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マルタン・デュ・ガール『チボー家のジャック』について

『チボー家の人々』の作者マルタン・デュ・ガール自身が『チボー家の人々』を子ども向けに編集したものです。昨年『チボー家の人々』全五巻を読んだのですが、これだけの長編をどうやって?と気になって買ってしまいました笑。上の画像は高野文子さんによる表紙のイラスト(ジャック)です。

 『チボー家の人々』とどう違うかというと、政治的な難しい話や男女のからみなど、子どもに読ませられない部分をカットして主人公ジャックの生涯をざっくりと一冊にまとめた、という感じです。ジャックにだけ焦点を当てているので、兄のアントワーヌや親友のダニエルのエピソードもほぼカットされています。ジャックの恋愛については描かれていますが、それも性的描写はなしでプラトニックなラブシーンだけとなっています。

 率直に感想を言うと、やはりこの作品を子ども向けにするのは無理があったのではと思います。もともと戦争や革命の話がメインの作品ですし、官能的なシーンも非常に多いので、その辺をすべてカットすると話の流れが不自然になるんですよね笑。『チボー家の人々』を読んでいる人ならあらすじを振り返るという感じで楽しめても、そうでない人にとってはわかりにくいと思います。登場人物も、本編ではちゃんと役割を与えられている人物がちらっと出てくるだけで終わってしまって、なぜ登場したのかよくわからなかったり。これならいっそ『チボー家の人々』とは別の話として一から書いたほうが良かったのではないかと。

 しかし、『チボー家の人々』を読みたいけど五巻全部を読むのはちょっと…とか、あらすじを知っておきたいという人はこれから入るのもいいかもしれません。


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