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女性宮家の配偶者と子を皇族としないという暴論がなぜまかり通るのか

守られなければならない皇族と守らなければならない皇族

 立憲民主党の野田佳彦代表が女性皇族の婚姻後に女性皇族だけでなく配偶者や子にも皇族の身分を付与すべきであると述べました。

安定的な皇位継承の在り方をめぐり、立憲民主党の野田代表は、女性皇族に加え、その配偶者や子どもにも皇族の身分を付与すべきだという考えを示しました。

立憲民主党の野田代表は1日夜、党のインターネット番組「立憲ライブ」で、辻元代表代行と対談しました。

この中で、野田氏は安定的な皇位継承の在り方をめぐり「女性皇族が結婚後も皇族にとどまれるようにするやり方が大事だが、その配偶者やお子さんが皇族になるのか、国民のままなのかでわれわれと他の党と差がある」と指摘しました。

そのうえで「私は配偶者もお子さんも皇族にすべきだと思う。男系の女性天皇に持っていくためにも、今のところ配偶者やお子さんの問題をどうクリアするかだ」と述べました。

NHK「立民 野田代表”女性皇族に加え配偶者や子どもにも皇族身分を”」

 このニュースに対して様々なコメントがなされていますが、最も的外れであると私が考えるのがこのコメントです。

男は道鏡

@yuuraku

 dadaさんは男性配偶者が皇族となれば皇位を簒奪するとでも考えて「男は道鏡」などとおっしゃっているのでしょうが、皇室において、皇族であるという立場と皇統に連なる皇族という立場に大きな差異があることをまったく理解していないようです。例えば、過激派が皇太子時代の上皇陛下に対して火炎瓶を投げつけたというひめゆりの塔事件において、皇太子妃であった上皇后陛下は身を挺して上皇陛下を守ろうとしました。守らなれければならない皇族と守らなければならない皇族がいらっしゃり、皇統に連なる皇族は守られなければならない者で、そうではない皇族は守らなければならない者ということです。付け加えれば、皇統に連なる皇族は男性女性を問わないというのが憲法の解釈ですから、上皇陛下、天皇陛下、皇嗣殿下、敬宮殿下、佳子内親王殿下、常陸宮殿下が該当することになります。
 そして、dadaさんのような観点の検討は皇室典範制定時にとっくに議論されていて、女性が当主である宮家に男性の配偶者がいると国民は男性の方が当主であると思ってしまうのではないかという議論がなされたうえで婚姻した女性皇族が皇族から離れるという現在の皇室典範の規定に至っています。しかし、この議論を現在の皇室にあてはめるとどうでしょうか。女性皇族が当主の宮家に配偶者が加わったとしても誰も当主がその男性であると思う者などいないのではないでしょうか。そして、宮家を簒奪するためにはその者に対する何らかの権威が必要で、明治時代とは比べ物にならないほど国民が皇室に関心を持っている現在において、そのような権威は配偶者となった男性にはないのです。つまり、宮家の簒奪など考える必要はないのです。

女性当主が皇族で配偶者と子どもが国民という女性宮家の過酷な現実

 女性皇族が当主で配偶者と子どもが国民という女性宮家では、女性皇族に大きな負担を強いることになります。赤坂御用地など皇族のお住まいに国民である配偶者と子が同居することに大きな議論が生まれることは想像することができます。それに加えて、配偶者や子には皇族のような職業選択や言動の制限がありませんから、SNSで皇族のお住まいに関する情報を発信してインフルエンサーになろうとしたり、政治の世界にチャレンジして皇族の配偶者であることをアピールして選挙運動を優位に運んで国会議員に当選するようなこともあったりするでしょう。現在の皇室は政治から距離を置いているからこそ広く国民が権威を感じ、敬愛しているわけですが、女性皇族の配偶者が特定の政党に属する国会議員となってしまったらどうでしょうか。その政党と対立する政党を支持する国民は皇室に対する権威を失って敬愛する気持ちも持ち合わせなくなるかもしれません。

皇族の身分から離れる自由

 皇室典範には皇族が皇族の身分から離れることができる条項があります。

第十一条 年齢十五年以上の内親王、王及び女王は、その意思に基き、皇室会議の議により、皇族の身分を離れる。
② 親王(皇太子及び皇太孫を除く。)、内親王、王及び女王は、前項の場合の外、やむを得ない特別の事由があるときは、皇室会議の議により、皇族の身分を離れる。

 女性皇族に対して、配偶者や子との同居すら多くの場合に認められないような生活を強いて、国民との信頼関係が損なわれてしまった場合に待っている結果は、皇族の相次ぐ離脱と皇室典範の規定により皇族を離れることができない天皇、皇太子、皇太孫の形骸化した宮中祭祀とご公務となることでしょう。
 たった一度の人生を自分のためにではなく国民のために尽くす天皇や皇族と、それに感謝して敬愛する国民が守り育ててきたのが天皇と皇室です。女性宮家の当主である女性皇族の配偶者と子どもを皇族としないという無意味な家族の分断を図ろうとする職務放棄極まりない有識者会議の面々と、保守と尊王を自称する者のもたらす未来は天皇と皇室を永遠に日本国から消し去ってしまうということを改めて認識しておく必要があると思います。