松本人志さんが訴えを取り下げ
漫才師の松本人志さんが名誉毀損による不法行為を請求原因として株式会社文藝春秋に対して提起した民事訴訟が取り下げられました。報道内容から考えると裁判外で和解が成立したものと思われます。
松本人志さんと株式会社文藝春秋の民事訴訟(令和6年(ワ)1353号)については、東京地方裁判所で裁判記録の閲覧に何度か挑みましたが、記録閲覧の請求が殺到している状況であるとの返事をいただき現在も閲覧ができていません。なお、東京地方裁判所民事第12部に確認したところ、閲覧は予約制となっており請求したとしても相当待たされるという回答でした。
東国原英夫元宮崎県知事の本質をついていないポスト
この報道に対して、東国原英夫元宮崎県知事が的外れなコメントをご自身のYouTubeで公開されているようです。
名誉毀損を理由とする不法行為を請求原因とする民事訴訟においては、真実性又は真実相当性が認められれば名誉毀損をなしたとされる被告側の違法性は認められません。つまり、株式会社文藝春秋は真実性など立証しなくとも真実であると信じたことに客観的な相当性があることである真実相当性を立証すればよいわけです。そして、裁判所も判断しやすい真実相当性が認められれば真実性の判断をすることなく被告勝訴の判決文を起案します。
東国原英夫元宮崎県知事は、知事時代に「宮崎県知事 東国原英夫」を名義とする行政訴訟を数多く提起し提起されたはずですが、そのような貴重な経験から何も学ぶことがなかったのでしょうか。
取材不足さんの迷走
石丸伸二元安芸高田市長に関して取材をされている取材不足さんとおっしゃる方がいらっしゃいます。石丸伸二元安芸高田市長の民事訴訟などについて詳しく取材されており、参考にすることも多かったのですが、松本人志さんの民事訴訟では迷走しています。
この取材不足さんの削除したポストには、松本人志さんが週刊文春の記事の真実性や真実相当性の立証を崩すのは容易であるにもかかわらず、取り下げたことは株式会社文藝春秋の物証の前に敗訴を覚悟したからであるかのような内容が記載されていましたが、これには疑問が残ります。
民事訴訟においては、原告の請求が認容された場合に被告に対して強制的に金員の支払いや謝罪広告などが命ぜられることになるため、原告が構造的に不利となっています。その大前提を無視した主張が信用されないのは当然のことであると思います。
そして、松本人志さんと株式会社文藝春秋の構造的な有利不利というのはそれだけではありません。松本人志さんは生活の糧である仕事を犠牲にして民事訴訟に臨まなければならないのに対し、株式会社文藝春秋にとっては民事訴訟を続けることで裁判レポートなど週刊文春に記載することのできるネタが得られるメリットも大きい業務であるという点です。そして、名誉毀損を理由とする民事訴訟の相場を考えれば1000万円以上の慰謝料が認められることはまれで、記事に関する民事訴訟など株式会社文藝春秋にとっては痛くもかゆくもないものでもあります。松本人志さんと株式会社文藝春秋の民事訴訟を考えるうえでこの原告と被告の非対称性を頭の中に入れておかないと結論がおかしくなると私は思います。