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1人酒場飯ーその27「盛岡編 盛岡秘蔵の定食、バラ定食!」

 さて、どうしようか。

 僕は酒蔵とオカルトチックな話を追いかけて岩手県盛岡市に来ていた。

 皆さんは妖怪とか、ホラーはお好きだろうか?

 僕はバリバリに好きだ。


 まあ、岩手で妖怪と言えば遠野が有名だがそこまで足を伸ばす時間がなく、盛岡市内の神社を巡っていた。

 しかしながら、岩手県はどことなくスピリチュアルな空気がある。奥州の中心地ゆえに寺院の数がとても多く、東北のパワースポットのような位置にあるのだと思う。   
 

 盛岡八幡宮から城跡、そこから「あさ開」さんの酒蔵へ、さらに知らなかったのだが今でも町屋を活かした商店街が並んでいる。不思議な魅力に踊らされているな。


 さらにふと立ち寄った寺で暗殺された日本の総理大臣、原敬の墓跡を眺めながら今の社会情勢に身を寄せる。

 なんて僕らしくない。あちらこちらと歩き回ればそれは当然ながら腹が減る。すでに酒蔵さんで日本酒を試飲させて頂いただけに何か濃い物を食べたくなった。


 こういきなり真っ昼間から呑むと打てば響くとばかりに腹がガツン系の王道を行く肉料理を求めている。

 実は既に目星をつけておいたんだよ、巡る前に良さげな店を。そうなればすぐに直行、最寄りのバス停から駅を挟んで全く真逆の方向へと移動する。


 バスに揺られ、約30分。広い市内の風景に想いを馳せて、恋い焦がれる肉を求めて目的の場所で降りる。

ちょうどバス停の後ろにそのお店はあった。

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 食堂の入り口に藍色の暖簾で「みよし食堂」の文字。まさに地方の大衆食堂そのものを生写しにした様な壮観な店構えだ。お客さんが待つためのコカコーラのベンチがまた良い味を出している。


 流石に中に入ってみれば地元のお客で一杯だったがまた席の形が面白い。大きいテーブルを区切って合席上等の並びになっており混雑にも十分に回せる知恵がある。小上がり席は5人から入れれば呑兵衛達も満足の盛り席もある。

 食堂酒場なんて言うジャンルがここにはぴったり当てはまる。ビールを呑んでる人も、食事に来ている人も、家族連れも、この店では一つ屋根の下の家族なんだよ。


 ここでの注文の仕方は先に席に案内されてから机のメニューを見て、決めたメニューを入り口の食券機で買うと言うなんとも珍しいスタイルだ。こうする事でズレを作り、テキパキと注文を捌いていける知恵が見て取れる。


 なるほど、と思いつつメニューと真剣に睨み合う。隣の家族の皿をチラリ。うむ、なかなか美味そうだ。

 だが、胃袋は決まっている。肉だ、肉。

 メニューの中で名物と押されている「バラ定食」の肉増しに決めた。そこへ生卵をサイドに、半ラーメンをつけた暴力的なストロングスタイル。


 よしよし、食券を購入してサポートしてくれたパートさんに食券を手渡し、セルフのお茶を汲んで席に戻る。

 昂る、驕る、心がはしゃぐ。定食屋の空気ってなんでこんなに高揚に包まれるんだろうか、不思議でならない。


 お、来るのが早い。良いフォーメーションでスピード感に溢れたマクラーレンのようなピットクルーだ、これは忘れてくれ。

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 その圧倒的な存在感に僕は思わず、おおっと感嘆の声を漏らした。これはすごい、豚バラが濃厚なタレを全体に絡めとっていて鈍色の輝きが淡く光る。そのボリュームの凄さはそんなもんじゃない、分厚く切られたバラブロック。

 脂身もしっかり切り落とされず、憎憎しいほどに肉だ。こーれは良いものを引き当てた。カッカと生卵をかき混ぜて、準備は整った、戦いの始まりだ。

 合図はいただきますの一声。もちろんバラから行くぞ。

 うおおおっと唸りそうな程に肉を食べている満足感が襲い掛かる。豚バラの存在感は充分だがそれ以上にタレが強い。

 甘辛くしっかりとした濃い味ガツン系にニンニクとショウガのパンチが口の中で暴れ回る!美味い、これが盛岡秘蔵の定食か!白飯さえもこのバラの前では敗戦の将、進む、箸が止まらない。

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そこへ半ラーメン。澄んだ醤油スープと麺が良いバランスだ。半の暖簾に逃げていない、真っ当なラーメンだ。


さて、なぜ生卵を溶いていたか、分かるでしょう。バラをこの黄色の海に潜らせてやるのだ。叫びたい、この衝動。

しっかりとしたブロックだから脂身と卵の相性がアジャストしていると言うのが分かる。とにかくこのタレシミ生卵を豪快に白飯にかければ強欲卵かけご飯の出来上がり。

くう、最高だ。そこへタレの滴る千切りキャベツ。誰にも邪魔されないこれが男の1人飯だ。


圧倒的な満足感に浸った僕は外に出て空を見上げる。雨か。でも心は澄み切っているぞ。これは夜の店探しも楽しみになった。次の酒場飯は何か、今日の夜を楽しみにしてホテルへと一度下がるのであった。

今回のお店
みよし食堂
住所 岩手県盛岡市青山2−24−21
お問い合わせ番号 019-647-2416
定休日 火曜
営業時間 11時〜14時40分
     17時〜20時50分


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