優しすぎる保育士だった私へ
今から18年前。新人保育士だった私は、赤ちゃんクラス(0・1歳児)の担任になりました。オムツの換え方さえも分からない私とともに、ベテランの先生とパートさんと一緒に9人の子どもたちを見ていました。右も左も分からないは私は言われるがままに、保育をしていました。その中で、ベテラン先生が子どもを叱る言葉の真似がどうしても私にはできませんでした。
実は私、それまで生きてきた中で人を真剣に怒った事がなかったんです。だから、やり方が分からないし、そこまで怒るというエネルギーを注げませんでした。なんでこんなことで怒るんだろう?とすら思っていました。
保育では、「叱る」と「怒る」は違うと言います。
「叱る」は、相手の事を思って、子どもたちにわかりやすく感情をこめて伝えていくこと。
「怒る」は、ただその場の感情任せに自分の思いを伝えてしまうこと。
保育のプロとしては叱ることが正解です。表情と声色、危険な事をタイミングよく子どもたちに伝えていくのです。私はこの違いすらよく分からず、ベテラン先生が怒っていると捉えてしまっていました。意図を上手に組むことができず、未熟でした。むしろ、怒ることのない私は優しい保育士だと思い込んでいもいました。今思い返すと…恥ずかしすぎます(-_-;)
ある時、叱れない保育士の私を保護者の人が叱ってくれました。
「先生!子どもをちゃんと叱ってください!」と。
その時は、そういわれた事がショックだったけど、今ならわかります。
我が子をもっと、きちんと教育して欲しい!というママの想いが。
優しいとは一見よいことのようにも見えますが、その優しさの裏には、無責任が見えてしまうことがあります。
その優しさは本当に相手のためを思っているのか?そこに愛はあるのかな?
叱ることで、自分が傷つかないようにしているだけではないか?
叱ることで、子どもたちに嫌われたくなかったんじゃないかな?
子どもたちときちんと信頼関係ができていれば、叱っても、時に怒ってしまったとしても、大丈夫なんです。今ではそれが経験でよくわかっています。
でも、当時の私は省エネでした。叱ることはすごくエネルギーを使うので、仕事を覚えるのに必死だった私は、子どもたちの将来を思って真剣に叱ることができなかったんです。子どもたちの将来の見通しなんて見えやしません…。(保育士が信じ抜くものなのですが)
それではいけないよ、と保護者の方が気づかせてくれたんですよね。
本当に感謝しかありません。
こうした経験をさせてもらって、今、親になって思うことは、たくさんの子どもたちや保護者の方が、私を親にしてくれたと言う事実です。
私の育った家庭は、保育士になって見返したときに、いわゆる要支援家庭でした。私にとってはこれが普通だった家庭と、保育園でたくさん見てきた家庭を比べた時に、自分自身が育ってきた環境はまさに劣悪な家庭でした。同僚の先生からは、よくその環境でグレなかったね…と言われました(笑)
そんな中でも、保育現場で「先生」という役割をもらって、いろいろな人に支えてもらいながら、無我夢中に楽しく保育してこれたことで、たくさんの学びがあって、正規の職員として年上のパートさんともいい関係を築く技術を身につけたことで、お姑さんとの関係づくりにもいかせて、私は恵まれていたんだなって改めて思えました。
もし、私が保育士じゃなく子どもを産んで育てることになっていたら、もっと不安が強かっただろうと思います。怒ると叱るの違いも知らず、感情のコントロールもうまくできていなかっただろうし、ついつい今の子どものいたずらだけにフォーカスして、子どもが遊びから何かを学んでいるなんて視点も、もてなかったと思います。
優しすぎる保育士だった私へ。
その優しさはどこからきていたのかな?
そっか。そんなあなたで大丈夫。きっとうまくいくよ。
そんなあなたを受けいれ、認め、許し、愛します。
あなたも、愛をもって、子どもに向き合っていってね。
きっと、子どもとの関わり方に悩んでいる人はたくさんいると思います。
自分を責めるんじゃなくて、どうしてそういう関わりをしちゃったのか?
ちょっと、考えるだけ。
叱れなくても、怒っちゃっても、結局ね、大丈夫なんです。
保育士だってこうやって失敗をたくさんしてきたので。
これを読んでくれたあなたも、子どもたちも、みんな
この世に産まれてきてくれてありがとう。
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