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敗訴すべくして敗訴した有田芳生元参議院議員

伊藤詩織さんが山口敬之さんを提訴した「ブラック・ボックス」裁判の尋問で語られたこと

 まず、最初に述べておきたいのですが、山口敬之元TBSワシントン支局長は、就職面接に来た者を「食ってしまった」クソ野郎であるということで私の認識は一貫しています。その上で、伊藤詩織さんが山口敬之さんを提訴した「ブラック・ボックス」民事裁判の尋問について触れていきます。
 「ブラック・ボックス」民事裁判の尋問で、原告の伊藤詩織さんがデート・レイプ・ドラッグによるレイプであると判断した根拠について、答える場面がありました。そこで、伊藤詩織さんは、山口敬之さんとの性交があった日の二軒目の寿司屋のトイレでいきなり意識を失ったことを看護婦の友人に話したそうです。その友人は「それは、デート・レイプ・ドラッグという相手の意識を失わせてレイプに及ぶドラッグを用いている可能性がある」と答え、それがデート・レイプ・ドラッグによるレイプであると判断した根拠であると伊藤詩織さんは答えました。
 それに対して、山口敬之さん側は、山口敬之さん、被告訴訟代理人が二軒目の寿司屋の店主と一緒に撮った画像(これは傍聴席から見えました。)を示しながら反論しました。おそらく、寿司屋の店主に伊藤詩織さんのその日の様子を聴き取って反論したものと思われます。
 この経緯を聴いた私の感想は「危ないな」というものでした。山口敬之さんとの性交が伊藤詩織さんの意に反するものであるということまでは立証できるとしても、デート・レイプ・ドラッグによるレイプであるということの立証として、伊藤詩織さんの側の証拠があまりにも弱いと感じたからです。ドラッグによりレイプされたという伊藤詩織さんに対する山口敬之さんの反訴は、第一審では認められなかったものの、控訴審では伊藤詩織さんに55万円の金員を支払うことを命ずる判決が言い渡されることとなったのです。

類似の判例

 類似の事例として、著述家の菅野完さんの性的暴行に関する民事訴訟があります。

『日本会議の研究』の著者・菅野完氏が2012年に起こした性的「暴行」事件についての裁判が7月4日、東京地裁で結審した。

裁判は、被害女性が15年末に200万円の損害賠償を求め起こした民事訴訟。結審に当たり菅野氏側が提出した書面には、事件を報じた小誌の記事が流布されたことで相当の社会的制裁を受けたなどとして、「本件で認定されるべき損害額は、5万円を超えることはない」と、被害を軽視する見解が記されていた。自らの性的「暴行」についての言及はなかった。

裁判資料によると、菅野氏は事件当日、女性の家に初対面であるにもかかわらず上がり込み、パソコン作業の後、突然女性に抱きつき、のしかかった。押し倒された恐怖で悲鳴を上げた女性の頬に菅野氏は顔を押しつけてキスをし(菅野氏側はキスしていないとの見解)、「抱っこして」と要求した。女性が菅野氏を抱きかかえ背中に数回両手を当てると体を離したが、その後も性的欲望を伝えてきた(詳細は小誌16年7月15日号)。

女性の行動は、〈力づくで犯されるのではないかという極度の恐怖〉によるものだが、菅野氏側は自らの行為について、〈一般的に、他人に対して性的行為を求めるとき、言語的説得によるのではなく、相手方の身体に接触することにより自らの性的行為をしたい意思を相手方に伝達する〉と、暴力的な“一般論”を展開している。

女性は結審当日の意見陳述で、「今も知らない男性と2人きりになったり、被告(菅野氏)に似た人を見かけると、体が硬直し、冷や汗をかき、呼吸が苦しくなります。私にとって、この被害は過去のことではなく、現在進行形です」と訴えた。被害を軽視するような言論があることに対しては、「被害者の口を封じることに繋がり、加害者を利することになる」と強調。ジャーナリスト・山口敬之氏からの準強かん被害を訴えた詩織さんと同様に、「黙らされている誰かに」勇気を与えられると信じて裁判を闘ったと述べた。

一方の菅野氏は、裁判に一度も出ず、書面の中で「反省」の意は示す一方、自らの加害を「比較的軽微」と主張してきた。結審の書面では、今年3月の和解協議が決裂した責任は女性にあるとの姿勢に転じた。判決は8月8日となる。

(本誌取材班、7月14日号)

『日本会議の研究』菅野完氏の性的「暴行」事件訴訟が結審、被害軽視の姿勢(週刊金曜日オンライン)

 この菅野完さんに対して、NHKから国民を守る党の党首である立花孝志さんが菅野完さんが「レイプ」をなしたかのようなツイートをなして、菅野完さんが立花孝志さんに損害賠償とツイートの削除を求めて民事訴訟を提起した事件があります。この事件で菅野完さんは初対面の女性に抱きついてのしかかり、キスをして(この部分は女性と菅野完さんとの間に争いがあります)「抱っこして」と要求はしましたが、レイプはなしていません。
 この菅野完さんの判例と同様に、山口敬之さんは採用権限を有していた立場にありながら就職希望者の女性を「食ってしまった」クソ野郎ではありますが、ドラッグを用いて女性の反抗を不能にすることも、反抗を著しく困難にすることも民事裁判において立証はなされていません。
 菅野完さんが女性の意思お構いなしに事に及ぼうとしたことと「レイプ=刑法において強制性交罪の要件を満たす行為」との間に大きな差異があるゆえに立花孝志さんへの損害賠償などが認められたのと同様に、山口敬之さんが伊藤詩織さんの同意を得ていない性交に及んだこととドラッグを用いたレイプとの間に大きな差異があることで伊藤詩織さんに山口敬之さんへの賠償が命ぜられたわけです。

ジャーナリストを自称する有田芳生元参議院議員の取材しない姿勢が招いた必然の敗訴

 有田芳生元参議院議員のツイッターアカウントのプロフィールページには次のようにあります。

メルマガ 有田芳生の「酔醒漫録」mag2.com/m/0001696592 弘兼憲史さん、安西水丸さんなど、アイコンは適宜変わります。いまは弘兼さんです。「つぶやき」は神羅万象。何でも書きます。他者罵倒の礼儀知らずやあてこすり匿名常習者は勝手に拒否します。「最後の晩餐」はミラノで撮影しました。
ジャーナリスト 東京都練馬区…

@aritayoshifu

 有田芳生元参議院議員はまがいなりにも「ジャーナリスト」を自称するのであれば、伊藤詩織さんに取材してなぜ「レイプ」であると認識したのかを聴き取れば、私が尋問で感じたとおりの認識に至るはずです。
 しかしながら、有田芳生元参議院議員は、伊藤詩織さんに取材することもなく、山口敬之さんから提訴された時点においても自らが山口敬之さんに対してどのようなツイートをなしたかすら確認していないのです。

山口敬之氏を「レイプ犯」などと表現した覚えはないが、「鬼畜の所業」と書いた覚えはある。事実に基づく評価だから仕方がない。

@aritayoshifu

伊藤詩織『Black Box』。山口敬之元TBS記者にレイプされた女性の闘いの記録だ。選挙応援の移動中に読もうと書店にいくもまだ並んでいなかったので、文藝春秋に行って入手、読みはじめました。事件の詳細が明らかにされているのは「真実はここにある」からです。世論を高めましょう。

@aritayoshifu

 自らがなしたツイートすら確認せずに適当なツイートを繰り返し、ジャーナリストを名乗りながら伊藤詩織さんに取材すらせずに立証されていない事実を述べて名誉毀損で敗訴するという有田芳生元参議院議員の姿勢を考えれば、今回の民事訴訟の敗訴は予想されたものであると考えた方がよさそうです。