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目黒のインドネシア料理を一人で食す

 目黒と白銀台、区は違うが隣り合ったエリアで高級住宅街のエリアで僕のような一般民からしたら雲の上の存在のエリアだ。


 同じ目黒がつく中目黒とは雰囲気も全く違う、あちらは小さな酒場がひしめき合って雑然としているが、知れぬ心地よさが喧噪の中に満ちていた、どうしてこうも少し離れるだけで姿が変わるのか。街の発展の変わりようは面白い。


 そんな目黒駅から首都高の高架下を目指し進んでいく、ちょうど目黒と白銀台の中間地点ぐらいだろうか。ふとあるビルの前で足を止める。


 インドネシア料理。名前はよく聞いているが実は深くまで立ち入ったことが無い国の料理だ。思わず1階に銭湯、2Fにインドネシア料理専門店がある不思議なビルの階段を昇り、店の戸を開いた。


「チャべ」今回訪れたのはそう、このお店だ。扉を開けば南国の風とまではいかないが前面にアジアの装飾が施され、気分を高めてくれる。そして飛び交っている言葉も日本語と聞き馴染みない言葉、凄くごちゃまぜになった感じだ。テーブルはすでに埋まっているので一人用のカウンター的な席に案内される、逆に助かる。こっちのほうが全体に目を向けられるからな。


 メニューを手に取り、大看板のメニューを睨む。情報量が多い、この圧巻なメニュー数と創造のできない名前がワクワクする一方で不安をあおる。手元のメニュー本には軽い商会が出ているがやはりそれでもどんなものが出てくるのかは出たとこ勝負なのだ。

 

 さて、メニューを一通り見てみて分かったのはナシゴレンぐらい。ならば飯を軸にして考える。世界一美味しい牛肉料理?これははずせない。それと串焼きはピーナッツソースがかかっているのか。自問自答の結果、世界一美味しいという呼び文句に惹かれ、ルンダン。インドネシア風の串焼きで鳥のサテアヤム、前菜でビールとウンピン(木の実のチップス)を注文した。

 果たしてどんな料理が来るのだろうか、待ち遠しさと店内の異国感が不安とがせめぎ合っている、人やの冒険は目黒の思い出だ。


 最初に前菜として注文していたウンピンが来た。ビールはインドネシア直輸入らしいビン。ウンピン、なんとなくえびせんのような白さが目立っているが、確かにポテトチップスっぽい香りのような感じもあるので何とも言えない。


 1枚手に取ってパリッとかじってみよう。すると、木の実チップスとはこのことだったかということが分かった。表面の塩味に負けない独特な苦味、パリッとした中に苦味と香味が詰まっている。これは楽しい一品だ。苦味が食前のリズムを整えてくれる。その苦味とビールが実にベストマッチで止まらない。


 あっという間に前菜と食前酒を飲み干してしまい、ここからはアルコールから水に切り替えてインドネシア風の串焼きと書いてあったサテアヤムを迎え撃つ。



 なんというか散らしてある揚げた玉ねぎと紫の生の玉ねぎの2段構えで独特なねっとりとしたタレが串焼きに絡んでいる。みたらしのような濃度のタレだ。一串、口へと入れればナッツの味が甘めで鶏肉に絡んで効いている。


これはいい、ピーナッツの豆っぽさがペースト状になることで滑らかに舌にナッツの濃厚さを伝えて、鶏肉の味を引き立てる。それに鶏肉の下味のスパイスと薬味の玉ねぎが泣ける。甘さとピリッとした刺激のバランスがちょうど一串に表現されている、日本のやきとりとは全く違う文化だ。


 

 そして大将のお出ましだ、ナシゴレンとルンダン。ナシゴレンは見慣れた姿に香ばしい香りが鼻をくすぐる。ルンダンはほろほろに煮込まれた牛肉がゴロンと入ったビーフシチューのようで、違うジャンルの煮込みのようだ。



 早速ルンダンから行ってみるとしよう。大きな欠片を口に運ぶ。これはスパイシーだ。牛肉の繊維が柔らかくほろほろと崩れていくのは見た目の通りだが奥ゆかしい甘味と香辛料のダブルハンチが脳天からスゥっと抜けていく。カレーとも違うスパイスのかかり方、ドミグラスとは違う奥行きの味わい、2つの旨味が多重になっている、確かに世界一に選ばれただけのある牛肉料理だ、ステーキとは違う肉の到達点を味わっている気になる。


 ナシゴレンの目玉焼きを崩しながらスプーンを伸ばす。これはまっとうなナシゴレン。まさにエスニックを詰め込んだ焼きめし、こういうド直球な味もアジアン料理の魅力なのかもしれない。


しかし、このナシゴレンにルンダンをかけてやればがらりと雰囲気が変わる。スパイスの魔法が世界をグッと広げてくれた。


一気に完食した、が、舌の悲鳴が聞こえる。最後にココナッツアイスでインドネシアの風土を感じるとしようか。


今回のお店

チャべ

住所 東京都品川区上大崎3-5-4 田中ビル2F

お問い合わせ番号 03-6432-5748

定休日 日・祝日

営業時間 ランチ 11時30分~14時30分

     ディナー 17時30分~22時


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