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参遊亭遊助さんのこと
東洋経済オンラインで紹介された「プロの落語家」参遊亭遊助さん
東洋経済オンラインで紹介された三遊亭遊助さんを取り上げた記事が物議をかもしています。
帰国後も活動を続けたいと思っていたが、「演劇は仕事で稽古に参加できないと他の団員に迷惑がかかる。落語なら1人でできる」と、57歳で三遊亭遊三師匠の落語教室に入会。定年後、65歳まで会社に残る道もあったが、落語に専念しようと会社を辞めた。
妻は収入面以上に退職して時間を持て余すことを心配していたが、落語に打ち込むならと理解してくれたという。趣味にとどめず、仕事にしたのは、「仕事としてお金をいただく以上は責任が伴う。お客様に価値を提供するために、本気で稽古することで技を磨きたかったから」だ。
私が首を傾げたのはこの部分でした。社会人セミナーなどで落語教室が行われることがありますが、それは話し方を学びたいという方やせいぜい天狗連として人前で落語を披露したいという方に対するもので、プロとして落語を学ぶというものではありません。落語教室に通った生徒が「入門」などとプロフィールで紹介してプロの落語家と名乗るのをご覧になったとすれば講師の三遊亭遊三師匠はどのようなお気持ちになるのでしょうか。
また、芸能人の方が落語を披露することがよくありますが、この場合でも一つの噺をきちんと師匠について学んで承諾を得たうえで高座にあがります。これは人様に披露する落語のクオリティを一定のレベルまで引き上げようという観客に対する責任を果たそうとしているものであると思います。
そして、目黒のさんま新作落語コンテストの決勝進出作品としてご本人が紹介している「メグレのさんま」の動画がこちらです。果たして参遊亭遊助さんの落語は芸能人が余技として披露する落語のレベルに達していると思いますか。
この新作落語を拝見しましたが、千両みかん、反対俥、芝浜、目黒のさんまなどの要素を混ぜていて、天狗連の方が頑張った作品という印象を持ちましたが、プロとして最も大切なオリジナリティを感じませんでした。コンテストでも最優秀作品となることはなかったそうですから、落語協会の新作落語台本・脚本募集などでは引っかからない作品でしょう。何より私は全部聴きましたがまったく面白くありませんでした。寄席の開口一番に登場する前座さんと参遊亭遊助さんを比較するのは前者に失礼だと思いますが、前座さんの方が面白いと思います。