世帯主問題から見える、単独親権制がDVであること
国民に一律10万円を給付することになったが、その受給方法は世帯単位で世帯主が一括請求する方法となったがために、事実上別居している場合にも適切に受給できるよう配慮すべきという声があがり、何とか、そのように整備されたようだ
が!!
手間のかかる書類の用意をしかも、近日中に対応しなければならないという無茶さ
不要不急でない用事を今作るなんて・・・、相談窓口がごったがえしになったら、密です、じゃないか
何なのだこれは???!!!
もっと、もっと怒るべきではないか?
必要な人に届きますように~と安堵している場合じゃない
大変な人に手間をかけさせてどうする
ただでさえ行動力が制限されているかもしれない状況で、きっと躊躇してしまう人も多いと思うと、絶望が募る
そして、もっと怒った方がいい人もいる
まるで他人事のようにDV被害者の方へ、と案内している多くの納税者の方々、なぜ、受給権がないことに疑問を持たないのか???
みなさま世帯主ですか?
国民一律給付と決まって、その国民は赤子からお年寄りまで、果たして自分で申請や受給手続きを行えるとも限らないことが即座に想像できるところ、確実に手続きを遂行するべく、世帯で管理して世帯主に責任もって申請させようというのは、ある意味当然の要請だろう
だが、しかし、だ
自ら申請ができないいわば被扶養者が受給漏れしないように世帯主を受給権者とする点に合理性があったとしても、たまたま世帯主ではないものの、共に働き共に稼ぎ共に納税し、共に子育てもし、共に介護もし、しかし、被扶養者というわけではなく自立している人(多くは妻?)も受給権がないのである
DV被害者の問題ではない
ハナからお互い世帯主だし(それでもまとめて家族分の給付金を皮算用しているのは、家族としてわかちあう合意が前提感覚としてある)、お互いそれぞれ受給権があって、子の分も決して独占するつもりはない(家族の分として皮算用するから)中で全く問題意識の芽生えない個人的事情があって出遅れているが、ここ数日の報道の顛末を見ていて、DV被害者ならば受給できるらしい(手間がかかって期限のプレッシャー内で)結末を良かったねの空気に触れて、違和感がいっぱいである
夫婦別姓問題は、10年前に比べて周知されてはいると思うが根本的な理解は全くシェアされていないのではないか
夫婦同氏=氏1つ=戸籍の筆頭者の氏、という問題は、対等たる男女が夫婦になるときいずれか1つの氏しか選べず、その選択が法としてはいずれも選択できる建前であっても、結局男性=夫の氏が選択されることが多いがゆえ、女性には婚姻に伴う改姓を強いる構造が不合理であるところにたどり着くだろう
夫婦はふたりいるのに、1人しか筆頭者になれず、非筆頭者は、子どもたちと同じ扱い
住民票になると、家族は二世代にとどまらないとはいえ、やはり1人だけが世帯主となり、非世帯主は、その他家族と同じくくりになる
夫婦であるが、1人しか筆頭者になれない(婚姻届を出した場合)、1人しか世帯主にならない(世帯分離はあるが普通選択しない)状況で、どうして男女の対等が実現できるのだろう
世帯主ではないために受給権のない多くの納税している女性たちが問題意識すら声にならない(気の毒なDV被害者だけの問題として切り放す)状況では、この世帯主問題の闇は相当に根深い
世界の標準は共同親権制
日本はすっかり出遅れて、未だに単独親権制が残存しており、課題が指摘(にとどまらない非難の声が強まっている=拉致国家扱い)されているところ、この世帯主構造(背景にある戸籍)が足を引っ張っているように感じられる
元々父母対等に共同親権であることが離婚後や非婚の場合に選択肢としてある以前に、婚姻中の共同親権(日本もその点は戦後採用されている:戦前は、家制度のために戸主の単独親権しかなかった)においても、2人いる親がどのように養育を分かち合い、対立した場合の対処方法など用意しておかなければならなかった
日本の婚姻中共同親権は、法の規定こそ、「婚姻中は共同」とあるとしても、仮に養育方針が対立した場合にどう対処するのかというルールが全くといっていいほど欠落している
そういう場合には、離婚して単独親権者を指定すればよいという回がまかり通ってしまうほど、何もない
離婚以前に婚姻中の共同親権状態で対立した場合に、デッドロックしてしまうのかというとそうではなく、ここで、唯一の世帯主が単独親権者かのように発揮することになっていく
婚姻中は共同親権なのに、まるで親扱いされなくなる
共同親権制に法改正すれば足りるわけではないのではないかという懐疑もあるのは、実は世帯主問題が根源にあると気づく
共同の親権者であること、よりも世帯主の判断が優先してしまうのである
そして、世帯主は、社会と家族をつなぐ窓口として機能する反面、協議ないし裁判所の判断(離婚)を経なければ分離のない戸籍と違って、一方の独断で世帯分離が実現してしまう(同居状態でも実は可)
法律婚の同居義務を前提としたら、ここの制約が必要になる気もするが実は全く制約がない
それゆえ、同居義務を定める民法の規定は全くの空文になってしまっている
親権者ではなく、子と世帯を同じくする世帯主によって、子の養育環境が決められていくのである
だから、婚姻中・同居し、共同養育している状況であっても、唯一の世帯主の独断によって子の養育環境が定まるから、共同親権者たる非世帯主が異論を覚えたときは、自らが世帯主となるべく、子を連れての世帯分離&別居強行=連れ去りを引き起こすことになる
私にとっては他人事だが世帯主制度を廃止しよう
すでに、夫婦対等にお互いに世帯主であり、かつ、合意により子が帰属する世帯も定まっていて(別に協議書等はないよ!)、揉めていないわが家族にとっては、克服している問題なので、単につぶやいて済ましていたのだけど、改めて提言する
世帯主制度廃止
マイナンバーカードにより、戸籍すらも不要と言われるくらいだし、思い切って個人登録制度を確立すべきである
そして、思い馳せよう
個人として対等な関係であれば、夫も妻も独立した受給権者であるべきだろう
では、自ら申請等できない被扶養者たち(幼年児やご高齢者)が、文字通り漏れなく受給するためにはどうしたらいいか、どうしたら共に扶養している世代が公平な地位を確立できるのか、もっともっと議論すべきだろう
もしかしたら、やっぱり、国民一律給付が不合理だったのかもしれないという発想だっていい
児童手当も、子どもの人数によって支給額が算定されるものの、受給されるのはあくまで親(の一方である)
そうやって扱ってきたこと自体が本当に合理的だったのか議論する
戸籍も世帯主もない諸外国は、当然に父母・夫婦が対等という発想で、制度を整えることができてきた
コロナがもたらした社会変革は大きな衝撃であるが、世帯主問題を考えることになるとは全く期待していなかった
世帯主を解消し、原則として、個人給付を貫く(被扶養者層に漏れがないようにする方法は別に考えていく)
そうすることで、DV被害者にかかわらず、受給が確保されるし、結果、DV被害者も、特別な手間を負担することなく当然に受給できる
子どもの権利条約を批准した国は共同親権制に移行
単独親権制は子どもの利益を満たさないということを世界は当然の感覚としてもっている
だから、日本も同条約を批准している以上、法改正をすべきであると国連も勧告する
しかし、親権の単独か共同かという視点だけでは、日本が陥っている深刻な課題を克服できないということだ
単独なのは親権だけじゃない
夫婦の氏も、戸籍の筆頭者も、世帯の世帯主も単独である
それがDVの温床になっているのである
夫婦、子から見たら親はふたりなのに、単独の地位を肯定するから、格差を生み支配構造を導く
単独構造の克服こそがDV対策である
DV被害を根絶したいと真剣に考えている
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