panda (掌編小説と短歌)
「パンダの背中んとこの模様ってさ〜、どんなだったっけ〜?」ってかおりがいった。
「え〜。どんなだったっけ〜」わすれたなぁー。なんておもいながら、(はて?そもそもパンダの背中をじっとみたことなんて、わたしこれまでなかったなぁ)と思い至った。
イラストレーターという職種には、いろんなものを描く仕事が舞い降りる。かおりは、駆け出しから数年たったイラストレーターだ。目立つようなおっきな仕事はしてきてないが、地味にちいさなカットから小規模なグッズ制作の一部を担当したこともあったりと、ほそぼそとだけど描いてきた。
これまた地味なわたしという友人をもち、地味な雑談とやらを、週に1回もしくは、2週間に1回くらいの割合で行なっている。
ごはんをたべたり、お茶したり、お酒をのんだり、のまれたり?
最近は、おつまみのセレクトや組み合わせにこっているのがかおりの息抜きらしい。マイナーなメーカーのものから、クラフトなんちゃらにはこれが合うっ!とかいって、その口調がひそかにおもしろいとおもってる。
「それでさぁ〜、こんどの平日。動物園にいかない?パンダに逢いに」
「へ?」
「どう?たしか夏休あとちょっとだけのこってるっていってなかったっけ?」
そうなのだ。なんだかんだとバタバタしていた夏、交代で連休をとることになってはいたんだけど、休もうと休もうとしたときにかぎって、なんだかんだがなんだかんだしてたのだ。
「よし!行こう!レッツゴーパンダだ!」半年分くたっとしてきた手帳をひろげながら、(この日か、この日なら…)と候補をあげていった。
「そうそう休園日ってのもあるから、たしかめて…と」すこしがんばりモードに入りそうになったわたしをみて、こんどはかおりがわらっていた。
○
動物園。
パンダは、笹をたべている。ゆっくりと。
「おーい!パンダ〜!」
ふたりで小声でパンダに地味な声援をおくっていると、笹をたべおわったパンダは、ゆっくりとゆっくりと振り返っていく。
まるまるとしたうしろすがたのパンダがすこしかがんだとき、なぜだかパンダのせなかの模様が(まんまるっ!)とわたしたちにサインをおくってくれたような気がした。
(了)
○
(短歌)