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カスタマーサクセス担当者のための「サクセスプラン」テンプレートと書き方解説


サクセスプランとは?

サクセスプランとは、顧客が自社の製品やサービスを最大限に活用し、期待する成果を達成するための具体的な計画です。このプランは、顧客のビジネス目標やニーズに基づいて個別に作成されるものです。
この記事ではサクセスプランを作成するのに適したテンプレートとその書き方、事例について紹介します。

サクセスプランのテンプレートとは?

タスクリストやWBS、それとも企画書?

顧客が製品やサービスを最大限に活用し、長期間にわたって満足度を高め、期待した成果を得るためのサクセスプラン。みなさんはどのようなフォーマット、テンプレート、書式で作成されているでしょうか?
タスクリストやWBS、KPI管理表など、何を選ぶか(或いは何が適しているか)は、製品によって得られるアウトプットやその測定難易度によって変わります。
製品の操作方法を教え、顧客が操作を習得したとしても、それだけで成果を手に入れることはほとんどなく、営業が広げた風呂敷の大きさや論理のジャンプの幅の大きさに苦しめられたり、顧客の状況や方針の変化に悩まされたりして、計画の見直しを迫られることは少なくないでしょう。

テンプレートを利用する利点

毎回個別に企画書を作成するのは手間のかかることです。そうしたユニークな対応をして元がとれる料金プランになっていれば、そうではないSaaSが大半でしょう。
また、作成するCS担当者は複数人いるため、それぞれが自分の好みの形式(フォーマット)でつくっていては、作業が属人化してしまいます。
そこで、そんなサクセスプランを、できるだけ成功可能性が高くなる「筋のよい」ものにし、且つ、つくりやすく更新しやすいテンプレート(書式)をご紹介します。
テンプレートを使用することで、ノウハウや暗黙知の属人化を防ぐことができ、また教育及び学習もしやすくなります。


お客様のSaaS活用プロジェクトを支援する「プ譜」

ご紹介するのは、「プ譜」というプロジェクトの設計図のテンプレートです。

プ譜はプロジェクトの対象を選ばず、紙(もしくはパワーポイントのシート)1枚でプロジェクトの全体像や諸要素の関係性を表現するものです。

サクセスプランに記述する要素

サクセスプランには次の要素が含まれることが一般的です。

  • 顧客の目標: 顧客がSaaS製品を使用して何を達成したいか、具体的な成果やKPIを定義します。

  • マイルストーン: 長期目標に到達するまでの途中に設定される短期的な成果や進捗ポイント。これにより、進行状況を測定しやすくします。

  • アクションプラン: どの機能をどのように活用するか、トレーニングや導入サポートなど、必要なステップを明確にします。

  • 責任者と期限: 各ステップにおける責任者や達成すべき期限を設定します。

  • リソースとサポート: 必要に応じて提供されるトレーニング資料やサポートリソースも含まれます。

ただ、これらの情報をすべて記述するのは大変です。もっと要素を少なく、早く書けてわかりやすいものが望ましいです。そこで、上記の要素をプ譜にプロットしてみましょう。

アウトカム=勝利条件を定義せよ

サクセスプランをつくるうえで最も重要なのはアウトカムの定義です。アウトカムとは、顧客がSaaSを使用することで得たい最終的な成果のことです。アウトカムはプ譜の「勝利条件」に該当します。

自社製品を導入する顧客の目的は、大まかな範囲では似ていますが、その勝利条件は各社各様です。
厄介ことに勝利条件はその性質上、あいまいだったり、複数あってどれも重要としていたり、そもそも考えていなかったりすることがほとんどです。顧客担当者の頭の中だけでなく、部署や会社として合意していないことが少なくありません。

サクセスを構成する要素とその状態を定義する

次に行うことは、顧客が未来にアウトカムを実現しているとき、顧客をとりまく要素が、「どのような状態であるべきか?」を定義することです。
これが、プ譜の「中間目的」にあたります。

中間目的を設定する上で重要なのは、中間目的=アウトプットはインプットを行った結果、出力が予測しづらいからです。言い方を変えると、直接的に影響を及ぼしやすいのです。
アウトカムはアウトプットが積み重なり、相互に影響を与え合ってもたらされるもののため、直接的な影響を与えづらくなります。そうすると、製品を導入してすぐに望むアウトカムが得られなかった場合、何をどう変えればアウトカムが得られるようになるのか?どこまではうまくやれていたのか?といったことを把握するのが非常に重要になります。
つまり、中間目的は導入の評価軸としても機能するものになるのです。

書き方のコツは、下図のように勝利条件の言葉から、構成要素を洗い出し、その後に「あるべき状態」を定義すると書きやすいです。

あるべき状態を実現する機能や作業を書きだす

中間目的を定義したら次に行うのは具体的に使用する(使いこなしてほしい)機能の操作説明を行ったり、非機能面で顧客に準備、行動してもらいたいことを書きだします。これが施策にあたります。

施策は必ず中間目的にひもづけるよう矢印線を引きます。これにより、「何のためにその機能を使いこなせるようにならなければいけないのか?」「その行動に意味、目的はあるのか?」ということを顧客と合意しやすくなります。

顧客のリソースを把握する

ここまで書いたら最後に「廟算八要素」の欄に、顧客のリソースや置かれている状況を書きだします。
関わるメンバーの氏名、人数、役割や責任範囲、使えるお金や社内の資源(他に使用している連携ツール、ハウスリストの数など有形無形のアセット)、支援する期間など、必要な情報はすべて書きます。
これを目に見える形にしておくことで、「人数や使える時間が少ないのに、人手や時間のかかる施策を採用している」という矛盾に気づきやすくなります。

サクセスプラン作成の成功事例

このプ譜を使用して顧客のサクセス支援に成功している事例があります。
物流SaaSのHacobu社では、エンタープライズ企業のオンボーディングにプ譜を活用しています。
プ譜を用いることで、顧客の目標達成までのプロセスが明確になり、プロジェクト進行中に生じる関係者の巻き込み不足や施策の抜け漏れを防ぐことができました。
プ譜によるプロジェクトの全体像を可視化することにより、解像度とエンゲージメントの高いオンボーディングが実現し、通常半年かかるところを4ヵ月で完了させることに成功しています。詳しくはリンク先の記事をご覧ください。


さらに詳しいサクセスプランの解説

ここまでプ譜をつかったサクセスプランの書き方の概要を説明してきましたが。さらに詳しい解説がビジネスWebメディアの「SalesZine」でご覧いただけます。
記事は3回に分枯れています。
第1回では「こんなサクセスプランは失敗する!」というアンチパターンの説明から入り、

第2回ではサクセスプラン作成のために、顧客が自分の言葉で成功のイメージを語れるようにするための「問いかけ術」と「プ譜への可視化方法」を解説しました。

そして第3回では、サクセスプラン作成後、顧客が成功に近づけているかを評価し、改善していくための「ふりかえり」をプ譜で行う方法を解説しています。

また、下記の記事では架空のSaaSを題材にしたサクセスプランの書き方を解説しています。

文章量は多いですが、より使いこなしたい!という場合は、ぜひご覧ください。

サクセスプラン作成ワークショップのレポート

上記のイベントレポート兼サクセスプランの作成方法を下記に記載しましたので、よろしければご覧下さい。

サクセスプラン作成ワークショップ

また、CS HACKさんのイベントなどで、プ譜を用いたサクセスプランの作成ワークショップも行っています。今後も所々で開催すると思いますので、よろしければCS HACKさんのTwitterアカウントをフォローしておいてください。

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前田考歩
未知なる目標に向かっていくプロジェクトを、興して、進めて、振り返っていく力を、子どもと大人に養うべく活動しています。プ譜を使ったワークショップ情報やプロジェクトについてのよもやま話を書いていきます。よろしくお願いします。