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再婚禁止期間違憲判決の補足意見

最高裁判決の判決理由だけではなく、各裁判官の意見を読むことで学び得ることがあることを実感したので、改めて、再婚禁止期間違憲判決に関する各意見を読むことにした。判決自体については、すでに触れた。

まず、共同補足意見

裁判官櫻井龍子,同千葉勝美,同大谷剛彦,同小貫芳信,同山本庸幸,同大谷直人の補足意見は,次のとおりである。

 私たちは,本件規定のうち100日の再婚禁止期間を設ける部分(以下「100日以内部分」という。)について憲法14条1項又は24条2項に違反するものではないとする多数意見に賛同するものであるが,再婚禁止による支障をできる限り少なくすべきとの観点から,上記100日の期間内であっても,女性が再婚をすることが禁止されない場合を認める余地が少なくないのではないかと考えており,100日以内部分の適用除外に関する法令解釈上の問題について補足しておきたい。

離婚後100日以内の再婚禁止は違憲ではないとしたものの、というフォロー

 多数意見が判示するとおり,本件規定の立法目的は,父性の推定の重複を回避し,もって父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにあると解され,女性の再婚後に生まれた子につき民法772条の規定による父性の推定の重複を避けるため100日の再婚禁止期間を設けることは,国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超えるものではなく,上記立法目的との関連において合理性を有するということができる。

100日の再婚禁止期間は、父性推定の重複を回避する立法目的との関係で合理性はある。しかし、

 ところで,100日以内部分の適用を除外する場合に関する民法733条2項は,除外する事由として,女性が前婚の解消等の後にその前から懐胎していた子を出産した場合を挙げているところ,これは,その出産後に懐胎した子については,当然に前夫との婚姻中に懐胎したものではないから,同法772条の規定による父性の推定を及ぼす必要がないとの理由によるものであると思われる。そうすると,女性にのみ再婚禁止期間が設けられた立法目的が上記のとおり父性の推定の重複を回避することにあることからすれば,民法733条2項は,上記の場合以外であっても,およそ父性の推定の重複を回避する必要がない場合には同条1項の規定の適用除外を認めることを許容しているものと解するのが相当であろう。また,そのように解することは,婚姻をするについての自由を尊重する多数意見の立場にも沿うものということができる。

例外ってあったよね。とすると、

 具体的には,女性に子が生まれないことが生物学上確実であるなど父性の推定の重複が生じ得ない場合,離婚した前配偶者と再婚するなど父性の推定が重複しても差し支えない場合及び一定の事由により父性の推定が及ばないと解される場合(最高裁昭和43年(オ)第1184号同44年5月29日第一小法廷判決・民集23巻6号1064頁,最高裁昭和43年(オ)第1310号同44年9月4日第一小法廷判決・裁判集民事96号485頁,最高裁平成7年(オ)第2178号同10年8月31日第二小法廷判決・裁判集民事189号497頁等参照)には,民法733条1項の規定の適用がないというべきである。

再婚禁止期間の適用がない場合がありうる。

 従来の戸籍実務においても,前婚の夫との再婚の場合(大正元年11月25日民事第708号民事局長回答),夫の3年以上の生死不明を理由とする離婚判決によって前婚を解消した場合(大正7年9月13日民第1735号法務局長回答,昭和25年1月6日民事甲第2号民事局長回答),女性が懐胎することのできない年齢(67歳)である場合(昭和39年5月27日民事甲第1951号民事局長回答)及び3年前から音信不通状態にあり悪意の遺棄を理由とする離婚判決によって前婚を解消した場合(昭和40年3月16日民事甲第540号民事局長回答)などにおいて,再婚禁止期間内の婚姻届を受理してよい旨の取扱いがされており,このような取扱いは,民法733条1項の規定の適用除外についての上記のような理解に沿ったものと思われる。

個別的に救済してきたこともある。

 以上の理解に立つと,女性がいわゆる不妊手術を受けている場合についても,これをもって当該女性に子が生まれないことが生物学上確実であるときは,上記の各場合と同等に取り扱って差し支えないものと解されるであろう。また,前婚の解消等の時点で懐胎していない女性については,民法733条2項に規定する前婚の解消等の後にその前から懐胎していた子を出産した場合と客観的な状況は異ならないのであるから,100日以内部分の適用除外の事由があるとしても不相当とはいえないであろう。

100日以内でも適用除外としてもよい場合がある!

このように,本件規定の立法目的との関連において考えれば,100日以内部分の適用除外の事由に当たると解される場合は,民法733条2項に直接規定されている場合や従来の戸籍実務において認められてきた場合に限られるものではないということができるのである。

適用除外を拡大しておこう?!

 もとより,婚姻届の提出の場面においては,戸籍事務管掌者が行う形式的審査の限界から,その届出の時点で民法733条1項の規定の適用除外とされる事由の範囲に影響があること自体はやむを得ず,上記のように前婚の解消等の時点で懐胎していないという事由は,医師の作成した証明書など明確性・客観性の上で確実な証明手段による認定を要するという制約は受入れなければならないであろう。

100日以内は違憲ではないといいつつ、医師の判断付で、妊娠していない場合には、適用ないとした方がいいことに言及。

これを踏まえて、同趣旨を盛り込んで、立法的解決が図られていった。

漏れなく救済しようという姿勢がけっこう珍しく見える、そんな最高裁って一体。。。


ともあれ、この切り口から、今、法改正でさらに再婚禁止期間自体の廃止の動きも見られる。最高裁は慎重な歩ではあるが、動きのあるところであり、目が離せない!!

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