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法制審議会家族法制部会ウォッチ14(佐野幹事と青竹幹事と今津幹事)

第2回議事録読もうよ会の告知始まりましたー、がまだ、1回目のウォッチ途中なので、続けますー

○佐野幹事

もう大分,今まで出たこととかぶるのですけれども,お話しさせていただきます。
 私は弁護士でして,扱っている事件の割合としては割と家庭の問題が多い感じです。ただ,離婚に関しては夫側,妻側,両方から関わっているという状況です。やはりいろいろな家族のパターンが出てきていて,なかなか一定のパターンにははまりにくくなっている,というのは実感しているところです。また,弁護士登録以来,弁護士会でやっている子どもに対する相談活動もずっと続けてきています。そういう中で,少しかぶっているところははしょりますが,今までの意見に賛同という意味で簡単にお話しさせていただきますと,まず,私は仕事柄やはり高葛藤事案ばかりを見ているというところがありますので,そういった意味では8割,9割を占めている協議離婚のカップルがどうなっているかという実情が見えていないというのは自覚しております。そういった意味では,議論を進めていくに当たり,やはり協議離婚の実態調査というのは必要不可欠,それを早くやっていただく必要があるのかなと思っています。もう一つ,この辺は進行に関してなのですけれども,養育費の回収に関する執行手続などの部分については,やはり実際多くやっている先生の話などを聞くと,実際,集中的にそういった事案を扱わないとなかなか見えてこないところというのはあると感じました。例えば,送達の回数とか,それに掛かる時間とか,あと添付書類の問題とか,そういったようなところも御指摘されていて,そういったところはどこかパイロットで集中的にやるような形で問題を吸い上げるということもあり得るのではないかと感じています。生活保護法77条の扶養義務者の費用徴収などをどこかの自治体で集中的にやってもらって,問題をピックアップすることなどが検討できないのか,というようなことも考えたりしました。
 それから,共同養育をできるのかできないのか検討するに当たり,やはりスクリーニングですね,当該家族の力学がどういうふうになっているかというのをきちんと正確に把握するということがどうしても必要になってくる。それは,ある意味,後進といえる日本ですので,海外の実態というのが非常に参考になるかと思うのですが,今まで法務省の方でも海外調査はやっていらっしゃるけれども,やはり少し包括的で,また,かつ韓国,オーストラリアなど直近の動きも激しいところでもあります。DVに関しては,先ほど御紹介がありました内閣府の専門調査会で出した調査というのもざっと見ましたけれども,こちらもDV対応というのは海外の調査をされているようなのですけれども,それが実際,離婚になったとき,それをきっかけに離婚ということもあるかと思うのですけれども,そこにどういうふうに離婚手続にリンクしているのかというのがなかなか見えてこないなというところがございます。必要な事項をピックアップした上で整理して,その項目について重点的に実態と法制度とを調べるといったことも必要なのかもしれないと感じています。
 それから,資料1に関する意見ですけれども,先ほども棚村先生とかがおっしゃっていましたけれども,ここでは法律を検討するのですけれども,やはり私たち実務をやっている感覚からすると,どれだけ当事者に対する支援が用意できているかによって,どこまでその当事者に法律で求めることができるのかというのが全然違ってくると感じています。
 面会交流などは特にそうだと思いますけれども,実施を原則にしたところで,支援機関がないとなると,子どもがきついだけですので,そういった意味では,是非ここで支援のことも一緒に検討していただきたいと思います。
 また,これも家族支援の在り方ではあるのですけれども,手続法も絡むと思いますが,裁判所に来るような事案では,家庭裁判所と家庭支援機関,行政機関の連携が必要不可欠ですし,例えば私は市区町村の子ども家庭支援にも関わっておりますが,最近,市区町村も子ども家庭支援という点ではかなり力を付けてきていて,行政のレベルで当該家族の力学について,かなり情報を持っています。司法と行政両方リンクしていれば,支援と情報とをきちんと把握できると思うのですけれども,それを結び付けるようなシステム,それは法的な枠組みをどうやってそこをサポートしていくかというところかなとも思いますけれども,そういった視点からも見ていく必要はあるかと思っています。
 さらに婚外子の問題,実際,夫婦別姓の必要性から事実婚形態を採っている夫婦というのもあるわけであって,その子に対する共同養育というのはどういうふうに考えるかという問題もあるかと思います。
 あと,実際子どもを支援していると,両親が,どちらかが子どもの利益を考えていただけるのだったらいいのですけれども,両方ともそうではない,そのために子どもがどうしようもないところに落ち込んでいるようなケースもあるわけなのです。そういった場合は,その子どもを支援するために,子どもの側から法的な手続をとっていかなくてはいけないということがあります。そういったときに,子どもの監護に関する処分とか,親との利害相反の場合の特別代理人の選任の申立権者に子どもが明記されていないというところで,手続が進まないという場合も出てくる。それから,父母以外の第三者が子どもを見ているような場合に,その第三者に対して監護者指定をする必要がある場合も出てくるということがあります。そういった意味で,申立権者という辺りも少し範囲に入れていただければと思います。
○大村部会長 ありがとうございます。たくさんの御指摘を頂きました。調査やヒアリングが必要だという御指摘はこれまでにも出ておりますけれども,協議離婚については,何人かの方々から出ているように,実態を知る必要があるだろう,それから,養育費の執行状況について,どこかにデータを集中的に集めるようなことはできないだろうか,共同養育についての海外調査についても,もっと立ち入ったもの,新しいものが欲しいといったような御要望を頂きました。考え方については,これも出ているところですけれども,法制度,家族の実態に関わる規範と,支援制度の関係,裁判所と行政機関の連携といったことについての御注意があったと思います。婚外子も視野に入れるというのは,これは複数の方がおっしゃっているところです。申立権者の問題についても議論をしていただきたい。こんなことだったでしょうか。
ほかにはいかがでございましょうか。

○青竹幹事

大阪大学の民法を担当しております青竹と申します。既にもう先生方がおっしゃったことで,付け足すことは全くございませんけれども,賛成という意味で3点,御発言させていただきたいと思います。
一つは,親権の名称変更の点なのですけれども,離婚後も,原則としては親が子の養育に関わるという観点からは,それからまた,親権は親の権利ではなく義務であるという側面が強いというのは共通認識ですので,これを分かりやすく伝えるという観から,やはり親権を親義務とか,親責任,親責務ですか,そういった義務の側面が分かりやすい用語に変えるべきであるということを支持したいと思います。
二つ目に,検討の範囲の問題ですけれども,子のための法制度,政策を実現するといった広い観点からは,これは離婚に関連する制度の見直しというテーマの中では中心的ではないようにも見えるのですけれども,先生方が御指摘されているように,未成年養子についての検討も重要ですし,また,婚外子にも広げて検討するべきではないかと考えております。
 三つ目に,これも実態調査,現場の声が必要ということを先ほどから多くの御発言がありますけれども,これは議論の方向性に大きな影響も与えますので,議論が熟したときというのではなく,早い段階で実態調査を検討した方がいいのではないか,こんなふうに考えております。
○大村部会長 ありがとうございました。親権の概念あるいは用語については,様々な御指摘を頂きましたが,用語を改める方向で考えるべきではないか。それから,検討対象については,婚外子,非婚の場合を視野に入れるとともに,未成年養子についてもやはり考えたい。最後,これまでに実態調査とかヒアリングとかいうような話が出ておりますけれども,早い段階でやった方が有益であろうという御指摘を頂きました。
ほかに御発言,いかがでしょうか。委員,幹事の方々で,まだ発言をされていないが発言したいという方,あるいは関係官庁や裁判所の方々で,さらに,1回発言したけれども補足したいというような御発言がありましたら,伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。

○今津幹事

 東北大学の今津でございます。私は手続法を専攻しておりますので,その立場から発言をさせていただきたいと思います。
 先ほど幹事の杉山先生からも御発言がありましたように,手続法の観点から言いますと,養育費の支払いの確保ですとか,あるいは面会交流の実現とか,そういった執行手続の局面でどうしていくかというところに今,関心を持っているところであります。
 養育費に関しては,先ほど杉山幹事からかなり詳細なお話がありましたので,私もそこで述べられたことに関心を持っておりまして,そちらも賛成というか,その辺りを議論していきたいというところを思っているのですけれども,1点,民事執行法の改正が近時ありまして,昨年施行されたという状況にありますので,施行後の状況といいますか,新しい制度になって使い勝手がよくなったのか,あるいは,まだ不満足なところがあるのかという点についての,実際の現場で事案に当たっていらっしゃる方の声ですとか,そういったことをヒアリング等の形でお伺いできると,かなり参考になるのかなという気がしております。
 それ以外の点として,部会資料1として頂いたものの中に,3ページ辺りにあります子の意思あるいは意見の反映というところですけれども,資料の中には主として実体法的な側面から記載されているようですが,4ページの(注2)にもありますように,手続法の側面からのアプローチということも現状でも一応されていると。ただ,ここにある家事事件手続法の制定の際にも議論がされた子どもの代理人というような制度について,その必要があるのかどうかという点も含めて,これも実際に使い勝手といいますか,現行の制度では少し不満足だというような声があれば,その辺りも見直しが必要だろうと思いますので,実体法的に子どもを権利主体にするかどうかという問題と,それから,手続の中でどういうふうに扱うかという問題を併せて検討していければと思っております。
 最後に,部会での議論をどういうふうに進めるかという点に関しまして,頂いた資料でも非常に広範な事項を挙げられておりますので,全てに対応していくというのはかなり大変な作業になるかと思うのですけれども,議論の順番として私が思っているのは,より具体的なところから始めていくのがいいのかなという気がしています。先ほど来出ている,例えば,親権の呼び方ですとか概念をどう考えるかとか,あるいは権利主体をどう考えるかという辺りをいきなり議論の最初に持ってきても,なかなか意見の集約というのは難しいような気がしていますので,差し当たり,抽象的な権利の問題は一旦棚上げといいますか,置いておいて,実際に今,現場で,権利があると,例えば養育費の支払い義務があるとか,面会交流しなければいけないとされたにもかかわらず実現されていないというようなケースについての処理を差し当たり検討していくということの方が,議論のしやすさといいますか,という意味でも適当なのかなという気がしておりますので,そういった方向での議論というのを考えていただければと思っております。
○大村部会長 ありがとうございました。大きく分けて2点だったかと思いますけれども,民事執行法の改正法の利用状況ですとか,あるいは子どもの意思について,子どもの代理人の使い勝手といったようなことについて,ヒアリング等々で明らかにする必要があるのではないかということと,議論の仕方としては,具体的なところから始めるのがよいのではないか,特に,現在制度があるのにうまく機能していないというところについて,なぜなのかというようなことを考える必要があるという御指摘だったかと思います。

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