アタック25 最後の挑戦その3

こんにちは。訪れてくださり、ありがとうございます。
前回の続きです。それでは早速、どうぞ!


9月3日、『くりぃむナンタラ』のドッキリ企画(詳しくは前回の記事参照)収録直前。朝日放送から「東日本代表6人」に選ばれたという電話が入った。
これはエラいことになった…と思いつつも、そのテンションのまま『ミラクル9』チームが出すクイズ問題を真剣に解いた。本当に楽しい収録だった。余談だが、カズレーザーさんに「クイズ界のさんまさん」(笑)とまで言っていただけた(実は当日はアクリル板もあって聞こえず、オンエアで初めて知りました。カズレーザーさん、大袈裟な例えだとしても嬉しかったです。ありがとうございました!)

無事に、ミラクル9のようなドッキリ企画の収録も終わり、僕はそのままテレビ朝日に残って、誰もいないロビーでこっそりと電話をかけ『アタック25』プロデューサーさんの説明の続きを聞いた。今回は東日本6人、西日本6人の計12人がファイナリストであること、各ブロックから2人ずつが勝ち抜けて、4人だけが最後の「赤」「緑」「白」「青」の席に座れること。
勝ち抜けるためには、早押しクイズで4ポイントを取らなければならない。2回間違うと失格・退場となってしまう。
(その他にも、ご時世柄、毎日の検温があったり、PCR検査を受けたり、当日の体温によっては収録に参加不可能であったりなど、健康面での留意点もかなり細かく存在した)
僕の他に誰がファイナリストなのかは知らなかったが、相手が誰であろうとも、クイズの猛者であるのに変わりはない(そもそも全員『アタック』優勝者なのだ)。そして、この最初の4ポイント先取の早押しクイズ(以下「最終予選」と記す)こそが、この戦いの山場だと思った。

かつて『アタック25』には全国で予選が行われた「20周年チャンピオン大会」「30周年チャンピオン大会」が大規模に行われたが、今回の最終回も基本的には同じ形式だ。しかし、昔はどちらの大会も3ポイントで勝ち抜けだった。今回は「4ポイント」で勝ち抜けだ。わずか1ポイントだが、この差は大きい。僕はあまり20周年・30周年のビデオを必要以上に観ないようにした(例外はお二人だけ。序盤に❌を付けて勝ち抜けたクイズ女王・石野まゆみさんと、クイズ王・安藤正信さんの戦いぶりは、当時のお二人のメンタルを推測しながら、何度も拝見した)。

今回は、1時間番組とのこと。いやらしい邪推だが、番組の「尺」を考えた(笑)。おそらく、逆算していけば、後半30分が最終決戦のパネルクイズ、そしてオープニングでは番組振り返りシーンや、(M-1グランプリのような)予選シーンも流れるであろう。残るは東日本・西日本の最終予選、しかも4ポイント勝ち抜け。おそらく、かなり尺的に余裕がないはずだ。番組的にもあまりダイジェストにはしたくないだろう。ということは、問題文はかなり短くストレート、時たまカーブ。例えば番組開始当初の話題が前フリに来つつも、問題の本題はかなり短いはず。つまりはかなりの早押し勝負になるであろう。おそらく、指が早い人が勝つ(実際、収録当日の朝、同じ東日本代表だと知った若い倉門くんと大美賀くんの二人をマークすべきだ!と思ったのも事実である)。とはいえ、ベタ問題であろうが時事問題であろうが、「自分が取れる問題」を4つ取ればよい。それだけだ。

(実際は、上に書いた想像は全くの見当違いだった。問題文は長いし、様々な角度から球が飛んでくるし、いろんな方向に変化しまくる(笑)。とても面白い問題群だった。ただそれでもダイジェストは一切なかった。番組のスタッフさんの手腕に大拍手である)

もうひとつ僕は大きな見当違い、というか大マヌケなミスをしていた。僕は、割と直前まで、てっきり最終予選は東西合計12人の一斉早押しから上位4人が勝ち抜けだと思っていたのだ。スタッフさんからのルール詳細をノートで丁寧に点検していた日曜日(本番5日前!)、ノートに書かれている「東日本6人・西日本6人の12人が参加(中略)各2人ずつ決勝」の「各2人ずつ」の意味を咀嚼していたとき、僕はひっくり返った。よく「木を見て森を見ず」というが、僕は森ばかり見ていて木を見ていなかったのだ。前者のルールだと少なくとも16問は聞けるので僕は割と安心していたが、現実は後者だ。たった8問で終わる可能性もある(クイズ経験者の皆さんは分かると思いますが、問題をたくさん聞けるほうがなぜか安心してしまうのです)。
よくよく考えると、おそらくコロナ禍に対応したルールなのだから当たり前といえば当たり前なのだが、気付いたときは目の前が暗転したような気がした。クイズ形式に関する恐怖感は増したが、とにかく「いま気が付いて良かった!」とプラス思考で乗り切るようにした。

僕は上に書いたように、あることないこと考え、そこにはいろいろと見当違いな部分も多かったが、おそらくこの行為自体は間違いではなかった。事前にあらゆる分析・予想・想像・夢想をしまくったのはとても良かった。クイズ問題の読み込みだけでなく、本番当日に自分が置かれる環境のアレコレに想いを巡らせてみると(10パターンほど今回は考えた)、本番がどのような展開になっても、さほど動揺することはない。

当日の自分が緊張の極限にいるのは、僕が人間である以上、避けられない部分だ。だからこそ、本番で想定できるエマージェンシーを少しだけでも跳ね除けるために、あらゆるシミュレーションを脳内で重ねたことは、本番でも役に立ったように思う。「自分が最初にリーチをかけた場合」、それもバツがある場合と、ノーミスの場合に分ける。これは最高の展開だ。そして「僕が0ポイントで残り全員がリーチになった場合」。これは最悪の展開だ。想像すると変な鳥肌が立つが、一応シミュレーションはした。流れさえ掴めば、逆転があるのがこの番組だ(逆もまた真なりであるが(笑))

とにかく、「序盤でムダな❌をつけないことが大事だ」という至極当たり前の結論を、頭に焼き付けた。そしてそれは本番の4問目でモロくも崩れ落ちるのことになる。それはまた次回に。

クイズの先輩方が教えてくださった、様々なスポーツ選手のインタビュー記事があるが、それを読み漁っていたのも、この「残り1週間」のことだ。とにかく「追い込まれた場合、どのようにメンタルマネジメントをセルフで行うか」。その一点に絞った。

前回の記事で書いた【②クイズに直接には関わらないこと】の一番大きなことは、コレであった。クイズの本を読むことはもちろん、「勝負」にまつわるクイズ以外の本を読むこと。

そして、もう一つの大きな対策は、収録当日は、「応援される自分」になることだった。大袈裟に言えば「愛される自分」と言い換えてもいいかもしれない。例えそうでなくても、そう思い込むこと。MCの谷原章介さんにも、問題を読まれる加藤明子さんにも、制作スタッフ・美術スタッフの皆さんにも、カメラさんにも、そして視聴者の皆さんにも。そう思い込むことは、本番で背中から追い風が吹いているかのごとく、ものすごいパワーを頂ける。さらに今回は46年間の最終回の大舞台である。収録ではあるが、一種のセレモニーなのだ。
そのために当日の「衣装」をどうするか悩んだが、妙案が浮かんだ。ちょうど9月5日に、なんと素人の僕にもスタイリストさんが付くという素晴らしい番組(笑)のロケがあったのだが(『インテリ芸能人と旅をしたら、想像以上にウザかった』というタイトル。タイトル!!(笑)でも風間俊介さんやロザン宇治原さん、カズレーザーさん、矢野了平とのやり取りは本当に楽しかった)、その番組のスタイリストさんにお願いした。数パターン、なんと僕の自宅まですぐに来てくださって、見える部分から見えない部分まで、トータルコーディネートをしてくださった。

これは当日、とても効果があった。周りのファイナリストの方々にも(着替えの時間までは、僕はいつもの黒シャツとジーパンだった)「おおおっ!気合い入っていますね!」と驚いていただけたし、何よりも自分がポジティブなオーラに包まれているような、不思議な自信を身に纏ってクイズに臨むことができた。

「本番まで○日」。この○に入る数字が少なくなるにつれて、特に夜中などは逃げ出したくなるくらい怖かった。もちろんワクワク楽しみでもあったが、とにかく不安で仕方がなかった。
Twitterでツイートするわけにもいかず、あの頃の「キャンセル→下書き保存」にはたくさんの感情が残っているが、本当に恐怖の数日間だった記憶がある。

いよいよ残り1日。僕は、それでも自信の衣装と、一応現役時代くらいにはクイズの勘を取り戻した脳と指を持参して、大阪へ向かった。次回はいよいよ大阪篇!待ち受けていたのは「恐怖のリハーサル」、そしていよいよ始まる最終予選。お楽しみに!

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日高大介
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