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【読書記録】わたしたちが光の速さで進めないなら
短編7作の入っている、韓国のSF小説でした。
韓国小説は、はじめましてだったのでどんなものかと読んでみました。
設定がおもしろくて今っぽい。そんな印象を受けたこの本。
私は、短編の中で「共生仮説」というお話が一番気に入りました。きっと冒頭でちらっと保育士が出てきて、後半には赤ちゃんが出てきていたから。お話の内容は、リュドミラという名の人物が自分が産まれる前にいた惑星のことを話し、表現し、世間にもてはやされます。そして、なぜか関係ないのにそこを知っている赤ちゃんがいて、大人たちが戸惑う話。それも仮説でしかないのですが。
「赤ちゃん……」
「複雑で、深くて、哲学的な赤ちゃん」
スビンとハンナは頭をかきむしりながらソファにへたりこんだ。
短編7作の中で、作者が一番楽しく書けた作品というだけのことはあって、楽しく読めたから、私は好きなのかもしれません。
「館内紛失」という短編も、亡くなったお母さんのデータがマインド図書館で切り離されてしまった、というおもしろい設定の中で残された娘がそれを取り戻す物語でなかなかよかったです。母と娘って永遠のテーマって感じ。
母娘関係はよく、愛憎相半ばする間柄と言われる。娘を愛しながらもそこに自身の姿を投影する母と、母の人生を重ね合わされることを拒む娘。「いい子」コンプレックスに苦しむ娘と、娘への愛情を間違ったかたちで表現する母。女性としての生を共有しながらも、まったく異なる世代を生きる母娘のあいだには、ほかの関係には見られない微妙な感情が潜む。たいていはそうだ。
この本の作者は1993年生まれの女性で工科大学化学科を卒業しています。だからなのか、私にはない世界観で、宇宙や感情など見えない何かを理解しようとするという姿勢がこの短編には詰まっていました。
最初は、宇宙ステーションとか、感情の物性とか、マインドへのアクセス権限とか、脳解析研究所などの日常にない単語や世界に没入するのに時間がかかるかもしれません。でも、お話の中に入ってしまえば軽くすんなり読めてしまいます。
たまには、こういう物語もおもしろかったです。いつもと違う分野の開拓も楽しいです。韓国小説は最近沢山出ているので、別のも手にとってみようかなって思いました。