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自由進度学習と漢字学習

漢字学習についてです。皆さんはそもそも、どのように漢字学習を指導されていますか? 先生になりたての頃や、新しいクラスが始まったばかりの時など、一斉一律で進んでいくパターンが多いのではないでしょうか。私も過去に、みんなで一緒に進めるパターンで指導していました。

漢字学習の指導方法を振り返って

具体的には、月曜日と金曜日に20分ずつ漢字の時間を設けていました。金曜日の20分はテストの時間として、月曜日の20分はその週の国語の教科書に出てくる漢字を扱っていました。大体10個ずつぐらいでした。その週の水曜日から、例えば『ごんぎつね』の単元に入る場合、その単元に出てくる漢字をまずは読めるようにすることを目指していました。

月曜日の20分では、五つの指導を一斉指導で行います。子どもたちは漢字用のノートを出し、今週の漢字を10個提示し、読み方(音読み・訓読み)の確認、書き順の確認、空書きや指なぞり、ペアでのなぞりなどを行います。そして、熟語の確認、最後に書く練習をする時間を確保しました。最低でも全員が授業時間内に1回は書き、残りは金曜日に向けて宿題として行う形をとっていました。

皆さんも似たような方法を取っているでしょうか? もし全く違うやり方をされているのであれば、コメント欄で教えていただけると嬉しいです。途中でいろいろな要素を取り入れてみましたが、基本形はこの形でした。たとえば、漢字プロジェクトで子どもが教師の代わりになって一斉指導を行ったり、熟語選手権を開いたり、学校の様子が変わり、途中から漢字ドリルが導入されたりしましたが、基本形は7年間概ね一斉指導で進めていました。

自由進度学習の導入とその効果

ですが、8年目くらいになったときに、当たり前に立ち返ってみると、二つほど、ずっと気になっていたことがありました。一つは、漢字が得意な子はもっと突き抜けても良いのではないかということ。もう一つは、苦手な子が毎週金曜日のテストの際にとても辛そうだということです。この二つが気になり、そもそもの仕組み自体を大きく見直したいと思うようになり、自由進度学習の要素を漢字学習に取り入れてみました。

これまでのやり方との違いに特化してお話します。違いは四つあります。

一つ目は、漢字をどんどん進めても良いというルールを設け、上限を設けないこと。
二つ目は、テストを金曜日に受けなくても、水曜日や木曜日に受けても良いとすること。
三つ目は、再テストをOKにすることです。これは、教師から言われるのではなく、子どもが希望する場合に再テストを行うというものです。
四つ目は、これら三つのルールを実現するために、毎日漢字の時間を確保する必要があり、国語の授業の最初の5分間を漢字タイムとしました。これらが大きな違いかなと思います。すべてのメリットについて話すと放送が長くなってしまうので、今日の放送では、例えば「漢字をどんどん進めても良い」というリミッター解除について詳しくお話します。

リミッター解除の効果と子どもたちの反応

このルールを設けることによって何が生まれるのかについてお話します。私の学校では「赤猫漢字ドリル」という漢字ドリルを採用していて、リンゴのマークが目安となっています。「リンゴ1」「リンゴ2」といった形で、今週の目安はリンゴ2だよと決めていますが、子どもたちはどんどん進んでいて、リンゴ2が目安の週にリンゴ2をやっている子は半分もいないんです。子どもたちは、もうどんどん進んで、リンゴ7やリンゴ8、リンゴ9をやったりしておる子もいます。
テストの直前だけ少しリンゴ2を復習してからテストを受ける子が多いですね。私は子どもたちに、なぜそんなに先に進むのかを純粋に聞いてみました。
「なぜ先に進んでいるの? 先に進むと何か良いことがあるの?」と聞いたところ、子どもたちの答えは、「どんどん進めるのが楽しい」とか「何度もやりたい」といったものでした。これまでは1回しか学習する機会がなく、テストに挑む際も1回しか学習していなかったから、「だから私は忘れてしまう」と感じていたそうです。今は自分で2周目、3周目を進んでいるという子どももいました。「私はみんなの3倍学ぶことができるから」と言っていた子もいました。テスト以外のところで先に進んで、テストの直前にさらに復習するから、私は3倍できるんだというふうに話してくれました。これはなるほどなと思いました。実際、もともと漢字学習の点数が高かった子だけではなく、不安だからこそ、どんどん進みたいという子たちもたくさんいるんだなというのが、このやり方を通じて一番学ばせてもらったことかなと思います。

他にも子どもから聞かれたメリット

大人目線で見ると、子どもたちはゆっくり進みたいのかなと思いがちですが、実はそうではないんですよね。やっぱり先に漢字を学ぶことで、早く繋がりが生まれるというのも、子どもたちの姿を見ていて良いなと思うところですね。純粋に「読める本が増えました」と言っている子もいて、確かにそうだなと思います。
さらに、先に漢字を進めていると、他の学習にも好影響があります。例えば、4年生で都道府県の漢字が出てきますが、先にどんどん漢字を進めている子は、都道府県の漢字もほぼ知っていて、社会科の学習と繋がりが生まれるということもあります。リミッターを解除してどんどん漢字を進めてもOKというルールについて話しましたが、多くの子どもにとってプラスになる手法だと思います。

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音声で聞きたい方はVoicyで話をしていますので、どうぞ。

2023年、2024年の3月に単著を出版させていただきました。こちらもご興味あれば、どうぞよろしくお願いします。


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