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【授業におけるICT活用】多数決の中身

以前、Googleフォームを使った授業の例をお話したことがありますが、先日、私もGoogleフォームを使って子ども達に講座を行いました。今回は「道徳」です。

ネット上でのコミュニケーションのお話でしたが、最初に子ども達に二次元バーコードを配り、タブレットで読み取って質問に答えてもらいました。

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質問1:次の会話で、二人は仲直りできたでしょうか?

(会話)
 A:ごめんね
 B:もういいよ

(選択肢)
・仲直りできた
・仲直りできない

質問2:質問1であなたはなぜそう思いましたか?

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「質問1」の答えは単純に選ぶだけなので簡単です。
仲直りできたか、できないかを選びます。

結果、「仲直りができた」が約6割、「できない」が約4割というクラスがあったり、「仲直りできた」が2割で、「できない」が8割になったクラスがあったりしました。

質問に答えたあと、そのクラスの回答が円グラフの形になって表示されます。子ども達はその結果を見て、自分と同じ意見、違う意見の人がいるということを知り、ネット上のコミュニケーションの難しさを考える…という講座のめあてにつながるのです。

しかし今回の道徳では、もう一歩踏み込むことにしました。
それが「質問2」です。

なぜそう思ったか…いつもは手をあげて発表してもらいます。それでも十分なのですが、あえて文字で書いてもらいました。

こうするとGoogleフォームは、書かれた回答をそのまま表示してくれます。
仲直りできたという選択肢の子の意見、できないという子の意見が特に分類されずに羅列されるのです。つまり、一見してどちらの回答を選んだのかわかる場合とわからない場合があります。

どちらともとれるような答えについて、子ども達に「どっちだと思う?」と聞いていると、さらに自分たちの意見を言ってくれました。

ここで何を伝えたかったかというと、「同じ選択肢を選んでも、選ぶ理由が違うこともある」ということを可視化したということです。

今、多数決をとるときは納得いくまで話し合うということが少なくなっています。若者の間では「まず多数決」をとってしまうということもあるようです。

その場合、結果として仲直りできたと思うかという結果だけを知ることになり、グラフの読み方も「8割ができなかったとおもう」「2割はできたとおもう」という形にしかなりません。

今回のような選択肢ならそれでもまだ良いかもしれませんが、これが「賛成か」「反対か」という内容だと、数の多さを優劣と受け取ってしまう…という問題が生じるのです。

多数決の結果は数字(グラフ)で表れて分かりやすいけれど、その選択肢の裏に一人ひとりの意見があり、同じ「賛成」や「仲直りできた」であっても思うことは各自違うのだということを知ってほしいと思いました。

国際団体、ATC21s(Assessment and Teaching of 21st Century Skills=21世紀型スキル効果測定プロジェクト)が提唱する「21世紀型スキル」では、「チームで働く力」が今後より求められる能力であると書かれています。

チームで働くためには、発信力、傾聴力、状況把握力、規律性、ストレスコントロール力、柔軟性などが挙げられていますが、そうした能力のもとになる部分に「想像力」があると思います。

状況把握をするうえでは結果を認識するだけでなく、その結果の裏にある多様性を理解していないと対応ができない場合があるからです。

仕事だけではありません。同じ結果でも意見が違う、同じものを見ていても受け取り方が違うということを理解することは他者への寛容性を高めるということにもなります。

みな、一人ひとり違う意見を持っていて、それは誰が正しい、というものではない。しかし、多数決の結果としては数に現れてしまうのだということを知ると、他者への思いやりや配慮がなされるようになるのではないでしょうか。

データを扱うということは単に表やグラフにまとめるということだけではありません。人々の意見を可視化できるということが念頭にあると、子どもたちの思考を深めるためのアイデアが浮かんでくるのではないでしょうか。

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