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「沈黙の向こう側 話さない子どもの心を理解する」
中学時代に誰も彼女の声を聴いたことがないという同級生がいた。
彼女はとても頭がよくいつも学年トップの成績だ。
彼女と私は高校が同じで、いつも電車通学で毎朝同じ列車に乗っていたことがきっかけで仲良くなった(仲良くと言っても会話を交わしたこともなく彼女の声すら知らない私)
毎日彼女の側に行き「おはよー」
しかし彼女からの返答は無い
私は何とか彼女に「おはよー」と言わせたくなり、毎日毎日挨拶していた。
彼女にしたら、私のことは小学校から顔は知っているもののその程度しか知らないし、なんで自分に声をかけてくるのか?なぜいつもそばにいるのか?わからなかっただろう…
しかし彼女は私を嫌がることなくいつも何にも言わず、離れることなく無言で学校の道を一緒に通った。
半年ほどして、彼女が「おはよ・・・」ととても小さい声で答えてくれた。
その声はとてもきれいな声で想像以上の女らしく大人の声だった。
私との交流がきっかけで彼女は少しずつ他の同級生とも挨拶を交わすようになり、会話をするようになった。
私は彼女がどんどん社交的になり明るくなるのを見てうれしかったのを覚えている。
勉強の嫌いな私は成績優秀な彼女に得意の数学を教えてもらうようなる。
いつの間にか彼女を中心に数学サークル的なものが出来、解けない数学を何人かで放課後教えてもらうようになった。
そんなこんなで3年生の夏
私たちは進学について考え始め、彼女は国立大学を目指すことになり学校初の現役合格!!とみんな盛り上がってい(新設校だったので教師側が一番盛り上がっていた)
そんなある日・・・彼女が家出をした。
彼女の担任が私に
「〇〇さんは家出をして保護されて家に戻ったけれど誰とも話したくないといって困っている。退学するといって聞かない。貴方となら話すといっているから説得してほしい」
私も受験前ではあったが、大切な友人がそんなことになっているならとりあえず彼女に会いに行った。
彼女はキラキラした目で私に言った「今まで勉強しかしてこなかった。受験前にふと自分を振り返ったとき何をしてきたのだろうと・・・男の子を好きになったことも、おしゃれをしたこともなかった。なんて面白くない人生かと思い、ビルの上から飛び降りようと屋上に行ったらある男性に助けられた。その人は自分にとてもやさしくしてくれた。人を始めて好きになった。もう勉強なんかしたくないし高校も意味がない。私は彼と暮らすんだ」
話を聞いた私は急に彼女がとてもとても遠い国の人に、そして大人の人に思えた。
それと同時にこれだけ側にいたのに彼女の苦痛をわからなかった自分に悔しかった。
でも彼女は自ら命を絶つことなく今、目の前に居てくれることに感謝した。
私と話をしたのち大人たちが彼女を説得し卒業まではしたが、その後私は看護学校へ行くため家を出て実家を離れ卒業後会うことはなく・・・気が付けば音信不通になってしまった。
あの時彼女に「おはよー」と声をかけなければ彼女の人生も違ったのか???
しかし、今振り返ると、それは重要な問いではないのかもしれない。
大切なのは、私たちが誰かの沈黙に耳を傾け、その向こう側にあることを理解しようとする姿勢だ。
心の中には、聞こえない叫びや伝えたい思いがあふれている。
私たちにできることは、その沈黙に寄り添い、理解しようと考えること。そして、彼らが自分のペースで、自分の言葉を見つけられるよう支援することなのだ。
この経験が、今の私の活動の原点となっている。
沈黙の中にある子どもたちの声を聞き、その心を理解することで、彼らの未来も共に頑張っていけると信じている。