一流の研究者になるにはどうしたら良いのか実際に一流の研究者に聞いてみた〜ビジョン編
研究者の中には、トップジャーナルに論文を常に掲載し、分野を超えて有名になる研究者がいます。
去年の夏に、ニューヨークで社会心理学の大学院生を対象としたサマースクールと言うものに参加して来ました。僕は「道徳心理学」と言うテーマのクラスに分けられ、ハイレベルな仲間と一流の研究者たちに囲まれた2週間をみっちり過ごして来ました。幸い、僕のクラスの講師陣たちは道徳心理学の最先端を行っている、イェール大のポール・ブルーム教授と、ブリティッシュ・コロンビア大のアジーム・シャリフ教授と、とても豪華なラインアップでした。
特にブルーム教授はたくさんの動画に出ているので、知っている人もいるのではないでしょうか。個人的には、以前自習に使っていたイェール大の心理学講座の無料動画の講師だったのでとても感慨深いです。(興味があれば、彼によるイントロ・心理学をみてみてください)
こんな貴重な機会をいただいたので、たくさんの刺激を貰って、専門的な知識だけでなく、研究者としてどうあるべきかなど、たくさんのことを学ばせてもらいました。そこで、彼らの考える「一流の研究者になるにはどうしたら良いのか」と言う問いの答えを探ってみることにしました。
前に「一流の研究者になるにはどうしたら良いのか実際に一流の研究者に聞いてみた〜パワームーヴ編」と言う記事を書きました。興味があれば読んでみてください。
そして今回は、彼らならではの回答が返って来ました。
答えはまとめるとこうです:
「誰もまだ問題だと思っていない問題を見つけ、先に問題提起をするような存在になれ」
彼らは常に、新しい領域のテーマをどんどん開拓して行って、常に普通の研究者の1歩、2歩先を行っているような印象を受けます。特に道徳心理学と言う分野は、人のモラルを研究します。時代が変わるに連れて、新しい形のジレンマや、モラルの問題が次々と出て来ます。彼らはそういった現象に敏感で、心理学的を使って鋭い問いかけをします。実際に、アジーム・シャリフ教授に言われた一言は、かなり刺さりました。
「自分たちは、特に完璧に研究をできる訳ではない。ただ、荒削りでも、いつも他人が研究したくなるようなテーマを先に見つけ、多くの研究者が手をかけ始めた頃には、すでに次のテーマを見つけるようにしている。」
実際にシャリフ教授は、誰よりも早く「AI自動運転とモラルの問題」に取り掛かり、今では世界的に研究者が注目している、また社会的に注目を浴びる研究領域になっています。
今まで、自分はどちらかと言うと既存の研究領域を、いかに突き詰めて研究する事ができるか、に重きを置いて来ました。ただ、彼らの研究をみていると、分野を発展させて行くために、他人が研究できるテーマを見つけてあげる、と言うことも立派な研究スキルの一つになるのだとわかります。彼らには、特に細かいミスは気にしなくていいし、ミスは他人があとで直してくれれば良い、くらいな印象すらも受けました。そういった姿勢には、「新規テーマを開拓すること」に大きな意義と自信を見出している理由があります。
自分も、「誰もまだ気にもとめてないけど、社会的に研究する意義が大いにある」研究テーマを、自分なりに見つけていく姿勢を持ちたいと思いました。