平等権
相対的平等:「平等」とは各個人の年齢、性別、財産、職業など様々な違いを踏まえて、等しいものは等しく、異なるものは異なるものとして、何が平等かを相対的に考えるという考え方を「相対的平等説」といいます。相対的・実質的な差異に基づく合理的な区別は認められ、不合理な差別は禁止するという考え方で、判例・通説はこの立場を取っています
暴行罪
暴行罪は、他人に対して暴行を加えた場合に成立する犯罪です。暴行罪の法定刑は、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金または拘留もしくは科料です。条文上にも明記されているように、暴行罪は「暴行によって怪我を負わなかった場合」に限って成立します。
暴行とは、他人に対する物理力の行使を意味します。例えば、殴る・蹴る・叩くといった暴力行為が典型例です。さらに音・光・熱・冷気などを用いた物理力の行使も、暴行に当たり得ます。ほかにも、裁判では以下のような行為についても暴行に当たると判断されています。
傷害罪
傷害罪とは、他人の身体に傷害を負わせた場合に成立する犯罪です。傷害罪の法定刑は15年以下の懲役または50万円以下の罰金であり、極めて重い犯罪となっています。判例・通説では、傷害とは「他人の生理的機能を侵害する行為」であると解されています(大審院明治45年6月20日判決等)。
例えば、殴る・蹴る・叩くなどの暴力により相手にケガをさせる行為が典型例です。ほかにも、裁判では以下のような行為も該当すると判断されています。
窃盗罪
窃盗罪は刑法第235条に規定されており、他人の財産を侵害する犯罪(窃盗、強盗、詐欺、恐喝、横領など)の一つとされています。対象となる「財物」については、財産権の目的となる物であれば足りるとされているため、たとえば、空き缶やペットボトルなどであっても「財物」に該当するといえるでしょう。なお、窃盗罪の被害額は「時価」で算出されます。
恐喝罪
恐喝罪とは、暴行や脅迫を手段として人を畏怖させ、財物を交付させたり、財産上不法の利益を得る又は他人に得させる犯罪です(刑法249条)。
財物を交付させるとは、要するに、金品を巻き上げるカツアゲ、ゆすり、タカリをイメージすればいいでしょう。財産上不法の利益を得るとは、債権者に債権を放棄させて借金をチャラにしたり、無償でサービスなどの役務提供を受けたりすることです。他人にその利益を得させるとは、たとえば、「俺の彼女の借金を帳消しにしろ、さもないと殴る」と彼女の債権者を脅して彼女が本来支払うべきであった借金を免れさせたようなケースです。
脅迫罪
脅迫罪は、刑法第222条に規定されている犯罪です。
相手または相手の親族の生命、身体、自由、名誉、財産に対し害を加える旨を告知して(害悪の告知という)脅迫することで成立します。
以下では、脅迫罪の成立要件について、詳しく解説します。
1)生命、身体、自由、名誉、財産に向けられたものであること
脅迫罪は「生命、身体、自由、名誉、財産」の5種類の利益に対して害悪を告知することで成立する犯罪です。逆にいうと、これら以外の利益について害悪の告知をしても、原則として脅迫罪は成立しないのです。それぞれの利益について「害悪を告知すること」の具体的な事例は、下記の通りになります。
(2)害悪の告知があること
原則として、「害悪の告知」がなければ脅迫罪は成立しません。
害悪の告知があったかどうかは相手との関係性や年齢差、体格差、脅迫行為があった場所、時間帯などさまざまな状況をふまえ、客観的に判断されます。たとえば、同じ文言であっても「仲のよい友人とふざけあっている最中に出た言葉」であるのか「トラブルを抱えている相手に対して、厳しい口調で言った言葉」であるのかによって、害悪の告知と見なされるかどうかが変わる場合があります。また、「実際に被害者が恐怖を感じたかどうか」は、脅迫罪の成否に影響しません。
(3)本人または親族を対象としていること
脅迫罪の対象となるのは、脅迫する相手本人、またはその親族です。相手の友人や恋人、生徒などに対する害悪の告知をしても脅迫罪は成立しません。
なお、法律上、ペット動物は「モノ」扱いであるため、本人の飼っているペットの身体や生命に対する害悪の告知は、「本人の財産に対する害悪の告知」となりますので、脅迫罪が成立します。また、自然人ではない法人は対象外ですが、法人に属する個人やその親族に向けられた害悪の告知であれば脅迫罪が成立する場合があります。
名誉毀損罪
刑法に定める名誉毀損罪は、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損する」犯罪です。(刑法230条)
名誉毀損罪の要件1|公然性
「公然」とは、次のいずれかの人に、情報が伝達され得る状態のことをいいます。
インターネットの誰でも見れる掲示板への投稿などは、「不特定の人への伝達」に当たります。一方、少人数しかみられないとしても、グループ内の誰かが他の人に伝えたり広く公表したりすることが予想される中での投稿などは、「多数の人への伝達」に当たり、公然性が認められることもあります。「鍵付きのアカウントだから大丈夫だろう」といった考えは通用しませんので、注意しましょう。
名誉毀損罪の要件2|事実適示性
「事実」とは、人の社会的評価を低下させるだけの具体的な事実をいいます。この事実は、真実であるか虚偽であるかを問いません。そのため、嘘であっても、人の社会的評価を低下させていれば、名誉毀損となります。ただし、死者に対する名誉毀損については、摘示した事実が嘘の場合にのみ処罰されます。(刑法230条2項)
なお、以下のように事実を示すのではなく、主観的な「評価」だけを示す場合には、「事実」の摘示とは言えず、名誉毀損罪にはなりません。侮辱罪には該当し得ますので、注意しましょう。
名誉毀損罪の要件3|名誉の毀損
「名誉」とは、世間の評価や名声などの外部的名誉(社会的評価)をいいます。
信用毀損罪
信用毀損罪(しんようきそんざい)とは、虚偽の風説を流布し、または偽計を用いて、人の信用を毀損した場合に成立する犯罪です。
侮辱罪
侮辱罪とは「公然と,事実の摘示をせずに,人の社会的評価を下げる行為をしたとき」に成立する犯罪です。(刑法231条)
侮辱罪が成立するための「構成要件」は以下のとおりとなります。
肖像権侵害
肖像権侵害となる行為
肖像権は自分の顔や姿態をみだりに「撮影」や「公表」などされない権利です。そのため、無断で顔写真を撮影する行為や、撮影したものをネット上で公開する行為は肖像権の侵害行為になり得ます。また、自分で撮影したものではない写真であっても、その写真を無断で公開する行為は肖像権侵害のおそれがあります。実際、ネット上ですでに公開されている写真について、被撮影者の承諾なしにその写真を他のサイトに無断で転載する行為は肖像権を侵害すると判断された事例があります。
肖像権侵害の基準
肖像権に関しては法律で明文化されておらず、肖像権侵害に該当する基準は明確には定められていません。しかし、被撮影者の受忍限度内かという観点が考慮される基準といえるでしょう。
肖像権の侵害になるケース
肖像権の侵害にならないケース
プライバシー権侵害
プライバシー侵害は、以下の3つの要件を満たす情報が公開された場合に、成立すると判断される可能性があります。
例えば、「あいつは親戚から多額の借金をしている」という事実はプライバシー情報を構成する可能性が高いと思われます。対して、「あいつは朝食にパンを食べたことがある」という事実は、公開されようがされまいがどうでもいい情報ですので、プライバシー情報ではないと評価される可能性があります。
該当情報例
これらは例示列挙であり、上記の3つの成立要件を満たしていれば、これ以外の情報もプライバシー情報となり得ます。
プライバシー権は憲法上保障された基本的人権
プライバシー権は、日本国憲法十三条の解釈により、保障される基本的人権であると考えられています。
もっとも、上記のように、プライバシー権は憲法の規定によって明確な定義が定められているものではないため、時代の変化にしたがって解釈が変わる余地はあります。
詐欺罪
詐欺罪は刑法第246条に規定されている犯罪で「人を欺いて財物を交付させた」場合に成立します。わかりやすい言葉を使えば、他人から金品などをだまし取った場合に詐欺罪として問われると考えれば良いでしょう。
また、刑法第246条2項によれば「(人を欺くという方法によって)財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させた者」も詐欺罪で処罰されます。
これも平易な表現では「代金支払いを免れる」と言い換えられるでしょう。
さらに、刑法第246条の2では「人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報もしくは不正な指令を与えて財産権の得喪もしくは変更に係る不実の電磁記録を作り、または財産権の得喪もしくは変更に係る虚偽の電磁的記録を人の事務処理の用に供して、財産上不法の利益を得、または他人にこれを得させた者」についても、電子計算機使用詐欺罪として詐欺罪と同様に処罰されます。これは、たとえば銀行システムなどに偽の電磁記録を作ったり、悪用したりして銀行から他人の財産を盗む行為にあたります。
強盗罪
強盗罪は、暴行または脅迫を用いて他人の財物を強取したり、財産上不法の利益を得る、または、他人に得させることで成立する犯罪です。刑法236条に規定されています。
不同意性交等罪
被害者が、性交等について「同意しない意思を形成、表明、全う」することが難しい状態で性交等を行う罪が、不同意性交等罪です(刑法177条)。被害者が性交等について相手に嫌だと言えない状態や、被害者が抵抗できない状態などに乗じて性交等を行うと、不同意性交等罪に問われる可能性が高くなるでしょう。
強盗関連罪
以下では、強盗罪に関連する罪についてご紹介します。
少年犯罪
少年法は、少年が起こした刑事事件(少年事件)についての処理方法を定めた法律です。通常の犯罪は刑事訴訟法という法律に従って処理されますが、少年事件については、犯人が少年であるという特徴があります。少年は成人と異なる性質があるため、成人とまったく同じように扱うのは適切とはいえません。そこで少年事件については、刑事訴訟法の適用を制限し、少年の特性を考慮した少年法に従って処理するものとされているのです。
14歳以上の未成年なら刑罰を受ける可能性あり
14歳以上の未成年者が、犯罪を犯した場合「犯罪少年」と呼ばれ、逮捕される可能性があります。逮捕後は、成人の事件とおおむね同じ手続きを経て、家庭裁判所に送致されたあと、適切な処分が決定されます。
14歳未満の未成年は刑罰を受けない
14歳未満、すなわち13歳以下の者は罪を犯したとしても刑事罰は受けず、その代わりに、刑罰法令に触れる行為をした「触法少年」として、児童相談所へ送致されたり、家庭裁判所へ送致されて保護処分を受けたりします。
少年への損害賠償請求
少年犯罪の損害賠償について過去のケースを見ると、損害賠償請求することは可能とのことです。しかし、責任能力を持たない未成年が第三者に対して損害を与えたときには、本人に損害賠償責任はないとのことです(民法712条) 。しかし、親権者には監督責任があるので、責任能力のない未成年が犯罪を犯したときには、親が損害賠償責任を負わなくてはならないようです(民法714条1項) 。責任能力がない年齢というのは、大体12歳くらいまでとのことで、13歳の子供の犯罪の場合は原則本人に賠償責任が発生するとのことです。しかし、これもケースバイケースらしく、13歳以上の子供の犯罪でも親が監督責任を果たすべきときに怠っていれば、親子共々損害賠償責任が発生するようです。ただ、13歳以上は本人に賠償責任があると言っても、中学生や高校生では収入がないので、親が子供に代わって賠償金を支払っているケースが殆どとのことです。
精神障害者の犯罪
放火や殺人事件などで、被疑者・被告人が精神障害者等である場合、責任能力が問われます。責任能力とは、「行為の善悪を判断する能力(弁識能力)」と「悪いと分かった行為を止める能力(行動制御能力)」を指します。これらの能力が欠けている場合、刑事責任を問われず無罪になります。