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【日記】2024.8.24 三十三年ぶりの登校

 今朝がた窓際で執筆していると、家内が散歩から帰ってきて、サプライズがあると云う。しかも、お腹の子からということである。やけに雲が氣になる朝であった。

 五千字ほど草し、昼ご飯にした。家内が打った饂飩のうえには、最上伝統野菜の畑ナスと自然農法で育てられた万願寺が置かれていた。最後の晩餐候補のひとつにしてよい味である。食後、家内に連れていかれた先は、私が通った小学校であった。

 今朝の散歩でお腹の子に任せて歩いたら、家内が正門に連れてこられたという。正門には、図書館が市民向けに開館しているという貼り紙が目についた。我が子が私に見せたかったのは、これであったかと直観した。三十三年ぶりに小学校に入ると、ちいさな私が傍らを駆け抜けていくようであった。

 帰路、やはり雲が目についた。巨大な円盤のようと家内も傍らで空を見上げていた。その下には、鳶が雄大に飛んでいる。こちらの景色も、生まれ育ってから変わらぬものである。円盤雲と鳶を眺めていると、私の肩胛骨がどこまでも拡がっていった。これまでは小さな羽を必死にばたつかせてきたけれども、もうその必要もないように思えた。

 私はこれまで休まず使ってきたちいさな羽に御礼を云い、空へと舞いあげた。その代わり、あのおおきな鳶の羽をお借りした。子の羽化なのか。私の羽化なのか。再び旅立ちのときが近い感覚がある。

 この羽が子を守れるよう、私も羽そのものになろう。

 〆切に追われ、何の変哲もない一日が終わろうとしている。ただし、かけがえのない一日でもあったのであろう。帰宅したら、幾ヶ月かまえに予約していたシモーネ・シモンズのCDが届いていた。彼女の曲をかけ、執筆の合間に、こちらで少々、浮氣をしたかった次第である。

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