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子どものこころ専門医へのおすすめルート ー小児科編ー @きりんパパ医

発達障害や不登校、自傷行為、うつ、摂食障害などを診療する子どものこころ専門医。

小児科から子どものこころ専門医になる上で、医学部の選び方から初期研修、小児科後期研修、子どものこころ専門医研修先の選び方について解説します。

いつもの日常的な内容と違って、医療者向けの内容になっていますので、ご了承下さい。

【自己紹介】

私 きりんパパ医 小児科専門医・精神科専門医・子どものこころ専門医


子どものこころ専門医研修や私自身の経験については、下記をご覧ください。


子どものこころ診療については、参考になるマンガがあります

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【大学の選び方】


医者を目指す以上、医学科に入学します。

ふつう、受験時代は合格するかどうかを考えるので精一杯。

もし、とても頭がよくて、いくつかの大学から進学先を選べる場合、子どものこころ専門医を目指す上では、どこの大学を選べばよいでしょうか。

答えは、どの大学でもいい。


やりたい部活があるから、住みたい地域にあるから、そんな理由で選んだ方が、有意義な学生生活を送ることができます。

理由は2つあります。

①小児科医になるまでに教授が変わるから


大学は、良くも悪くも教授がすべての方針を決めます。

医学科に入学してから小児科後期研修を終えるまでには11年かかります。その間に、50%の教授は定年退職を迎えます。

一口で小児科といっても、その中で臓器別(アレルギーとか神経とか血液とか)で専門が分かれています。
教授が専門にしている分野が優遇されます。
入学当時の教授の専門が、子どものこころ分野だったとしても、次の教授も同じである保証はありません。無数の分野があることを考えると、変わる確率の方が高いです。

稀に寄付講座などで、子どものこころを専門にする講座がある大学もあります。しかし、人員の数はそれほど多くなく、安定して予算が付くか、新しい人手を受け入れられるかはわかりません。

大学見学に行くと、いろいろ耳障りのいいことを言われますが、それを言っている人たちのほとんどは、いずれ大学を去っていく人たちです。


②出身大学では何も決まらない


子どものこころ分野は人手不足のため、応募すれば基本的に採用されます。
旧帝大出身だから有利とかはありません。

そして、初期研修、後期研修、子どものこころ研修とあと3回進路を選ぶチャンスがあります。出身大学で採用を決めているところはほとんどありません。

もし、研究をしたいのであれば、大学院まで見越して有名大学を選ぶことはメリットがあるかもしれませんが、別に卒業大学と違う大学院に進むことも全然できます。

野球少年が、プロ野球選手になるときに、所属するチームは後で決まるのと同じです。
子どものこころ専門医は売り手市場である分、野球選手よりもはるかに自由です。


【初期研修先の選び方】


初期研修は、教師になるための教育実習と同じようなものですが、医者の場合は、給料あり・身分保障ありなので、比較的待遇が良いと言えます。

その分、医師としての責任はついてきますが、初期研修中は病院や上級医が見守ってくれるので、安心して研修できます。


初期研修では、小児科・子どものこころ専門医では経験できない診療科を回ることをお勧めします。
このチャンスを逃すと、二度と経験できないことばかりです。

下記は特におすすめです。

・子どもの生活習慣病が問題になっているので、一般内科で高血圧や糖尿病の管理を学ぶ。

・精神科で大人の精神疾患をみておく(発症は意外と児童思春期)。

・産婦人科でお産を学ぶ。若年妊娠について知る。家庭の貧困について考える。

・救急科で初期対応を身に着け、命の危ない状態へ対処できるようになる。

・地域医療で病院の外の世界を知る。


common diseaseに触れておくのが大事なので、

大学病院よりは市中病院を選択した方がメリットは大きそうです。


大学病院と市中病院が連携している初期研修プログラムは沢山あるので、あまりこだわらなくていいかもしれません。

人柄、雰囲気は大事


初期研修先探しは、大学5-6年生でするため、1-2年後だとそれほど人事異動がありません。
そのため、見学先の先輩・上司と一緒に働きたいかどうかで決めるのも一つの手です。
研修中は数ヶ月で部署移動しますが、チューター制度を取り入れているところもあるので、頼れる人がいるのは大きいです。

なるべく後期研修候補に近い場所を選んだ方がいいという意見があるかもしれませんが、初期研修では休暇も保証されていますので、後期研修先を見に行く時間は十分にあります。


【小児科後期研修先の選び方】


後期研修は3年間あります。

おすすめは、

外来診療の経験を積める

あわよくば

3年間同じ外来をもてる


なぜなら、

子どもの成長を見られるから。


・NICUで治療した子が3歳になる。
・アレルギーで診察していた子が、保育園や学校に入学して給食が始まる。
・起立性調節性障害の子が、卒業して進学していく。

何も考えずに小児科後期研修をするのと比べて、子どもの発達についての経験が格段に得られます。


子ども病院だと臓器別に初期研修のようにローテーションするので、入院患者中心になります。
大学病院や子ども病院の入院患者は、稀な疾患が多くなります。

一般診療だけを3年間できるプログラムもありますが、それほど数は多くありません。
大学病院や総合病院を基幹病院として、外病院をローテーション中も週1で基幹病院に外勤できるようなところも選択肢に挙がります。

外来で、自分で診断を付けて、同じ患者さんと年単位のお付き合いをする経験を、ぜひ積んでほしいです。


【子どものこころ専門医研修先の選び方】


まだ研修自体が始まったばかりなので、評価のしようがないのが正直なところです。プログラムによって、本当に全然内容が異なります。

研修自体は、見学陪席も診療経験もそれぞれ単位となります。
プログラムによっては、研修と雇用契約は別物ですので、研修機関で給与が出るとは限りません。

サブスペシャリティ研修を始める世代は、育児・介護などのプライベートな問題も大きくなる時期なので、金銭面や働き方について考えざるを得なくなります。

そういった意味では、どのプログラムを選ぶかというよりも、どの病院に勤めて子どものこころ専門医研修を行うかの方が大事になります。

基幹病院 or 連携A群に在籍する

がよい選択肢になりそうです。

連携A群とは、プログラム機関の中で、子どものこころ専門医指導医がいる機関のことです。

きちんと給料と身分保障をもらいながら、単位も習得できて、確実に3年間で修了できるので、比較的安全です。

子どものこころ専門医研修と縁のない組織に所属しながら、独自に上司を説得して研修をするのは、いろんな意味でハードです。



Q.小児科と精神科、どちらを選ぶべきか 
A.小児科


個人的な意見ですが、本当にちょうど50:50で悩んでいるのであれば、小児科をお勧めします。

①小児科の方が体力的にハードなので若い内に経験しておく


救急やお産は24時間あるため、体力的にハードです。急変や重症で夜中も管理を要することもざらです。
体力も一人一人違うため、だれでも乗り越えられるものではありません。

精神科分野は、子どものこころ専門医研修で経験できる範囲で十分と思います。

②精神科は、あとから転科してもいい


精神科は、いろんな科から転科してくる人がいるので、後からでも十分に馴染むことができます。
多浪生や留年経験者の方々が「不器用だからじっくり取り組める精神科を選んだ」という人も多く、途中から入局しても全然気になりません。

なので、思ったより小児科がきつかったから精神科に移るのも全然ありです。




以上、子どものこころ専門医研修までの道筋について、私なりの意見を書かせていただきました。
地域によって、また個人の事情によっても大きく異なると思いますので、あくまで参考意見の一つとしてご理解ください。

可能な限り、小児科医や子どものこころ専門医を目指す方を応援したいので、コメント欄にご質問ください。わかる範囲でお答えします。





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