文書通信交通滞在費の寄付というほとんど誰も幸せにしない悪手
日本維新の会の小野泰輔衆議院議員が問題提起した新人、元職の衆議院議員に対する10月分の文書通信交通滞在費の満額支給問題
比例代表東京ブロックで当選した日本維新の会所属の小野泰輔衆議院議員が10月31日施行の衆議院議員総選挙で新たに衆議院議員となった者に対しても1か月分の文書通信交通滞在費が満額支給されるのはおかしいと問題提起しました。
特別国会が終わりました。初日に新人議員には現金で歳費と文書通信交通滞在費が支払われました。
文書通信交通滞在費の額がどうにもおかしいのです。10月31日に当選したということで、歳費(いわゆる給料)は日割り計算(約3万円)となっているのですが、文書通信交通滞在費は満額の100万円が支払われました。
これはおかしいのではないか、と衆議院事務局に確認したところ、今の法律では1日でも任期がかかっていると満額が出る仕組みになっており、日割りにはなっていないとのこと。しかし、これは世間の常識からしたらおかしいことです。
先輩議員に訪ねてみると、そんなことになっているのか、という反応。連続当選している人は銀行口座に振り込まれていますし、解散までの間は仕事をしていたのである程度勤務の実態はあるのでしょう(しかし、それでも半月以上仕事はしておりませんが)から、あまりおかしいとは感じないのかもしれません。しかし、フレッシュな新人にとっては違和感を感じる制度です。
この問題提起に伴い、日本維新の会は新人及び元職で今回の衆議院議員総選挙に当選した党所属の衆議院議員の文書通信交通滞在費を寄付することを決めました。
日本維新の会の動きに追従する形で文書通信交通滞在費の日割り計算での支給に向けた法改正へと動き出し、各党が新人、元職で当選した衆議院議員の10月分の文書通信交通滞在費の寄付へと舵をとることになりました。
文書通信交通滞在費の支給方法等について議論を重ねてよりよい形にしようとすること自体に私も異論はありません。しかしながら、新人、元職で当選した衆議院議員に支給された10月分の文書通信交通滞在費を寄付するという手法には大いに疑問を感じます。
似たような手法をとっていた東村山市議会会派草の根市民クラブ
この動きを見て思い出すのは、東村山市議会における議員報酬引上げに反発して引上げ分の報酬相当額を供託した矢野穂積元東村山市議会議員、朝木直子東村山市議会議員という草の根市民クラブ所属議員の行動です。供託された議員報酬の一部は、消滅時効の成立により、東村山市に戻ることはなく国庫に算入されることとなりました。つまり、その目的が何であったとしても、彼らの行動は東村山市の予算の一部を国庫に編入させるという効果以上のものではなかったのです。
母である、朝木明代議員の時代から、矢野穂積議員と共に、議員報酬の「お手盛り値上げ」分と期末手当の2割増分は返上(供託)を続けてきました。期末手当の二割増は理事者と部長、議員のみ適用される制度で、私たち草の根市民クラブだけが批判を続けてきました。そして、その成果でこの二割増の制度は廃止されました。多摩26市では東村山市だけです。現在は、職員の期末手当減額分に合わせて期末手当の返上を続けています。
東村山市議会会派草の根市民クラブの供託以下の文書通信交通滞在費の寄付という悪手
このような東村山市議会草の根市民クラブの供託ですが、国庫に編入される以上、その使途には国会や会計検査院などの監視や検査が伴いますし、それらが法律上及ばないとしても、国民の関心が非常に高い国の公金であるという側面は変わりません。しかしながら、文書通信交通滞在費の寄付という手段は、寄付相手方によってはその使途について国民の関心すら高くないという団体であるというおそれすらあるわけです。
また、文書通信交通滞在費は、国会法第38条の規定に基づき、「公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等」という用途のために国会議員などに支給されるものですが、その文書通信交通滞在費を福祉団体等への寄付に用いるというのは、文書通信交通滞在費を目的外に流用したということでもあります。
国会法第38条 議員は、公の書類を発送し及び公の性質を有する通信をなす等のため、別に定めるところにより手当を受ける。
東村山市議会会派草の根市民クラブが供託したのは議員報酬であり、その使途に何ら制限がある趣旨のものではありません。それに対して、文書通信交通滞在費は、国会法第38条に基づき、公の文書を発送し公の性質を有する通信をなす等のために国会議員に支給された手当です。領収書等の提出や報告が求められていないからといって目的外に用いることは許されないものであるはずです。したがって文書通信交通滞在費を福祉団体等に寄付するとした各党の判断には大いに疑問を感じます。しかも、政治家は選挙区内の人に寄付を行うことができませんから、その手法を行う限り文書通信交通滞在費は国会議員にとってなにより大切な選挙区内の有権者に還元されることはないのです。
傾聴すべき小倉秀夫弁護士がかつて主張した「愛国者による収入印紙購入運動」
小倉秀夫弁護士は、愛国者を揶揄する趣旨で無駄に収入印紙を購入して廃棄することを推奨していました。
【スローガン】君が国を愛しているのなら、一枚でも多く無駄に収入印紙を買おう。
使わずに、置いておく。あるいは、愛国者同士で集まったときに破り捨てる。RT @none_ktmr: 使い道教えて下さいw RT @Hideo_Ogura: 【スローガン】君が国を愛しているのなら、一枚でも多く無駄に収入印紙を買おう。
愛国者たるもの、国から見返りを求めてはいけない。さあ、収入印紙を。RT @mizu_kun: 国債でいいじゃん RT @Hideo_Ogura 【スローガン】君が国を愛しているのなら、一枚でも多く無駄に収入印紙を買おう。
今からでも遅くありません。就職したら、給料の大半を収入印紙につぎ込みましょう。RT @none_ktmr: 先日仮免試験を一回で通って収入印紙2300円しか買うてない僕は非国民なのか・・・
しかしながら、各党がなした文書通信交通滞在費を目的外に流用する形で寄付する手法と比較すれば、収入印紙の購入は文書通信交通滞在費の使途としてより適切である外形を備えることができますし、その収入印紙を使用せずに破棄すれば法律に基づかなければ返納することができない文書通信交通滞在費を現実に国庫に返還するという目的を達成することができます。国庫に印紙税という形で納められた文書通信交通滞在費は、法律及び国民の監視のもとで予算という形で使用されることとなりますから、寄付よりましな手法であるとしか考えられないのです。