羽賀研二容疑者らが強制執行妨害容疑で逮捕
元タレントの羽賀研二容疑者らが強制執行妨害容疑で逮捕されました。画像は「笑っていいとも」で検索してヒットした画像をお借りしています。
この時間において、司法書士連合会の副会長の野崎史生容疑者が逮捕されていることに着目している人が多い訳ですが、本当に着目すべきは六代目山口組三代目弘道会十代目稲葉地一家総長の松山猛こと松山猛善容疑者がともに逮捕されていることです。
暴力団組織で十代目まで代替わりをしている組織ということで、芝居などで有名な国定忠治を祖に持つ八代目上州国定一家や清水次郎長を祖に持つ六代目清水一家よりはるかに長い期間継続している暴力団組織であり、三次組織ではあるものの、極めて「名門」であるとも言えます。
山口組分裂抗争で若中が殺人事件を起こしていた稲葉地一家
この稲葉地一家は、若中である吉井誠容疑者が山口組分裂抗争で対立する池田組志龍会幹事長の上津曲哲也さんを殺害した容疑で逮捕されています。しかも、その手口は宅配配達員を装って荷物を受け取りに来た上津曲哲也さんを銃撃するという計画的な犯行でした。
暴力団の抗争においては、警察は実行犯と組織のトップの共犯を立証するために微罪逮捕を繰り返す傾向にあります。吉井誠容疑者が「カエシ」のきっかけとして行った疑いが非常に強いと思われる三代目弘道会直参の「ラーメン組長」こと湊興業組長湊学さん殺害事件においても、実行犯の金澤茂樹こと金成行容疑者の逮捕後に組織のトップであった絆會会長の織田絆誠こと金禎紀さん、絆會と連携していた池田組の池田孝志こと金孝志さんが揃って逮捕されたことも記憶に残りますが、稲葉地一家の若中が池田組の直参である志龍会の幹部を殺害しているわけですから、稲葉地一家の総長の逮捕は警察の既定路線であった可能性が非常に高いといえます。1年以上前の事件がこの時期に強制捜査に入って関係者の逮捕という結果となっているのもこの推論を裏付けていると言えるかもしれません。
紀藤正樹弁護士の認識や発言は正しいのか
この事件に関してリンク法律事務所の紀藤正樹弁護士が次のように述べています。
このポストは日刊スポーツなどでも取り上げられました。
ただ、この事件を考えるうえで弁護士であるならば当然頭の中に入れておかなければならない法律の条文について、紀藤正樹弁護士は触れていません。司法書士法第21条です。
第21条 司法書士は、正当な事由がある場合でなければ依頼(簡裁訴訟代理等関係業務に関するものを除く。)を拒むことができない。
弁護士の独占業務である地方裁判所以上の訴訟代理関係業務や司法書士が業務としてなすことが認められている簡易裁判所の訴訟代理関係業務とは異なり、不動産登記の申請代理業務の依頼を断ることは、正当な事由がある場合を除き、懲戒事由となります。きちんとした添付書面が準備され、登記申請のための書類等の確認である立会いにおいて、きちんと金銭の授受がなされていたのならば、司法書士は申請をなす以外の選択肢はなくなります。
そして、強制執行妨害目的財産損壊罪について刑法第96条の2は次のように規定しています。
第96条の2 強制執行を妨害する目的で、次の各号のいずれかに該当する行為をした者は、3年以下の懲役若しくは250万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。情を知って、第3号に規定する譲渡又は権利の設定の相手方となった者も、同様とする。
一 強制執行を受け、若しくは受けるべき財産を隠匿し、損壊し、若しくはその譲渡を仮装し、又は債務の負担を仮装する行為
二 強制執行を受け、又は受けるべき財産について、その現状を改変して、価格を減損し、又は強制執行の費用を増大させる行為
三 金銭執行を受けるべき財産について、無償その他の不利益な条件で、譲渡をし、又は権利の設定をする行為
例えば、羽賀研二容疑者が個人の不動産を適正な価額で羽賀研二容疑者の経営する会社に売却して、不動産の名義を会社名義にした場合は、不動産に代わって金銭が強制執行を受け、又は受けるべき財産ということになりますが、金銭は費消しやすいものであると考えられていますし、預金通帳などに入金されていなければ、金銭は不動産と比較して債権者の目が行き届きにくい財産であるとも言えます。
適正な価額でなされた不動産の売買について登記を申請したことで、野崎史生容疑者が逮捕されたという可能性が残る以上、暴力団員に対する微罪逮捕がなされ得る状況も併せて考えると、紀藤正樹弁護士のような軽々な物言いはできないのではないでしょうか。