木村拓哉

今日、私より一つ下の世代の友人に


『木村拓哉が如何にカッコよかったか』
を説明したが、全く伝わらなかった。

「この世の全ての『カッコいい』を集めて、磨いたモノが木村拓哉だったんだよ!」

と言うが暖簾に腕押し。

①ガンダム
②ボトムズ
③人造人間キカイダー
④ゴレンジャー
⑤サンバルカン
⑥イデオン
⑦宇宙刑事ギャバン
⑨マジンガーZ
⑩紅の豚
⑪北斗の拳
⑫ストリート・ファイターⅡ
⑬ファイナル・ファイト
⑭226事件の青年将校
⑮三島由紀夫
⑯アイルトン・セナ
⑰マイケル・ジャクソン
⑱セックス・ピストルズ
⑲ジョン・コルトレーン
⑳アルバート・アイラー
㉑裸のラリーズ
㉒仮面ライダー・アマゾン

と言った世界中の『カッコいい』を集め、そして磨き上げたモノが

『THE 木村拓哉!』

だったのだが、「マジで?キモいと思うけど」と言う。

どうしたものか。
力説すれば、するほど伝わらない。
1996年の木村拓哉のカッコよさを伝えるのは、1970年代産まれではないと無理なのだろうか。

①エジプトのカイロ市民に、コタツの素晴らしさを伝える。
②イヌイットに、真夏にサーフィンをする楽しさを伝える。
③ロシアのモスクワ市民に、盆踊りを教える。
④童貞に、禁欲を説く。
⑤中国人に、『Google』を教える。
⑥バリ島の市民に、演歌の素晴らしさを伝える。
⑦メキシコ・ギャングに、愛と平和を教える。
⑧iphoneしか知らない世代に、ダイヤルQ2を教える。
⑨ラヴィ・シャンカールに、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンを聴かせる。
⑩レバノン市民に電報だけで、フキノトウの美味しさを伝える。

この位、ハードルが高そうな気がした。

「福山雅治じゃ駄目なのか?。世代的には同じではないか?」
とも聞かれた。
福山雅治では木村拓哉の『世界中の全てのカッコいいを集めて磨いた』モノにはならないのである。
ってか、福山雅治のファンって俺は会った事がないんだよな。
小劇場や暗黒舞踏と同じで「ファンの数は減りはしないが、増えもしない」と言う感じがする。

解説(力説)していて思ったのだが、1996年と言う時代を知らないと無理な気もする。

終戦記念日は終わったが、戦争末期。
特攻兵士達の宿舎には連日、若い女性たちがモンペを拝で(全裸になって)何人も押しかけていた、とか、

戦後は男性の数が圧倒的に不足していて、戦時中はそんなにモテなかった人の自宅に毎日、5人の女性がSEXの為に来ていた、とか(「あれは、辛かった。1人なら良いけど、5人はホンっと辛かった。断るワケにも行かなかったし」と言っていた)とか、

B-29に接近したゼロ戦パイロットが「あんなに美しい飛行機に銃を向けて良いのだろうか?」と思った、とか、

このくらい「流石に、その時代じゃないと理解出来ないっすよ」って言う感じなんだろうか。

「物凄い衝撃だったんだよ」
「どのくらい?」
「戦後、厚木基地に到着したダグラス・マッカーサーと同じくらい衝撃的だった」
「あれほど衝撃的だったのは、恐らく『源平合戦』『大化の改新』『ペリー来航』『敗戦』『ダグラス・マッカーサー』『226事件』位じゃないかな」
「分からない」
「じゃあね」

と、その木村拓哉ショックを個人的に話した。

その頃、私はサブカル童貞キモヲタ糞野郎で、ジョン・コルトレーンやジミ・ヘンドリックス、ジャーマン・プログレ、デトロイト・テクノに心酔し、シンセサイザーを弄り、ミニコミを発行し、同時にアングラ演劇をやり、そこを女性問題で破門された後にはオカルト色が強い福岡最大のインプロ・グループに所属して、何を血迷ったか『暗黒舞踏』にまで手を出し、最終的には唐十郎の劇団に入団すると言った、徹底した

『アングラ・サブカル糞キモヲタ野郎』

だったのだが、そんな私ですら木村拓哉の影響で髪を伸ばした程である。
SMAPの『セロリ』と言う曲で木村拓哉がアコースティック・ギターを弾いているシーンがあるのだが、その影響でtrumpetとシンセサイザーを所有していたにも関わらず、アコースティック・ギターを買おうか迷った程だった。

髪は木村拓哉の影響だけではなくて、Blue Cheerと言うアメリカのバンドと、『ドアーズ』のキーボードだったレイ・マンザレイクの影響も大きかったのだが、取り敢えず頑張って肩まで伸ばした。

その頃は痩せっぽっちだったし、夜中に繁華街を歩いていたら女性と間違えられてナンパされそうになっていた程だった。

そんな、ある日。

新宿に『ロッテリア』と言うハンバーガー店があり、そこに当時のカノジョとデートをしていたのだが、トイレに行ったら貧乏臭い奴がいる。

「なんだ?こいつ。貧乏クセェ奴だな」

と思って見てみたら

『鏡に映った自分』

だったことが判明して、その足で床屋に行って髪を切って今と大差がない状態になった。

「俺は木村拓哉には成れないのか」

と落胆したものである。

ってか、成れないんだけども「俺も髪を伸ばして、アコースティック・ギターを弾けばワンチャンあるんじゃね?」と思える誘惑が何処かあった。

1995~1998年の木村拓哉には猛烈な誘惑があった。

それは木村拓哉と言う人物が、伸し上がっていく際に魅せたギラギラした状態、切迫した疾走感が此方に伝わってきたからなんだと思うけども。

それは、その前の『ダウンタウン』のコントのように目が眩むような、真夏の太陽のようなギラギラした、あがらえない魅力と言うか。

切迫した疾走感は、例えば初めて聴いた時の『ブルーハーツ』とか『セックス・ピストルズ』『ジミ・ヘンドリックス』にしても同じだと思うのだけども、そう言う切迫感のある迫力と言うか、疾走感のある男性タレントは私の世代だと木村拓哉だった。

私より上の世代だと『沢田研二』かも知れないし、それより上だと『石原裕次郎』なのかも知れないし、もっと上だったらアラカン(嵐 寛寿郎)なのかも知れないけども。
違うかも知れないけど。

・・・と語りながら90年代を思い出したのだが、思えば90年代ってアナーキーだった気もする。
80年代の角川映画が再放送されない理由が「ストーキングやDV、現代では犯罪となる描写が多すぎる」なんだけども、90年代のドラマと言えば

『東京ラブ・ストーリー』
『高校教師』
『教師ビンビン物語』
『101回目のプロポーズ』

が浮かぶが、東京ラブ・ストーリーの頃は小学校高学年だったか中学生だったか、覚えてないが、ああ言うフラッパーなヒロインも衝撃だったし、
「かんち、SEXしようよ!」
と言う、田舎のキモヲタ童貞UFOマニアには、アルバート・アイラーのテナー・サックスのような音響はビビった。

『教師ビンビン物語』はタイトルが酷い。

『高校教師』は何しろレイプと自殺だもんな。
それまでの『学園モノ』って生徒と教師の友情物語なのだが、此処に至ってはレイプと自殺。
そして主題歌が『ぼくたちの失敗』。

トレンディー・ドラマが『アルフィー』や『田原俊彦』『小田和正』と言ったアッパーな曲を採用していたにも関わらず、そこへ子供でも視聴可能な時間帯に女生徒と教師のレイプと自殺、最後は『ぼくたちの失敗』である。

3歳の子供にギリシャ悲劇の読み聞かせをするようなモンで、これは衝撃的だった。

『高校教師』なんて、今だと放映出来ないんじゃないかな。
ただ、その『高校教師』が持っていたトレンディー・ドラマのダークサイトを深夜アニメが担っている、と言う面もあるけども。

だが、『平成のダグラス・マッカーサー』である木村拓哉程ではなかった。

しかし、どうして俺はサブカル童貞キモヲタ糞野郎だったのに、木村拓哉に惹かれたんだろうか。
思えば謎だ。

(追記)
以前、新宿の『加賀屋』と言うパイプ煙草専門店で出会った彫刻家の老人の話が面白かった。
彼は自分のパイプ煙草の修理に来ていたのだが「お、良いパイプですね」と言ったら話がパイプ煙草や煙草の話で盛り上がった。
その老紳士が言うには煙草を吸い始めたのは東條英樹の影響らしい。
老紳士が尋常小学校の頃(恐らく今で言う中学生)、東條英機が学校で演説と言うか講話をしたらしい。
その姿に戦中派の少年は「カッコいい!」と思い、校庭の裏に集まって「カッコよかったな!」「すげー、カッコよかった!あんな風に成りたい!」と言って、東條英機に近づく為に煙草を吸い始めたんだとか。講話中に東條英機は喫煙していたらしい。その姿が様になっていたんだとか。
戦中派にとって東條英機が、1996年の木村拓哉なんだろうか。

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