政治献金に関する二つの最高裁判所判決
政治献金については、二つの重要な最高裁判所判決があります。それは、八幡製鉄政治献金事件と南九州税理士会政治献金事件です。この二つはいずれも法人が定めた目的の中に政治献金が含まれるかどうかについて最高裁判所が判断したもので、法律学を学ぶ学生にとって常識ともいえる判例でもあります。しかしながら、東京新聞のようにまともに判決を読むことができない方もいらっしゃるようです。
東京新聞のトンデモ判例解釈
東京新聞は、八幡製鉄政治献金事件が南九州税理士会政治献金事件よりかなり前の判決であることから南九州税理士会政治献金事件で判例変更がなされたと解釈していますが、このような解釈をなすとおそらく法学部の大学生にまで指差して笑われるでしょう。
八幡製鉄政治献金事件と南九州税理士会政治献金事件で判断が分かれた理由は、八幡製鉄政治献金事件が現在の会社法にあたる旧商法に基づいて設立された株式会社であるのに対し、南九州税理士会が熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県の税理士や税理士法人が加入しなければ税理士や税理士法人として税理士の独占業務を業として行うことができない強制加入の法人であることで、強制加入の法人が政治献金をなすことは法人の目的を逸脱していると判断されたもので、八幡製鉄政治献金事件の判例が変更されたと考えることができないというのが通説です。
しかしながら、新聞社はこのような記事で大学教授などに識者としてコメントを求めるのが通常なのに、東京新聞はわざわざ片木淳弁護士という弁護士、それもかなり偏った市民運動に携わっている弁護士を識者としてコメントを得ているのです。おそらく、数多くの識者に頼んで意に沿うコメントをもらうことができる識者として片木淳弁護士が選ばれたものと推察します。