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法制審家族法制部会第10回議事録4~久保野幹事・池田委員・棚村委員・窪田委員

昨夜のセミナーを無事果たす

帰宅してようやく嘉田さんの質疑をチェック

協議離婚支援の必要を実感する

児相も変わらないといけないね

頼もしい発信を発見しつつ

単独親権制は撤廃で


議事録を読んでいく

○大村部会長 それでは、時間になりましたので、再開させていただきます。
  休憩前は資料の第1と第2について御意見を頂きました。いろいろな御意見を頂きましたので、大体論点は出尽くしているのかと思います。また、第3以降について、それぞれの問題に応じて関連して御発言いただくということもできるかと思いますので、特に御発言がなければ、第3以降に行きたいと思いますけれども、よろしいでしょうか。

○久保野幹事 

すみません、1点細かい点で、一括解決、一回的解決についてどこまで考慮するかということが議論になっている中で、冒頭の武田委員からの御発言の中にもありました、過去の未払婚姻費用について財産分与の中で一緒に扱うというのがあるかと思うので、その点についても、婚姻費用には子どもに係る費用も入っているということもありますし、検討の中でそれも視野に入れるとよいと思いました。

○大村部会長 ありがとうございます。婚姻時の財産分与の手続の過程の中で何をどこまで取り込むかということで、未払の婚姻費用の清算についても考えていく必要があるという御指摘を頂きました。
 ほか、よろしいでしょうか。

 それでは、第3、第4、第5の方に移らせていただきたいと思います。9ページの「第3 清算的財産分与について」というところから始まりまして、13ページ「第4 清算的要素における清算の在り方(2分の1ルール)」、そして「第5 夫婦が婚姻生活中に協力して取得した居住用不動産」、この三つの項目について御意見を頂戴したいと思います。どなたからでも結構ですので、お願いをいたします。

○池田委員 

弁護士の池田でございます。
 第3の13ページの課題の①、②の辺りについて意見を申し述べたいと思います。
 入口がとても個別的なニーズの話から入っていくのですが、13ページの一番上の注書のところで、学資保険が財産分与の対象となるか否か、よく争いになると例示されているところに関連してです。この点の実務を紹介しますと、学資保険は生命保険契約の一つとして、通常は財産分与の対象となるところ、別居時の解約返戻金相当額を2分の1ずつに分けるということが原則になっているかと思います。そのような原則に従って処理をしたいというのが非監護親側の主張です。他方、学資保険は子どもの大学入学資金等として使用することを目的として契約されていますので、監護親側としては離婚時に清算するのではなくて、当初合意された目的に従って使用したい、そのため財産分与とは別枠で単独で取得して管理したいと主張します。これが監護親側の主張で、双方対立するという構図にあると思います。私の経験からしますと、監護親側のほとんどがそういう要求を持っていて、これに同意する非監護親も一定数いるという印象を持っています。ただ、それは合意をベースとする協議離婚ですとか調停離婚の場合に限られて、裁判所が監護親の主張を判決等で認めるということはなかなかないのかなと理解しています。
 私自身の感覚としては、やはり子どもの教育に係る資金としてあらかじめ目的を合意しているということがありますし、また、非監護親も一定数それに同意をする扱いをしているということもありますので、別枠にするということについては一定の合理性があるのかなと考えていまして、裁判所が財産分与の対象としないということについて、法的解釈の一定の根拠を設けることができればいいなと考えています。
 それで、この13ページの②のところに関わるのですが、今挙がっています考慮要素として、財産内容、性質、取得のための原資等が挙げられています。この「性質」というのがその目的を含むものであれば、それはそれでいいのですけれども、「取得の目的」ということも独立の要素として挙げるということがあってもいいのかなと思います。それを一つの根拠に、先ほど申し上げた学資保険の問題というのもクリアできる可能性があるかなと思っています。それから、取得の目的という要素は必ずしも今のものに限った話ではなくて、例えば、後で出てきます居住用不動産の扱いを考えるときというのも、有効に機能し得るものになるのではないかと思っています。
 以上が②に関する私の意見ですが、更に学資保険の問題を敷衍させていただきたいのですけれども、実は学資保険の問題ってそこで終わらないのです。というのが、契約の名義が非監護親になっている場合に、財産分与から外すとだけ言ってしまうと、非監護親が持ってしまう、それで終わりということになってしまうので、その名義を監護親に移転するという手続が更に必要になってくるのですね、目的をきちんと達成するためには。そうなってくると、少し財産分与の話ではなくなってくるかもしれません。むしろ子どもの扶養、先ほど窪田先生が御指摘されていましたように、子どもの扶養というのが非常に前面に出てくる話で、財産分与の中で取扱いができるのかどうかという問題は出てくるかなと思います。では養育費の中で扱えるのかというと、そうでもありません。調停では、大学の入学資金等は特別経費として位置付けられ、将来協議しましょうねという約束だけをして終わってしまい、学資保険を正面から扱ってもらえないのが実情です。多分、先ほど大石先生がおっしゃっていたように、養育費はフローの問題と考えられているからだと思います。そういうわけで、養育費の中でもなかなか扱い切れない、財産分与の中でも扱い切れないというのが学資保険かなというところがあって、やはりニーズがある中で、何らかの形で扱えるようにできればよいと思います。私の個人的な意見としては、学資保険は特別の教育費のためのストックではあるけれども、養育費の中で、その名義の移転を命ずるとか、そんな扱いがあってもいいのかなということを少しおぼろげに考えています。漠然とした意見で申し訳ありません。

○大村部会長 ありがとうございます。13ページの上の(注)に出てくる学資保険との関係で御意見を頂きました。学資保険について財産分与の対象になるという扱いがされているけれども、そうではない取扱いが望まれることが多いということで、財産分与と別枠で処理することができるようにしたい。それとの関係で、課題の2の②に挙がっている考慮要素の中に目的を書き込むというのはどうかという御指摘を頂きました。また、学資保険を外に出したときに、それはどうなるのかという問題を別途考えなければいけないということで、広い意味で養育費に関わる問題として取扱いを考えていく必要があるのではないかという御指摘も頂いたと思いますが、そちらはまた養育費の方でまた御議論を頂きたいと思います。
 ほかにいかがでございましょうか。

○棚村委員

 早稲田大学の棚村です。
 特に762条とも関わってくるわけですけれども、特有財産、それから、名義は一方になっていても、夫婦の協力によって得た実質夫婦共有財産、名実ともに共有財産、こういう3分類みたいなものについて、きちんと明確にした方がいいのだろうと思っています。先ほども少し触れましたが、調停ですとかいろいろなところでも、婚姻財産一覧表みたいなものを出していただいて、婚姻前に持っていたものと婚姻後に取得したものと分類しながら、表を作りながら、どこに入れる、入れないというときに、結局、特有財産であるということを主張する方がそれを主張立証しなければいけないという原則になってきているので、それ以外は、婚姻後に取得したのは、婚姻前から持っていたか、婚姻中であっても贈与とか、あるいは相続で取得したということでないと、全体がやはり婚姻財産という範ちゅうに入るような形に今、なっています。
 そうすると、先ほど水野先生が言ったような、実際のケースを見ていても、女医さんで非常に所得が高くて一生懸命働き預貯金や不動産を購入していて、これに対して、夫が全く働かずに、浪費や借金もして、迷惑をかけ続けてるようなケースでも、婚姻財産とされて半分を持って行ってしまうなど、もちろん管理や分別の仕方にもいろいろあるのですけれども、要するに悪平等とか不平等みたいなことも起こったりもしていたりもしています。それから、もう一つは、特有財産なのか、夫婦の協力によって得た実質共有財産、婚姻財産なのかというのは、宝くじとか馬券とかそういうものが当たったときに、これは自分の能力や才能で得たのだと得た方は言うわけです。ところが、いや、私がいたからその協力によって得られた財産なのだということで、海外でも、何億も当たってそれが離婚に結び付いて、財産争いが非常に熾烈に展開されるという出てきています。そのときも、一体これは夫婦財産なのか、それとも個人財産なのかという線引きみたいなことが常に問題になったりして、ルールや基準がないといけないと感じる事案も増えてきました。
 ですから、先ほど池田委員がおっしゃられた、財産取得の目的とか経緯とか、いろいろな事情を総合的に勘案しつつ、お金を誰が出したか、出さないかというのももちろん重要ですけれども、管理分別の仕方ももちろんあったりして、いろいろなことを総合的に考慮しながら、夫婦の協力によって得られた財産なので清算の対象にすべきだというものと、やはり個人の資質や能力で取得したものなのでその人個人の財産だとするものについて、その辺りを明確に議論をしてルール化しておくというのは非常に重要なことではないかと思っています。
 それから、2分の1ルールの方にも入っていいですか。2分の1ルールは、先ほどもお話があったように、寄与度、財産の取得への寄与貢献の度合い、そういうのをベースに考えているわけですけれども、それがはっきりしない場合には相等しいものとするというので、実務上も、先ほど言いましたように、定着をしていてこれ自体は悪くはないのかなと思う部分もあります。ただし、これも2分の1でないということの主張立証というか、反証を挙げないといけないということで、婚姻関係が大分多様化してきて、稼働能力、稼ぐ力も、共働きもありますけれども、専業主婦や性別役割分業を前提にしていた時代とはだいぶ違ってきていないかとも思います。私は、先ほどの特有財産と夫婦財産かで清算対象になる財産の決め方もそうなのですが、調停をやっていますと、何も分けるものがないというので、本当に養育費も払えないというのもあれば、逆に、お互いがかなりの所得能力を持って、金融資産とかいろいろなものに投資したり、その収益について多少混じったり、預貯金の利用がいろいろな形で流用されたり、それから、不動産で多額の投資する方もいて、財産分与の割合をめぐっても、かなりもめたりすることが多くなってきました。ある面では夫婦の経済活動が活発化して、よくなったなという面もありますけれども、他方でいうと、従来の夫婦の在り方とか形と異なった夫婦の経済的関係も出てきているので、その辺りも本当にこの2分の1ルールというものを、先ほど言った清算の対象にする財産の範囲もそうなのですけれども、その辺りのところを夫婦の協力関係や経済活動の実態との関係でもう一度、せっかくいろいろな調査をしていただいていますから、見直す必要はないか、多分、二極分化しているのではないかという感じを持っています。つまり、全くお金を持っていなくて分ける対象がないのだというのが協議離婚の結果なんかでも結構出てきたりします。他方で家裁なんかで見ていますと、かなりの資産形成とか、多額のお金を作っている御夫婦みたいなのがあって、リストで出すと、後でいう財産開示の問題の方がむしろ深刻かもしれませんけれども、どういう範囲のお金や財産を資産形成しているかというのがよく分からないケースがすごくあります。次々といろいろなもので出てきたときに、かなりの量になっていて、財産関係をもう一度再調整するとか、公平に分けるということはどういうことなのかとか、その辺りをケースも多様化してきていると思うので、原則をどういうふうに立てて、どんなふうに処理するかということについて、もう一度議論していく必要があると思います。
 最後に、居住用不動産なのですけれども、これは一番悩ましいところで、財産分与の問題として何らかの形で利用権みたいなものを設定するという、財産分与の方法の一つとして規律をしていくというやり方と、それから、婚姻中の夫婦財産制度の一環として、何らかの形で利用権を設定していって、他方による恣意的な処分みたいなものに対して一定の制限を居住用不動産について掛けていくという方法も考えられます。私は、この点についてはいろいろなやり方があると思うので、財産分与の中の一つの公平を図る手段、子や当事者の居住確保として、賃貸借と使用貸借とかを設定させて利用するという方法も可能にしてよいと思います。多分ケースによっては、そうでないと難しいというケースもあるかもしれません。しかし、御提案は頂いているのですけれども、なかなか一つに絞っていくというのは難しい感じなのかなとも思います。配偶者の居住権みたいなものを相続のところでも作られた経緯はあるのですけれども、この辺りのところは、どういうふうに制度設計をして、居住を確保できるような手立てをしていくかと、現行法でも四苦八苦しているわけです。たとえば、オーバーローンのときなんかは一体どうするかというので、その辺りのところも含めると、財産分与の一つの方法として、そういう利用権、居住権みたいなものを設定するような方式というのは考えられると思うのですけれども、婚姻中の居住の確保みたいなところで、夫婦財産制の一環として制度設計をすることも考えるべきだと思います。もちろん、それから別居や離婚した後も、もちろんそういう必要性があれば構わないとは思うのですけれども、第三者との関係の調整とか、それから、設定された権利の性質みたいなものをめぐって、亡くなったときよりももう少し複雑な問題が出ないかどうかということだけ、少し心配なところを指摘させていただきます。長くなりました。

○大村部会長 ありがとうございます。3点御指摘いただいたかと思いますが、最初の2点は密接に関わっていると理解をいたしました。清算的な財産分与を算出する基礎となる財産をどのように捉えるのかということを考える必要があるだろう、それとあわせて、2分の1ルールをそのまま適用するのが適切ではないような夫婦も増えてきているので、これらの問題について考える必要があるのではないかという指摘を頂きました。他方、居住用不動産の問題については、財産分与の一方法として居住用不動産の取扱いを考慮するということはあるかもしれないけれども、相続の場合のような利用権を新たに設けるということになると、相続の場合以上に難しい問題があるのではないかという御指摘を頂いたと理解をいたしました。

○窪田委員 

 今の棚村先生の御発言とかなり重なってしまうのかもしれませんが、私も3点、2分の1ルールについて発言させていただけたらと思います。
 最初に、2分の1ルールということで言葉が出てくるのですが、この言葉の意味については少し、きちんと共有した上で議論をしていく必要があるのだろうと思って伺っておりました。先ほどから出ております平成8年の要綱ですけれども、今、手元にあるのですが、考慮すべきものとして、当事者双方がその協力によって取得し、また維持した財産の額及びその取得又は維持についての各当事者の寄与の程度、婚姻の期間、婚姻中の生活水準、婚姻中の協力及び扶助の状況、各当事者の年齢、心身の状況、職業及び収入、その他一切という形で、考慮要素は非常にたくさん挙がっていて、この考慮要素がたくさん挙がっている中で、各当事者の寄与の程度は、その異なることが明らかでないときは相等しいものとする意味での2分の1ルールということですから、少なくとも平成8年の要綱の段階では、財産をそのまま単純に2分の1に分けるということではなかったのだろうと思います。
 一方で、最終的には改正に至りませんでしたが、相続法の改正のときに配偶者相続分について取り上げられて、そのときには婚姻中の、要するに、夫婦の財産の中から、結婚前から持っていた財産、それから相続等によって無償で得た財産を除いたものを2分の1に分けるということで、これは非常に単純に財産全体に対して2分の1を当てはめていたということでしたので、どちらを前提とするのかでかなりイメージも違ってくるのかなと思いました。場合によっては、実務において2分の1ルールが定着しているということの意味も、どちらの意味なのかということをお聞きできればいいなと思いながら伺っておりました。これが第1点目です。
 第2点目として、これも棚村先生から御指摘のあった点なのですが、2分の1ルールに関して言うと、2分の1にするというのを条文に書くと大変なのですが、寄与の程度が分からなかったときに相等しいものとするという程度の書き方だったら、条文としては十分にあり得るのだろうと思います。ただ、問題となるのは、どの財産に対して適用するのかということです。先ほど言ったように、婚姻前の財産、それから婚姻中に無償で得た財産を除いてという程度のやり方であれば、比較的簡単に特定できるのかもしれませんが、その場合であったとしても、例えば婚姻前から800万円の定期預金を持っていた、あるいは普通預金を持っていた、結婚してからは、収入があって全部使ってという形で何も残っていない、プラスマイナスゼロだと。このときの800万円の預金というのは、残ったということについてどう評価するのか、これは古典的にいつも言われてきたことなのですけれども、こうした問題がありますので、2分の1ルール、これはいいよね、悪いよねという話ではなくて、どういうふうに実現していくのかというのはかなりかなり大変なのかなと思いました。反対というわけではないのですが、検討すべき必要性があるのではないかということです。
 それから、3点目で、これはもう、こんな余計なことは言い出すなということなのかもしれませんが、これも棚村先生の御発言の中にもあったことだと思うのですが、この2分の1ルールというのは、裁判官の方に聴いても、学会とかでの御報告を伺っていると、基本的には専業主婦家庭を想定しながら、その専業主婦家庭のモデルを念頭に置きながら、そこでバランスを確保するためのものとして作られてきたという経緯はあるのではないかと思います。
 そうだとすると、問題となるのはいわゆるパワーカップルといわれるような、夫婦ともにばりばり稼いでいるというところでこのルールをそのまま当てはめるのかということが出てくるのだろうと思います。もちろん当てはめてもいいのかもしれませんが、それを望まないという夫婦もいるだろうと思います。二人とも望まないのだったら、それでいいのですけれども、片一方は望んで、片一方は望まないというときどうするのだとかということが出てくるとやっかいだろうなと。恐らくこれに対する一つの解決の仕方は、これが余計な話ということになるのですが、夫婦財産契約をもう少し使いやすいものにするということで対応できないかということなのです。今回のこの法制審議会の役割からすると随分はみ出してしまったものになるのかもしれませんが、ただ、2分の1ルールとの関係で、もしこれを導入するのだとすると、それを当事者の合意によって回避するということを確保するために、幾らかでもやはり夫婦財産契約について検討した方がいいのではないかという感想を持ちました。

○大村部会長 ありがとうございます。棚村委員の発言とつながる形で御指摘を頂きました。
 3点おっしゃいましたけれども、一つ目としては、2分の1ルールが適用される際の2分の1というのは何の2分の1なのかということについて、これまでの立法提案の中には異なる考え方が含まれていたのではないかと思われるので、それを明らかにする必要がある、実務上どういう考え方がとられているかということについても関心があるという御発言がありました。
 それから、二つ目におっしゃったことは、財産の内容や構成は変化していくので、その変化していく財産をどのようにトレースして、どのように分与の対象を固定するのかという問題がかなり難しい問題として存在する、これは棚村委員の御発言にも含まれていたと思いますけれども、そうした御指摘を頂きました。
 それから、三つ目に、2分の1ルールを望まないようなカップルもあるであろうということで、もし2分の1ルールのようなものを設けるのならば、それを合意によって外すということも考えていく必要があるのではないか、それとの関係で夫婦財産契約の可能性ということについても御発言がありました。
 ほかにはいかがでございましょうか。


 

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