫なのかなと思いながらも、やらざるを得ないということでやるという場合もあると思います。その場合、当事者としても有り難いのは、当該行為をした後に、その適否の確認を得るために家裁の判断を後から得るというふうなことができればいいなと思いますので、そのようなことが可能な規定ぶりにしていただければ有り難いと思っています。
それから、第2の2ですが、このうち(2)、(6)の辺りで、裁判所が親権者を決める場合に、双方を親権者とするか一方を親権者とするかという判断要素として、幾つかの事情が挙げられています。ただ、この書きぶりを見ますと、こどもにとって特段の害悪がなければ双方が親権者となるかのように読めますけれども、どちらかを原則とする趣旨ではないとも考えられますけれども、規定をする際においては、やはり双方を親権者として選択するのか、単独親権を選択するのか、いずれにしても、それがこどもの利益に積極的にかなうからだという判断であるべきだと思います。
それから、裁判所が判断するに当たっては、前回の議論では、父母間に合意がある場合とない場合と分けて議論しておりましたけれども、合意がないにもかかわらず双方を親権者と指定するという場面を想定する場合には、やはり特殊の考慮が必要かと思いますので、合意がある場合とない場合というものは一定程度、分けて規律するということも考え得るのではないかと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。池田委員からは、第1と第2についてそれぞれ2点の御指摘を頂いたということだったかと思います。第1の1点目は、子の意見の考慮というのを(注1)に加えるべきだという御意見だったかと思います。それから、第2は、ここには直接出ておりませんが、先ほど落合委員の御発言にもありましたけれども、現行の親権の規定の書きぶりについて見直す必要があるのではないかという御意見を頂きました。
それから、第2につきましては、1(1)イで急迫の事情というのが出てまいりますけれども、これについて後始末というか、正当な判断であったということを確認するような手続があった方がいいのではないかと御意見を頂きました。最後が、2(2)、(6)とおっしゃったかと思いますけれども、むしろそこに関わる具体的な判断要素、(注)に関わるようなことをおっしゃったのかと思います。2点あったかと思いますが、こどもの利益との関係で判断するということと、それから、合意ありなしというのはやはり分けて考える必要があるのではないかということ、そうした御指摘だったかと思います。ありがとうございます。