根菜と球根と根と茎と混乱
※これは2008/03/28に書いた記事を発掘加筆修正の上転載したものです※
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先日、根菜カレーと言うものを食べた。
その中に白ネギのでかいやつ(焼鳥についてるような輪切りのネギ)が何個か入っていて、食べながらふと「ネギは根菜なのか?」と引っかかったのだった。
確かにネギの白い部分は土に埋まっているけれど、なんと言うか形状的に茎か葉のようにしか思えないわけで。「根菜」ではないだろ、といいたくなる。といいつつも、同じネギと名がつくものでもタマネギだと、根菜と言われると納得してしまう雰囲気はある.....ほら畑でも土の中でゴロゴロしてるしさ。
そうやって考えていくと、根菜とは何なのか、いや、ネギとタマネギは名前が被っているものの同列に考えていいものなのか、実は何か違うものなんじゃないか(同じ芋でもジャガイモは茎だが、サツマイモは根である的な)と疑問はどんどん膨らんでくる。
調べるしかない。
と言うわけで、まずは「根菜」について調べてみた。
調べて見ると、根菜というのは非常にアバウトな分類であることが判明する。
「土の下にあれば全部根菜」
である。
定義的には「地下にできるものを利用」なので、本来地上に出ているはずの茎に、無理やり土を盛って地下扱いにしている長ネギが根菜扱いなのは、やや疑問を感じえないが、まあ拡大解釈すれば根菜に入れてもいいのだろう。
しかし、そう考えると「グリーンアスパラ」は野菜だが、「ホワイトアスパラ」は根菜という事になる。ウドも根菜か。
はて。
まあ、そもそも分類が緩いのだから突き詰めてもしょうがない。とりあえず真剣に悩むジャンルではないと言うことが分かっただけでも上々であると捉えることにする。
次はネギとタマネギである。
結論から言うと、ネギとタマネギはちゃんと仲間で、どちらも茎だった。タマネギは鱗茎といわれる茎と葉の変化形であるらしい。
しかしココでふと疑問として急上昇したのが「球根」というワードである。
私の記憶によると、タマネギは球根扱いされていた筈だ。球の「根」である。でもタマネギは茎。
・・・・・あれ、球根って何だ?
既に本来の調べ物の道筋とは外れているが、もはや乗りかかった船なのでそのまま調査に突入する。
そして判明するショッキングな事実。
「球根は、狭義では『茎と葉』である」
・・・名前、偽りすぎでしょ!!!!!
今まで根だと疑いもしなかった私の純情を返せ!
という気分にさらされて愕然とするしかない展開。
ええと、これってぶっちゃけ常識の範囲?
私が知らなかっただけ?
小学校ぐらいで習うこと?
と言うか待て「狭義」の球根ってなんだ、「広義」ってあるのかというところにも引っかかる。
そしてもちろん調べる。
どうやら球根というのは広義では「植物の地下にある部分が養分をためて膨らんだもの」でを言うらしい。
植物学的にはその中をさらに6つに分類していて
1)鱗茎
茎の周りに葉っぱが膨らんで重なった、あるいは葉っぱだけが膨らんで重なったもの。タマネギみたいなやつがコレに当たる。他に、チューリップとか、ニンニクなんかも仲間で、世間的に「球根」と言われるものはこれにあたる。マジでショック。
2)球茎
茎自体が肥大化したうえに、薄皮で包まれているもの。サトイモみたいな奴と思えばいいらしい。仲間としては、小学校の水生栽培でよく使われるクロッカス、グラジオラス、ヒヤシンス、フリージアあたりがあるらしい。
3)塊茎
コレも茎自体が肥大化したものだが、薄皮が無いものになる。こっちは、ジャガイモみたいな奴で、シクラメンとかベゴニアが仲間らしいのだが、はっきり言ってシクラメンとかベゴニアの芋部分はそうそう目にすることは無い。ジャガイモと思っておけば問題ないだろう。
4)根茎
水平方向に伸びた地下茎が肥大化したもの、だそうで、ここらへんから2と3との区別が良くわからなくなってくる。要は「丸いか長いか」の差であるらしい。レンコンとかショウガがコレにあたるようだ。ちなみに「根茎」と言う名前だが、分類上は「茎」である。まぎらわしいったら。
5)塊根
根が肥大化したもの、というかやっと根だ。ここに入るのは、サツマイモとかダリアとか。
6)担根体
5でやっと根だと思ったのに、こいつは「根でも茎でもない」んだそうだ。ヤマイモ科特有の現象....というか器官で、当然ながらヤマイモとかナガイモとかがコレに分類される。うん、たしかにヤマイモってあれ、茎とも根ともつかないよね.....ナニモノでもなかったんだなあ。
で、こうやって分類して見ても、小学校ぐらいのときから「球根」だと思ってきたものが、茎でしかないことが判明したわけだ。
しつこいけど、個人的に超ショック。
それにしても何か色々とアバウトじゃない?という引っ掛かりが拭えない。
そもそもこの混乱の諸悪の根源は、根菜と言う言葉は「食物学」上の分類で、球根と言う言葉は「園芸学」上の分類であり、「植物学」上の分類とはまた別のものであるという状況である。
遺伝子的とでも言えばいいのか、厳密な勉学に当たる理系的な分類から来る植物学と、実学、工学・家政的な園芸的・食物学的な分類を、日常生活では混ぜて使ってしまうから、疑問をもって考え出すと混乱するタネであったということのようだ。
例えば、ショウガとミョウガは植物学的に言えば「ショウガ科」に属するので同じグループと言うことになる。
しかし、食物学的に言うとショウガは地下にある部分を使うから根菜で、ミョウガは土の上の部分を食べるから根菜ではない。
そして、園芸学的に言うと、どちらも根茎を使って育てるので同じグループになる。
アバウトだなあ。
本当にアバウトだ。
・・・でもまあ、美味しく食べられればいいじゃないかと思うことにしよう。
そうしよう。