リコリス・リコイルがここまで愛された理由の考察と未来について
2022年夏アニメで大ヒットとなったリコリス・リコイルが最終回を迎えました。
全話通して自分は凄く楽しめた作品で大満足だったのですが、あえて、マイナス面も含め、リコリコを追っかけていて感じた事をつらつらと綴りながら、ここまで愛される作品となった理由とこの先の展開について、自分なりに考えをまとめてみました。
言うまでもなく私見ですので、そのあたり、どうかお手柔らかにお読みいただけますと幸いです。
千束とたきなだけを追うアニメ
※「ANIPLEX presents ANIMEコンシェルジュ」のリンクを埋め込んでいたのですが、動画公開期間が終わり非公開動画となってしまったようです。
2022年9月20日に公開された「ANIPLEX presents ANIMEコンシェルジュ」に足立慎吾監督が登場し、次のように語っています。
「千束とたきなだけの感情で見て貰えれば大丈夫なように作ってあるつもりなんで、細かい事は考えずに、千束とたきなだけを追って貰えれば、彼女たちにまつわる物語にふれられるんじゃないかと思います。彼女たちを好きになって貰えると、それだけで嬉しいです。」
つまりこのアニメは、「伏線」だとか、「裏話」だとか、「考察」だとか、「矛盾」だとか細かい事は色々気になるけれど、そんな事は抜きにして、千束とたきなを好きになってもらう事を目指したアニメですと、そう仰っているように聞こえました。
もちろん、最終第13話でも解決されていない謎は沢山あって、(後でも書きますが)一部の方に不評だった事も知っています。
思いつくままに書くと、ミカはシンジを本当に○したのか?とか、心臓はどこにあったのか?とか、真島は爆破じゃなくなぜ花火だったのか?とか、#12で真島を逃したのは誰?とか、#12→#13で真島は延空木から電波塔までどうやって移動してきたの?とか、千束病院抜け出してるけど、どうやって宮古島までいったんや!お金は!?とか、めちゃくちゃ色々あるのですが、でも、そういう事は気にせず、キャラの動きを追って楽しむ方が、リコリコ向きだと仰っているように受け止めています。
そう言われてみれば、1話から13話まで見てきた中で、過去を振り返る必要って殆ど無かったですし、あの伏線ってどうだったっけ?と振り返る事もせず、1話1話を全力集中で見ていた自分がいました。
そして、すっかり監督にのせられた一人となった自分は、毎週千束千束と言いながらすっかりキャラの虜になっていましたし、放送される最新回のリコリコを、その時々の心情で心の底から楽しんでいたように思います。
一方で、この事を逆説的に見れば当然その反動はあるわけで、いわゆる「考察組」の人たちにとっては物足り無いアニメであった事も事実であり、実際に、最終話の後上がっていた不満の声も目にしています。
こう考えると、リコリコは好き嫌いがはっきりするアニメという事は言えそうです。
などと言いいつつ、ちょっと考察してみる
上で考察は無意味!なんて言っておきながら、舌の根も乾かないうちに、このパートでは最終話で重要だった点を考察しています。
そして、考察はあくまでも私見ですので、ご了承ください。
といっても、考察するのは、心臓はどこにあったのか?の1点だけです。
答えを先にかくと、人口心臓はシンジの鞄の中だと思っています。
その理由は、ミカが泣いたからです。
返り血を浴びていないとか、シンジの胸の傷が縦1本であれじゃ心臓を胸に入れられないとか、誰が手術して心臓埋め込んだのよ?とか、無粋な事はこのアニメではあまり考えなくて良い一方で、千束とたきなの物語であるという点は外せません。
そのベースに立って考えてみると、ミカがシンジの前に現れた時のセリフ
「シンジ、そいつが千束を襲った女か」
あたりから、千束への想いがあふれるシーンが連続しており、心臓のありかを示すヒントに繋がる流れを作っている事が分かります。
例えば、この台詞の後ミカは容赦なく姫蒲をぶちのめしており、千束への想いが最優先であり、千束を守り切るという強い行動が表現されていて、千束とたきなの物語という筋を通しています(姫蒲は千束への想いは無く、シンジへの忠誠心しかないですしね)。
ただ同時に、ゴム弾だったという事も忘れてはなりません。千束は人を殺めない、その心情に同期して、ミカもそれを貫き通しているのです。
そして、その後のミカのセリフも重要です。
杖がダミーだった事を明かした後、
「愛するものには特にな」
と発していますが、普通に捉えれば、ミカは千束に杖の事を秘密にしていたよと理解できる台詞に思えますが、実は、この台詞ミカ→シンジの愛も含んだ表現にもなっているのです。
だって、対姫蒲と同じ感情なら、間髪いれずシンジをぶっ倒しているはずですしね。
ミカ→シンジへのBL的な愛があるからこそ(過去そういうシーンありましたよね)、この会話シーンが生まれているのです。
続けて、ミカはシンジを諭します。
「シンジ、導いてくれるのは子どもたちなんだ」
と。
一方でシンジが夢見ているのは「シンジが作りだす千束の未来」なわけで、ここに大きな溝がある事がわかります。
そして、ミカは泣きました。
なぜならば、お互いベクトルは違えど、千束を愛する二人であったから。
なのに、分かり会えないから。
過去、シンジとミカには深い関係性があったから。
シンジから心臓を奪う事は、千束とシンジとの関係性に終止符を打つと同時に、ミカはシンジとの関係を終わらせる事になるから。
だから、ミカはその絶望的な現実に泣いたのです。
そしてこの通りであれば、ミカはシンジを○す必然性は無く、関係を終わらせる=心臓を奪うだけで良いですし、同時に、千束への想いを考えるのであれば、実弾を使って○す選択をミカは取らないと思います。
更に、たきなが千束と宮古島であった時、アランのペンダントを渡していますが、その中からはシンジの手紙が抜き取られていました。
本当にミカがシンジを○っていたとしたら、ミカは千束に一生シンジを○った事を隠し通さなければなりませんし、何かのタイミングで千束がシンジがいない事を知れば、どうなってしまうかは簡単に想像できます。
そんな未来を、ミカが望むはずはありません。
つまり、手紙を抜き取ったのは、あの内容を見せたくないという事もあるでしょうが、それ以上に、シンジは生きているという事を示唆していると考えています。
この事から、ミカはシンジを○していないとなりますし、そうなれば、鞄に心臓が入っていたと考えるのが自然という結論にたどり着く事となります。
よって冒頭に戻りますが、人工心臓は鞄の中にあったという事になるでしょう。
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あ、この部分は単に書きたいから余談として書きますが、真島vs千束戦で、肩を撃たれた千束が真島を背負投したシーン。
1番最初は、たきなが真島を実弾で撃つ事は必然だったので、誰も○したくない千束が真島を逃したのかなとも思っていました。
ですが、冷静に考えると、下に落ちても落下しか無い未来で絶望しかない事を考えると、あのシーンはシンプルに、時限装置の爆発からたきなを守ろうとし、自らの命を賭しても真島と決着をつけ、リモコンを拾いに行こうとしたんだろうなと読んでいます。眼が光ったのは千束は死を覚悟したのかな、と(最終的には花火でしたし、かつ、たきなは千束を助け、Goodな結末になり良かったです)。
リコリコは磁石だ
唐突に何いってんだですが、リコリコの人間関係は全部磁石のような関係になっているんですよね。
たきなと千束、千束と真島、ミカとシンジ、クルミとロボ汰、フキと千束などなど、強く反発したり、強くくっついたり。
今更わかってるわい!という感じではありますが、このアニメ、紛うことなきヒューマンドラマなんです。
そして、ただのヒューマンドラマでは無く、その関係性には、恋愛とは違う、それを超越した強い結びつきを生み出している「愛情」がある。
愛情、愛情、うーん、家族愛に近いというか。
更に、このアニメって、全キャラクターがニュートラルなんです。
女が男を奪い合うハーレムアニメでも無いし、ただただ○し合うガンアクションでも無い。
キャラがそれぞれの意思を持ちながら動いていて、それでいて、細かな部分は全部隠して格好良い所しか描かないので、キャラクターの「嫌な所」が見えづらく、キャラを嫌いになる事も無い。
結果として、ファンは、自分の好きな推しキャラを、好きなように推せるという形を生み出して、ファンへの入り口を広くしています。
それに加えてキャラクター同士は「愛情」で繋がっていて、とてもきれいな関係性が描かれていて、表現に汚れも無い。
これを意識せずに描いていたとしたら凄い事ですが、いずれにせよ、めちゃくちゃ考えられているなと思って見ていました。
そこに加えて超可愛い女性キャラ、渋くて格好良い男性キャラ、ロリからお姉さんまで勢ぞろい。
更に、背景の書き込み量やキャラクターの絵など、鬼のような作画クオリティまでセットになって。
この事によって、あらゆる面で「きれい」な作品になっていたと思います。
そしてこの「きれい」が、男性ファンだけではなく女性ファンにも広く刺さり、噂が噂を呼んで、どんどん人気が上がっていった作品だと思っています。
結果、キャラ推し組>>>考察組のパワーを生み出す事に成功し、最終的に、
34万フォロワーという爆発的な人気を生み出しました。
あのまどマギのフォロワー数が29.5万ですので、この数がいかに驚異的な数値かは言うまでもありません。
2期はあるのか?
凄く遠い未来にもしかしたらあるかもしれませんが、すぐに2期決定とはならないと思っています。あるとしても3年〜4年先だと思われます。
というのもこのアニメ、制作陣の予想以上に、後から売れた事が読み取れるからなのです。
その証拠に、リコリコって周辺展開が後手後手なんですよね。
一般的に2期を見据えるようなアニメであれば、円盤の1巻の段階でイベントシリアルをつけ、売上をブーストさせて資金確保に走りますが、そのイベントシリアルが付いたのはなんと3巻です。
しかも、発表されたのは9月24日になってからと、とても遅いのです。
いやいや、1巻にはリコラジの公録がという意見もありますが、これは無料ですし、あきらかに円盤ブースト用のファンサなんですよね。
という事から考えると、作品の人気に驚いて急遽リアルイベントを決め、間に合う最速タイミングでイベントをぶっこんだんだろうな、と想像できます。
ただし、このリアルイベントで集めた資金を使うには、少し準備が必要そうです。
というのも、オリアニという性格から、最初から2期を考えていないのであれば、話は1期で完結するように書いているでしょうし、制作スタッフのスケジュールや声優のスケジュール、A-1 Picturesの制作スケジュールを前もって抑えているとも考えづらく、全てを調整するには3〜4年は必要だと考えているからです。
更に、先日のAniplex Online Fest 2022で公開された通り、この先A-1 Picturesは凄まじい量のアニメ制作を抱えている事からも、すぐにリコリコにパワーを割くというのも厳しい事も伺えます。
そして、実は本音をいってしまうと、2期は無いかもと思っていたりもします。
というのも、言うまでもなくDAは日本の公安組織なので、ハワイという土地に馴染まず、この点をどうやってクリアするかのハードルって、かなり高いと考えているからです。
例えばハワイでやるならば、全く新しい設定や舞台を千束とたきなに与えねばならず、DAという組織の枠を捨て、別アニメを作る位の大改革が必要です。
そして、ベースとなる世界観を大きく変えるとなると、当然、大失敗の可能性もあるわけで、失敗してしまうと、1期のアニメの質に傷をつける可能性が出てきます。
下世話な事でいえば、再放送や、人気の乗じた今後のプロモに影響がでる可能性があります。
じゃあ、日本に戻ってまた同じ事をする?というのも新鮮味が無いですし、日本に戻る前提ならば、1期のラストをわざわざハワイで終わらせるのも不自然です。
だってハワイって日本人にとって、バカンスの聖地で楽園なわけですよね。
そんな象徴の場所にいる千束とたきなをまた日本に引き戻すのって、シナリオ上、また?的な感情が生まれてしまい、相当難しい気がします。
という事から考えて、このアニメの場合、2期というよりも、1期で描かれなかった別の部分を切り出した、OVAや、短編集のような感じが向いている気がします。
たきなのDA時代でも良いし、千束の心臓が元気だった頃の話でも良いし、ミカとシンジの話でも良いし、1期で明かされなかった謎解きをやるのではなく、このアニメのポリシーである人間にフォーカスした内容の範囲で、見どころのある短編はいくらでも作れるでしょうし、その方がこの作品の続きに馴染んでいるのかなと感じています。
また、ダンまちとソードオラトリアや、魔法科高校の劣等生と魔法科高校の優等生のように、裏表の形で書くのも面白いかもしれないですね。
いずれにしても、ここまでヒットした作品なので何かしらの展開はあると思いますが、どんな発表があるのかとても楽しみにしています。
※2022年9月30日追記
円盤第1巻の売上が2.3万枚と、ここ最近では驚異的な売上だった事で(あの呪術廻戦ですら1巻は1万程度です)、後半にいくにつれ円盤売上は下がっていく事が予想されるとは言え、6巻トータルで5〜6万枚の売りげは達成しそうな勢いである事(この数は歴代ベスト20に入る売上です)、及び、
ハワイから帰ってきて、喫茶リコリコ(つまり日本での喫茶店営業)を続けるとのツイッター告知があった事から、2期の可能性が急激に高まったため、追記させて頂きました。
どうやら2期がある場合の舞台は日本確定のようで、サラッと帰ってきてしまいましたね。上に書いた私の予想の1つは既に外れてしまったようです。
なのですが、私個人の予想としては2期はあってもかなり先、もしくは、2期は無いかも?という予想は変えません。ここをブラしてしまうと、これまで書いた内容はなんだったんだ!となってしまいますので。
ですが、外観的に2期の可能性が高まり、その舞台は日本であるという事は間違いなさそうだという印象は受けています。
最後に
以上、自分なりにこの作品の楽しみ方や、ヒットした理由、今後の展開予想を書いてみました。
ここまで書いたとおり、細かな所を省いている分、見る人によって受け止め方が何通りもあるアニメだと思います。
なので、ここまで書いた事を読んで頂き、全く違う感想を持たれる方もおられると想像します。
ですが、それも含めてリコリコだと思いますし、だからこそここまで素敵な作品になったんだなと、改めて感じています。
そんな、沢山の顔を持つリコリコに出会えた事に、改めて感謝です。