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大衆鳥酒場の鉄板焼きで呑む
客足が戻りつつある浅草。それでもまだまだ数年前のあの混雑ぶりからは程遠い。夕方、浅草寺の仲見世通り、もう5時近くには通りは徐々に喧騒から離れていく。
その表の喧騒から一本入った路地にある酒屋の経営する角打ちの「酒の大桝」。浅草に立ち寄った際はいつもサッと呑みに入る定番のコースで鍋島の一回火入れを仰ぐ。やはり鍋島は美味い、滑らかで柔らかな酸味が舌を包み込み、甘味が実に心地よく芳醇に広がっていく感じがいい。火入れ一回の名の通りの新鮮さがまた喉元を通り過ぎていく。
結構時間を使ったか、徐々に夕焼けが黒く染まってきたころ、何本かお土産の日本酒を買って外に出る。仲見世は完全に人の流れがまばらになってきたが、その代わりホッピー通り、六区通りのほうの活気は最高潮の時間帯になった。
今回向かうのはそっちの喧騒ではなく、雷門を浅草駅方面に出て一本線路を挟んだムウ側のエリア、つまるところ田原町寄りのほうに足を伸ばす。表通りのアーケードをずっと進み、ホテルが並ぶエリアへ。ちょうど表通りにあるサンルート浅草の間の路地へずいっと進む。
あった、ぽうっと浮かぶ提灯。かつて鶯谷の店舗には足を運んだことがある「鳥椿」だ。「孤独のグルメ」で登場したのは鶯谷の店舗だが、どうやら何店舗か分店が出ているらしく、その中の一軒がこの雷門通りの店舗、というわけだ。
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しかしまあ、ちょっとおしゃれな造りになっているものだ、鶯谷は居酒屋感全開だったが、浅草店はちょっと木色が目立つシックな立ち姿だ。これなら入りやすい。店内へと進み、一人ですと。ちょうど真正面のカウンターが空いているのでそこに腰掛ける。ぐるりと店内を見渡し、当時食べたメニューを思い出す。あ、五郎さん格言集が書いてある暖簾だ、やっぱりここは舞台になったお店の血が流れているな、そう感じる。
とりあえずビール、それにポテサラで軽く始めるか。目の前のメニュー表をひっくり返しながら、何を食べるかを頭の中で組み立てていく。
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メニュー、増えたなあ。結構知らないものの増えているので整理しながら、お決まりのローテは崩さない。鳥焼き、限定品焼き物のせせり、ハムカツ、鳥椿3種の僕流神器。それに食べていないものの中からアボカド鳥メンチ。
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最初に頼んでおいたビールを呑みながら、サッと出してもらったポテサラをつまむ。うん、まごう事なきシンプルかつ滑らかなポテサラだ。具沢山系ではないがマッシュ滑らか系は僕の好み、ど真ん中だ。
調味料として渡されたソースとなぜかのたまごふりかけは使わなくてもいいと思うが、ソースで男の子好みにカスタマイズするのもなおよしだ。
お楽しみをこなしていると目の前で鳥が焼かれる匂いがする、この匂いだよ。名物の鳥焼き、鉄板に乗った大ぶりのシンプルな塩焼き、だからこそこれがいい、これでいい、何も飾り付けないが焼き目と音が耳と鼻を惑わす。それと同時に出してもらったせせり焼き。
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鉄板の音が熱気と歓喜に包まれる、厚い鳥の塊にかじりつけばその歯ごたえは肉感たっぷり。これぞ鳥料理の神髄とばかりに肉の味と脂が広がる、パリッと焼けた表面の香ばしさがまた粋だ。せせりもコリっとした噛み応えとは対照的にジューシーな肉質がよくわかる、首と言えば筋肉質だからこそこの噛みの強さだろう。
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焼き物の次は時間的に揚げ物パートへと突入していくわけだが、注文した2品がまた存在感が凄い。先にハムカツ。分厚い、ものすごく分厚い。薄いハムを上げたタイプのハムカツはカリッとした香ばしさとハムの塩味がちょうどいい利点があるが、厚いハムカツも別な利点がある。
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それは何と言ってもハムの食感が強く感じられるという点だろう。ソースをどっぷりとかけてからしを付けて一気に噛みつく。肉食動物だ、今の姿は胃袋の欲望のままに突き進むオオカミだ。ハムの食感、薄めの衣がまた効いている。
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それとは対照的なしっとり感があるのはアボカド鳥メンチ。鳥のメンチをアボカドと合体させた豪快な一品だ。アボカドごと揚げているので中のアボカドはアツアツトロトロ。やけどしてしまうほど熱いけれど鳥ミンチとの相性が最高、スプーンで穿っては濃厚さと取りのさっぱり感両方を味わうのだ。アボカドごとまるまる揚げてしまう世紀の発明、このことか。
さて、まだ一品はいけるかな。メニューを見て白飯と一緒に鳥焼き追加と蒸し鶏を注文することにした。
蒸し鶏、ネギたれと白い鳥のコントラストが美しい。しっとりとして、心地が良い。ネギのパンチも加わり淡白な中に物語が刻まれているぞ。そして、蒸し鶏で飯を巻く。
蒸し具合に飯がピタリとはまる。蒸し鶏巻飯、いい。
最後は鳥焼きを飯に乗せて自己流焼き鳥丼。これだ、これ。香ばしさが飯を盛り立て、丼として完結している。最後に良い締めを作ってしまったぞ。
鳥の匂いに包まれ、店を出る。浅草っぽくない浅草酒場、こんなとこもよいところよ。
今回のお店
鳥椿雷門一丁目店
住所 東京都台東区雷門1丁目16−12
お問い合わせ番号 03-6231-7336
定休日 無休
営業時間 10時~23時(LO22時)