朝木直子東村山市議会議員の議席譲渡を否定した最高裁判所の判決 ~宇留嶋瑞郎著「民主主義汚染 東村山市議転落と日本の暗黒」を読む 1~
民法を学ぶ学生が最初期に学ぶ判例と東村山問題
近年の司法試験受験生が読む基本書に内田貴先生の「民法Ⅰ」「民法Ⅱ」「民法Ⅲ」があります。この基本書は、民法の条文の順番に学ぶのではなく、「民法Ⅰ」で民法総則、物件総論の順に、「民法Ⅱ」で債権総論を、「民法Ⅲ」で債権総論、担保物権の順に学ぶというのが特長となっています。ただ、私が民法を学んでいるときに流行っていた有斐閣双書は民法総則、物権総論、担保物権、債権総論、債権各論という民法の条文の順に学ぶ基本書でしたし、現在でも民法の条文順に学ぶ講義はかなり広く行われているものと思います。
条文順に民法を学ぶ学生がおそらく最初期に学ぶ最高裁判所の判例に生活の本拠が住所であるという平成9年8月25日最高裁判所第二小法廷判決があります。この判決が東村山問題を考えるうえで非常に重要な判決であることを知ったときに大いに驚いたのを覚えています。
この最高裁判所第二小法廷の判決は、次点で落選した矢野穂積さんを当選させるために朝木直子さんがなした議席譲渡を完全に否定するものでした。
平成7年4月26日執行の東村山市議会選挙に、朝木明代東村山市議会議員(当時)ら政治グループ「草の根」は、所属議員を増やすため、朝木明代さんに加えて、朝木明代さんの娘の朝木直子さん、政治グループ「草の根」の実務を取り仕切っていた矢野穂積さんを立候補させました。選挙結果は、朝木明代さんが2期連続のトップ当選、朝木直子さんが4位当選、矢野穂積さんは落選したものの次点と政治グループ「草の根」の選挙戦略は成功したように思われました。しかしながら、政治グループ「草の根」はそうは考えていませんでした。政治グループ「草の根」のブームとなったこの選挙で落選した矢野穂積さんは前述の二人と比べると知名度や有権者の支持が著しく劣っており、政治グループ「草の根」は、この選挙で当選しなければ矢野穂積さんが東村山市政に関わることは難しいと考えていたのです。そこで編み出した奇策が議席の譲渡でした。そして、その奇策は東村山市だけでなく、草の根市民クラブそのものを不幸に突き落とすことになってしまうのです。