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法制審議会家族法制部会第34回会議議事録読む2~戒能委員・沖野委員

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祝日ですが議事録を読み進めていきます

○戒能委員

 ありがとうございます。委員の戒能です。
 本題に入る前に、事務局がオーストラリアの2023年改正の参考資料ということで、プレスリリースを翻訳してくださり、大変参考になります。どうもありがとうございます。御苦労していただきまして。それで、諸外国が既に、共同親権、共同養育の制度を実施してきたけれども、こういう改正法が出てくるというのは、そこに何らかの問題点があったということだと思います。それで、改正をして家族法制度、特に子の養育に関する定めを行う場合に、この点が一番重要なのだということを明確に示したということで、大変参考になるのだと思うのです。
 今日もう机上に配布されておりますけれども、1ページの、こどもの最善の利益が中心にあることを確実なものとするという大原則が書かれていますし、2ページには、親としての責任を平等に分担するという推定規定を廃止したという点が2番目、それから、今も議論がございましたけれども、こどもの意思との関係では、2ページの最後のところに、独立したこどもの代理人という制度を確立すると、3ページに行きますと、この辺りが日本の法制度を今、議論しているわけですが、きちんと位置づけられていないということを、研究者として痛感しているところです。家族の安全、とりわけ児童虐待、ネグレクト、それからファミリーバイオレンスのリスクがあるという状況があり、こどもと家族の安全を優先するということですね、そして一番下には、きちんとジェンダーベースドバイオレンスをもう終わらせるのだという国としての意思を明確に示していて、4ページには再びファミリーバイオレンス、それからチャイルドアビューズ、ネグレクトというのはこどもを危険にさらすのだということですね、それで、一番最後の行ですけれども、家族の安全を損なうことなく、家族の法的問題を迅速、安全かつ安価に解決するのだというようなことが書かれております。それで最後に、こういうことをきちんというのだなと大変感銘を受けたのですけれども、当事者の方々の声を非常に尊重しており、法改正においても中心的役割を果たしたということをきちんと政府が書いていると、これが長年の懸案であったということなのですよね。その辺の視点を明確にし、そして、やはりこどもの最善の利益を最優先の原則に据えて法改正を行う、あるいは法的解決を行うという最も重要な原則を明記しているということは、学ばなければいけないと思っております。
 それで、是非、事務局にあまりお仕事をお願いするのも気が引けることではあるのですが、こういうふうに一旦制度を敷いたけれども、そこでどんな状況がありどんな問題が出てきて、それをどういうふうに解決しようとしているかという経験を学ぶべきだと思っているのです。一周遅れでスタートするのであれば、余計にそういうことに対してきちんと向き合って、苦い経験を繰り返さないということをしなければいけない。それが21世紀の新しい法改正のチャレンジだと思っていますので、急ぎませんから、是非そういう情報を提供していただきたいと考えていることを、まず申し上げたいと思います。
 それで、そこから学ぶことの最大のポイントというのが、やはり子の最善の利益が中心であって、こどもと家族というような言い方をしていたと思うのですけれども、その安全を最優先させるといっていることです。子の利益というのは一体何なのかと、どこに核心があるのかということを、この部会では残念ながら必ずしも明確ではない。これは私の個人的な受け止めです、ですから、そこを明確にしないと、どこへ向いていくのか、法律が実際に適用される側にとっては問題なのではないかと思われます。
 それで、オーストラリアの場合、安全という概念が出てくるのですが、同時に安心という概念が子の利益の核心にあるべきだと考えているのではないかと思われます。それで、安全を優先するということ、危険から守られるとか、暴力を受けないとか、そういうことが具体的には考えられますけれども、やはり安心という考え方が大変重要です。安心というのは恐怖と不安から解放されていることだと考えております。それで、暴力の恐怖がいかに大きいものなのか、それが長期間に及ぶおそれがあるものなのかということです。トラウマ、心的外傷なのですけれども、こどもに大変影響があり、成長発達に著しい影響を与えるおそれがあるということを認識しておく必要があるわけです。それで、暴力だけではなくて、父母間の対立とか紛争がもたらす緊張感も、同時にこどもの安心感を損なうものだということも考慮をしておく必要があるということです。
 それで、そういうことを前提として、議論を是非進めていただきたいと思います。あまりせかさないで、じっくりと大事な議論ですから、こどもの最善の利益、こどもの利益とは一体何なのか、それをこの法改正は本当に保障するものであるのかということを検証して、きちんと対応策をとって、それで法改正の提案をすべきだと考えております。
 それで、以降はなるべく簡単に申し上げますけれども、1の急迫性のところです。これは、やはり私は狭すぎると思っております。民法ではないのですが、関連法としてDV法があるわけです。DV法の柱として保護命令制度があるのですが、その保護命令制度の運用の中身は分かりません。間接的にしか、どういう審尋が行われていて、どういうことがあればどういう結論が下されるかということは明らかにされていませんから、分からないのですが、日弁連の両性の平等部会が2010年に間接的な調査をした結果ぐらいしかないのですけれども、どうも急迫性という考え方と連なる考え方のようなのです。つまり、直前に本当に命の危険があるような身体的暴力があったということでないと保護命令がなかなか出ないという状況がずっと続いてきて、ようやく今回改正されて、精神的暴力や性的DVなども範囲に含まれるようになったのです。しかし、裁判官の判断ですから、この部会の議論においても重要な問題だと考えておりますけれども、DVの実態とかDVがもたらす影響が必ずしも反映されていないのではないかと考えております。このような保護命令の運用と同じようなことが起こるのではないかという危惧が大変あります。
 それで、逃げることが前提としてDV法が制度設計されていまして、そのこと自体は問題なのですが、被害者支援制度も加害者対応も極めて不十分な現状を前提としてDV法は作られているのですが、しかし、そこでは被害を受けた人が逃げることを前提とせざるを得ないのです。そうすると、この急迫性の要件が非常に狭いということが運用上、危惧されます。認められなくなってしまうということが危惧されます。
 それで、必要性、相当性についての批判があったわけなのですが、これは5ページに、過度に広がると書かれているのですけれども、私は逆に過度に狭くしていると受け取っておりまして、親権の単独行使が必要かどうかという点、それから、その手段とか方法が相当かどうかということを意味するものだと考えておりますので、こどもの安全と安心を守るためには必要であり、そして相当であるという要件が修正案として出ましたけれども、それに賛成を致します。
 一旦終わりにいたします。ありがとうございました。
○大村部会長 今、戒能委員からは参考資料へのコメントと、それに基づく御懸念を示された上で、1、2、3のうちの1の急迫の事情について、やはり狭いのではないかという御意見と、この文言の下での運用への危惧についてお示しいただいたと理解を致しました。またありましたら後、改めてお願いを致します。

板挟みは避けないといけないのよね
それが一番辛いもの

○沖野委員

 ありがとうございます。委員の沖野でございます。部会資料34-1の幾つかについて申し上げたいと思います。
 まず、1につきましては原案のとおりで、修正の意見のような形での修正はしない方がいいのではないかと思っております。元々の原案の考え方でございますけれども、父母が共同して親権を行うという場合に、そのような父母共同での意思決定が望ましいという考え方の下に立った上で、しかしそれができないというときには、中立の第三者にどちらが決めるかというのを決めてもらうという制度であり、かつ日常の生活に関わる行為というものについては単独でできるということですから、そうではないような決定事項については共同で慎重に判断するのが適切であるという考え方に立った構想であると考えます。しかしながら、そのような裁判所でどちらが決めるかを決めるというのを待っていたのでは望ましくないという場合として、原案は二つの場合を切り出しており、強いて言えば、一つは裁判所に行っても意味がないという場合ともう一つは裁判所に行っていたのでは間に合わないという場合だと考えられます。他の一方が親権を行うことができないときは、どちらが行うかを決めるというのが裁判所で決めていただくことなので、一方が行えないというのであれば、裁判所に行って決めるということには意味がないと考えられます。他方でイの方は、それを待っていたのでは望ましくない、あるいは待てないという場合を切り出すということです。
 これが狭いという御指摘がありますけれども、急迫の事情というのは今申し上げたような観点から、本来は用意された手続に乗せて検討していくべきところ、慎重な考慮を要するところ、どちらが決めるかというのを裁判所で決めるという形であるべきところを、それを待てないと、それもこどもの利益の観点から待つことができないということですので、趣旨は十分伝わっているのではないかと思います。
 説明の中に児童福祉法等の規定との比較において整合的であるという指摘がありますが、ただ、児童福祉法の方は生命身体、安全の確保のため緊急の必要とありますけれども、恐らくここでの急迫の事情は、待っていては望ましくないということですから、生命ですとか身体の安全の確保には限られない、より広い概念であると思われます。また、この言葉自体を少し民法の概念としてどうなのかというのを見たときに、ほかでもいろいろと使われているものでございまして、相隣関係における実力行使について、所有者に本来催告して所有者の行為を促すべきところ、急迫の事情があるときには実力行使が認められるとか、賃貸借契約において、賃貸人に修繕を求めて修繕をしてもらうべきところ、急迫の事情があるときにはそれを省略して自分でできるといったようなものでございますので、ほかにも幾つかございますし、それぞれ観点はありますけれども、結局は本来のルートを待つのでは適切ではないという考え方を切り出す概念として明らかにされていると思われます。そして、そのような例外を用意することが制度の建て付けとして望ましいものだと思われます。
 これに対しまして、これを必要性、相当性に置き換えるというのは、一体どういう場合が必要であるのかということを非常に不明確にする、広すぎるのではないか、逆に戒能委員からは狭すぎるというような御指摘もありまして、結局、必要というのは何に照らしてどういう観点から必要なのかという基準の設定が甘いと思われます。さらには相当性については、それが要件であるのか行使の範囲や態様であるのかという問題もありますので、やはり概念として非常に不明確になります。しかも、アと並んでイに付け加えるときには、必要性、相当性、あるいは必要やむを得ないというのとアとの関係もよく分からない、結局それだけがあればいいのではないかという気もするわけです。ですので、かえって趣旨を不明確にし、概念を曖昧にするというようなもので、望ましくないのではないか、原案のままでも十分明確な例外になるのではないかと考えております。
 それから、②の父母の意見が対立しているときを追加すべきというのは、対立しているときこそ裁判所の中立的な判断で、どちらが行使するのか、決定するのかを定めることが望ましいと考えられるときですので、むしろポイントは、(であって、裁判所の判断を待てないとき)という括弧書きの中にあると思われます。しかしながら、これは正に急迫の事情、しかもこどもの利益のために急迫の事情というところで受けているべきものですので、それとは別に、ただ対立しているときだけを挙げるというのは望ましくはないですし、また、子の利益のための急迫の事情と並ぶときは、むしろ限定しすぎということにもなりかねません。ですので、これは原案の考え方がよろしいのではないかと考えております。
 項目の2につきましては、小粥委員が御指摘になった点に非常に共感しております。石綿幹事の御指摘もありましたところですが、強いて①についてのニュアンスを言えば、小粥委員の御指摘に共感します。子の意思の重要性というのはよく分かりますので、しかし、それが明示されることによってもたらされる数々の懸念も表明されているところですので、その部分を考慮しないと踏み切れないのではないかと思っております。
 それから、項目3の(1)につきましては、必須とすべきというのは、全ての場合に必ず決めなければいけないというのが、かえって柔軟性からも問題ではないかと、多くの場合は決められることがあるかもしれませんが、そこは委ねる余地を残した方がいいのではないかと思っております。
 (2)でございますが、父母以外の第三者に監護者指定の申立権を認めるべきかということについては、一定の場合に必要性があるのではないかと感じております。一つには、父母自身が申し立てて第三者を指定するというルートと、第三者自身が申し立てて第三者を指定するというルートは分けて考えた方がいいのかもしれないと思っております。
 それから、第三者が申し立てて第三者を指定するという場合でございますけれども、これは他の制度との関係で、実質的には親権者等から権限を奪うということにもなりかねませんので、そうしたときに単純に第三者に申立権を認める、そのルートを認めるということについては問題があると考えております。どのような場合に認められるかということを非常に絞り込み、他の制度では対応できない、正に一定の、暫定的にでも緊急、必要で、認めるべきときということがあるのかもしれませんけれども、要件の絞り込みが必要であると考えられますことと、あと期間について、停止でさえも期間が限定されておりますので、ましてや第三者が監護者として指定され、親権者等から実質的に一定の権限を奪ってしまうということになるものについては、暫定性というか、期間制限などが必要ではないかと思っているところです。
○大村部会長 ありがとうございます。沖野委員からも1、2、3の各点について御意見を頂きました。基本的な方向性は、3(2)についてを除くと、前の小粥委員や石綿幹事と同方向の御意見と理解を致しました。同方向の御意見なのですが、1について従来の原案に賛成ということで、それについての積極的な理由と、それから必要性、相当性ということではかえって概念が不明確になるということについて、立ち入った御説明を頂いたと受け止めました。前の方々と少し違うと申し上げた3(2)については、一定の必要性はあるので、場合を分けて十分な絞り込みをするという形で認める余地があるかもしれない、こういう御意見だったと受け止めました。ありがとうございます。

単独親権派の思惑打ち破られる

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