税理士業界の近未来予測
15年くらいまえに、面白いと思って取り組み始めたことが、今ほぼ当たり前になっているので、5年から10年位先のことを妄想してみました。
15年前にやりはじめたこと
・記帳代行→名南経営の上海入力センターへ依頼
・顧客とのやりとり→Mykomon
・会計クラウド化→オリコンタービレのフロンティア21と発展会計
・リモートデスクトップで顧客のPC操作(経営革新計画取得)
10年前にやりはじめたこと
・スタッフのテレワーク化
・Dropboxで顧客とデータ共有
・Adobe Flashベースのクラウド経営計画ソフトの開発(経営革新計画取得)
使っているツールは変わっていますが、どれも今では常識になっていることです。当時はあまり顧問先企業に理解されませんでした。
それが変わったのは今回のコロナ禍です。訪問せずにZOOM等でコミュニケーションをとることを顧問先企業さんも受け入れていただけるようになりました。
それ以前は、税理士は顧問先に足を運んでナンボみたいなところがありました。
これらの、取り組みは、未来を予測して論理的に導き出したものではありません。ただ単にそれの方が精神的にも肉体的にも「楽」だったからです。
日本人の性質は、「楽」<「あるべき論」 です。税理士はこうあるべきというドグマがあり、昭和30年代生まれの私もそこに引っ張られてしまう面があります。当時、ドグマの総本山である会の会員だったということもあります。
最近では、「あるべき論」のハードルが下がってきたこともあり、「楽」が大手を振って歩けるようになってきました。
そういった側面から、これから税理士が「楽」になる方向性を予測してみたいと思います。
大きな流れとしては、「ひとり税理士」化がすすんでいくと思います。税理士になる人のうち経営能力の高い人はそんなに多くなく、もともとサラリーマンが性に合わない一匹狼的なひとが多いはずです。そういう人は税理士も顧問先が増えてきたら経営者に変わるべきという「あるべき論」によりマネージメントで苦労します。経営の3大苦労は、「お金、売上、ヒト」です。「ひとり税理士」はヒトの問題から完全に開放されます。かつては、税理士業は労働集約型産業の典型であったため、ヒトの数と売上が比例しました。そのため多くのヒトを雇用しないと、売上とお金の苦労から開放されなかったのですが、それも変わりました。テクノロジーの進化により正社員を雇用しなくても売上をたてられるようになってきました。
「フリーランス」と「ひとり社長」の違いは、「フリーランス」は、ひとりで一人分の売上しか稼げないヒト、「ひとり社長」は、ひとりで普通の会社と同じくらいの売上を稼げるヒトと私は定義しています。「ひとり税理士」も「ひとり社長」と同様だと思います。
前置きが長くなりましたが、「ひとり税理士」が「楽」になるという前提で近未来を予測したいと思います。
・法人税申告書一式の作成自動化
会計入力がほぼ自動化された現在、法人税申告が、「ひとり税理士」のボトルネックです。UiPathというRPAで、達人の法人税申告書のロボットを作ったことがあります。RPAを使ったことがある人はわかると思うのですが、達人のようなオンプレミスのソフトとRPAの相性は非常に悪いです。10回のうち3回くらいは失敗しますので、実用化はあきらめました。
そのためにはまず法人税申告書のクラウド化が必要です。現状でちゃんと使える法人税申告書のクラウドシステムにアカウンティングサースがあります。以前ユーザーの時期があり非常に気に入ってたのですが、料金が上がったのと、核となる会計システムが昭和のUIで使う気にならないために解約した経緯があります。会計ソフトの部分を弱めて申告ソフトを前面に出して、他の会計ソフトに対してオープン化していくと可能性が広がると思います。
本当は、達人や魔法陣がクラウド化をすすめてRPA的要素をいれてくれたら一番良いと願っています。
・顧問先との連携プラットフォーム
現状、顧問先企業とのやりとりに、様々なクラウドのツールを組み合わせていると思います。例えば
・契約 クラウドサイン
・請求管理 各種請求システム 口座振替サービス クレカ決済
・連絡報告 chatwork Mykomon
・ファイル共有 ドロップボックス
・オンライン会議 ZOOMなど
・画面共有 teamviewer など
・業績予測 Mangeboard bixidなど
これらそれぞれ、ID パスワードを別々に取得する必要がありITリテラシーがあまり高くない顧問先だと全部導入するのはなかなか大変です。こういうのをひとつのプラットフォームでできたらいいなと考えています。既に近い発想のサービスもでてきているようですが、こういうのがあると新規の顧問先に、ひとつのIDを付与するたけで済むので「ひとり税理士」は「楽」になります。
・インボイス方式による請求書の電子化対応 ERPの普及
2022年10月からインボイス制度が始まります。そうなるとEDI(電子受発注システム)などが中小企業にも下りてきて請求書の電子化が進むと考えられます。そうなると会計ソフトは販売管理ソフトと結びつきERP的な方に向かうでしょう。freeeは既にERP的発想でつくられていますが、他の会計ソフトも追随するのではないでしょうか?そうなると会計業務がさらに「楽」になると思います。
会計業務、給与計算業務など、申告の前までは実用的でとても便利になっていますので、現状で「楽」になって欲しいと願うことはこんな所です。
ただし、わたしも50代の後半になり感性が鈍くなっていることは否めません。ですので15年前よりも私の予測の確度は下がっている可能性はありますので悪しからず。