すべてが正論である園部逸夫元最高裁判所判事の女系天皇、女性天皇を認めるべきとの発言
園部逸夫元最高裁判所判事の発言
園部逸夫元最高裁判所判事が女系天皇、女性天皇を認めるべきであると述べ、弁護士ドットコムニュースが報じています。
小泉純一郎内閣のもとで議論された皇室典範に関する有識者会議と上皇陛下の考えていた皇室のあり方
小泉純一郎内閣のもとで皇室典範に関する有識者会議が開かれ議論が続けられましたが、その議論の席にはオブザーバーとして宮内庁の職員がいました。宮内庁の職員がいた理由は一つしかありません。天皇の意思を反映させるためです。有識会議の委員らは、緊張感をもって議論を行うとともに、宮内庁の職員がストップをかけないことで天皇の意思に反した議論になっていないことを認識したそうです。なぜ天皇の意思を反映させることが重要であるかと言えば、皇室の問題点や、表に現れない宮中祭祀などのご公務について、天皇以上に認識している方がいらっしゃらないからです。
それに対して菅義偉内閣のもとでなされた天皇の退位に関する有識者会議の内容は酷いものでした。有識者会議に対して求められていたのは皇位の安定的な継承であったのにもかかわらず、皇位を継承することができない皇族を増やすことを議論し、女性皇族が皇室に残るもののその女性皇族の配偶者は皇族になることなく国民男子のままという女性皇族の家族の一体感すら無視した結論を提言しました。
この有識者会議は、皇嗣殿下から悠仁親王殿下への流れを揺るがせにはできないなどと述べていますが、皇太子(「皇太弟」と表現すべきですが皇室典範には「皇太弟」を定義していませんので「皇太子」と表現します。)ではなく皇嗣であるという皇嗣殿下のお立場をまったく理解していないと言えます。
皇太子は次に天皇になる方で、皇嗣はその時点で皇位継承順位1位である方です。つまり、皇嗣は皇位継承順位が上位の方が現れれば皇嗣ではなくなるお立場で、必ず次に天皇になる方ではないのです。したがって、現時点で皇位継承順位1位であるだけのお立場である皇嗣殿下が天皇になられる流れは変わってよいのであって、親王である悠仁親王殿下が皇嗣殿下の次の天皇になられる流れに至っては尚更であると言えます。
新嘗祭など天皇陛下がなす宮中祭祀の場には天皇と皇太子のみが入ることができ、皇太子は天皇の姿を見ながら宮中祭祀を受け継いでいきます。しかしながら、天皇陛下の即位に伴って皇太子が不在であるという事態が発生しました。皇嗣殿下も皇太子ではないため、宮中祭祀においては他の皇族と同様に参列するというお立場で、宮中祭祀の場に入ることはできません。それは、宮中祭祀が次の世代に受け継がれないことを意味します。その事態を打開するためには秋篠宮殿下が皇太子となられる必要がありましたが、結果としてなされたのは皇嗣として宮中祭祀の場に入ることでした。このことから私は皇嗣殿下は天皇になられることに前向きではないのではないかと忖度いたしました。
上皇陛下が天皇であったときに、皇位継承については国会などで決めることであるが、皇室のあり方については皇太子と秋篠宮に話を聞いてほしいとおっしゃっており、天皇や皇太子と比較してお立場的に自由に発言することができる秋篠宮殿下が「皇族の数が少ないことは皇室経済の面から考えればよいことであると思います。」と述べられました。この経緯から考えて、皇嗣殿下のこの発言は上皇陛下のご意見であり、天皇陛下も同じご意見であると解釈すべき発言で、上皇陛下、天皇陛下、皇嗣殿下は旧11宮家の末裔の男系男子が皇族になることについて否定的なお考えであると私は忖度しました。また、皇嗣殿下は「私は帝王学を学んでいない」とも仰っています。これらのお言葉を総合すると、皇嗣殿下は自らが天皇となること、皇嗣殿下とともに帝王学を学んでいらっしゃらない悠仁親王殿下について、天皇になることは適切ではないとお考えになっているのではないでしょうか。
伝統とは時代の積み重ねである
皇位継承問題において、「皇位は万世一系で男系で継承されてきた」とおっしゃる方々がいらっしゃって、男系継承を維持するために戦後皇室を離れた11宮家の末裔の男系男子の一般人を皇室に迎え入れて皇位継承候補者に加えようとする案を支持しています。この案については、次の選択肢を示すことで批判に代えることができると思います。
竹田恒泰さんが天皇となった場合と、小室眞子さんが皇族から離れることなく天皇となって小室圭さんが天皇の婿という皇族になった場合と比較して、あなたが天皇に権威を感じ、敬意を持つことができるのはどちらですか?
世論調査において、女性天皇と女系天皇の違いなどに理解が進んでいないにもかかわらず、愛子内親王殿下が天皇になられるべきだという意見が多いという結果がしばしば報道されています。私も参加したことのあるゴー宣道場では、愛子内親王殿下が天皇に即位することになればブームとなって天皇に対する敬意が高まるなどという意見がしばしば道場に参加する方から述べられていましたが、私はこれは違うと思います。
愛子内親王殿下も皇嗣殿下もたった一度の人生を国民のために祈るという人生を受け入れられており、悠仁親王殿下はそのための準備をなさっています。ただ、天皇の子が天皇になるという直系で皇位が継承されていくということに国民が権威を感じていることが世論調査にあらわれているだけなのです。
そして、伝統とは時代の積み重ねです。それぞれの時代において日本人が天皇に権威を感じて敬意を持ってきたということを積み重ねたことが伝統となっているのであって、今の時代において国民が愛子内親王殿下が天皇になられることに正統性を感じているという事実を過小評価することは間違いであると思います。
天皇の権威は神話に由来する
そして、男系男子による継承を絶対として旧11宮家の末裔の男系男子の一般人を皇位継承候補者として皇族にさせようとする方々は、神武天皇からの男系男子による継承をやたらと強調しますが、天皇の権威は天照大神の天壌無窮の神勅に由来するものであって神武天皇の子孫であることではないのです。
そして、天照大神が神話の中で描かれている神であることから神武天皇からの継承を強調される方もいらっしゃいますが、歴史学の研究で神武天皇も実際しないものとすることが通説となっていますから、神話に天皇の権威を求めているということにまったく変わりがないわけです。
過去に存在した皇位の女系継承
そして、皇位が一度の例外もなく男系で継承さされたという点にも疑問があります。
元明天皇と草壁皇子の間に生まれた内親王である元正天皇は、母である元明天皇の次の天皇に即位しています。この皇位継承は、女系継承がなされていると考えなければ説明がつきません。草壁皇子は天武天皇の皇太子でしたが、天武天皇の崩御後に皇位に就いたのは天武天皇の皇后である持統天皇でした。その後、草壁皇子とその皇子である文武天皇の早世により草壁皇子の配偶者で文武天皇のある元明天皇が皇位に就き、元正天皇がその後を継ぎました。この皇位継承において、天智天皇系の男系男子の皇族には桓武天皇の祖父である志貴皇子が存命で、天武天皇系の男系男子の皇族には長皇子や舎人親王などが存命であったことからも、天皇にすらなっていない草壁皇子の男系の血統が重視されたとは考えられず、元明天皇の内親王であることが皇位継承の決め手となったことは明らかであると思います。したがって、皇位が一度の例外もなく男系で継承されてきたというのは誤りであることがわかります。
天皇や皇族に過度の負担を強いない天皇と皇族のあり方
そして、最後に考えておかなければならないのは、皇室は天皇や皇族がたった一度の人生を国民のために祈ることを決めてプライベートなどまったくない窮屈な生活を過ごされることによって維持されているということです。皇族が「私はこのような生活は嫌だ」と考えれば皇族から離れることもできますし、天皇や皇太子など皇族から離れることができない方がそう考えたとすれば、宮中祭祀や国民のための祈りは形骸化してしまい簡単に皇位が途切れることになります。
そのためにも天皇や皇族のご負担を減らしていくことを私たち国民が考えなければなりません。特に、男子誕生が想像を絶するプレッシャーとなって天皇や皇太子の配偶者にのしかかる男系男子による継承は側室を備えているからこそ成り立つのであって、大勢の側室を抱えるということが天皇の権威を失わせるという今の時代において天皇の男系男子による継承はすでに不可能であると言ってよいでしょう。
そして、旧11宮家の末裔で男系で継承している男子を皇族とすることも不可能です。皇位が断絶するかもしれないという緊急事態においても、男系男子による継承を絶対であると主張する竹田恒泰さんは自らが皇族となることを否定していますし、皇族になってもよいという旧宮家の末裔は未だ現れていません。また、保阪正康さんの調査では、旧宮家の末裔で皇族になってもよいと考える者はいないことが明らかになっています。
仮に、皇族となってもよいと考える旧宮家の末裔が現れたとしても憲法の門地による差別の禁止をクリアすることができません。国民の中で旧宮家の末裔だけを、それも天皇から男系男子で継承している者が清和源氏の末裔や桓武平氏の末裔などと多く存在するにもかかわらず、特別に皇族とすることは門地による差別にあたります。
それをクリアするために、皇族の養子とする案が出てきたわけですが、それは皇族に見たこともない赤の他人との養子縁組を強いるものとなります。
以上のことから皇室典範を改正して直系優先による皇位継承とする以外の選択肢がないわけですが、いわゆる保守を自称する政治家たちは、批判を恐れて自らが鬼籍に入った後に訪れるであろう皇位断絶の危機には見て見ぬ振りをし、ご自身が批判されないのであれば皇位継承や皇室の危機に対応しないと考えているとしか思えません。その姿勢は皇室や天皇がいなくなることを望んでいる日本共産党などの左翼勢力の望む方向に進んでいるといえます。旧11宮家の末裔の男系男子を皇族にしたとしても、男系男子での継承を続けていく限り、女性皇族のご結婚によって皇族数はどんどん減っていき、清和源氏の末裔かどうか歴史上も怪しい徳川宗家の者などを皇族とするような未来が見えてきます。この誰でも皇族になることができるという皇室の形が、皇室の聖域性を根底から揺るがし、国民が皇室や天皇への権威を感じることがなくなり、皇室や天皇への敬意を持たなくなることへと繋がるのです。
どのような形であれ、一度皇族を離れた者は、皇族との婚姻などの事情がない限り皇族となることはできないという皇室の聖域性を守るルールがありました。そのルールからしても、国民が天皇に権威を感じて敬愛するという天皇と国民が辛苦を分かち合うというこれまでの皇室のあり方から考えても、女系を認めて直系で皇位継承する以外の解決策はないのです。