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『告白の瞬間』(オトナの恋愛ラジオドラマ・イシダカクテル_2021年10月12日(再放送:10月16日)オンエア分ラジオドラマ原稿)

(本作は4月27日放送分「仲良くなりたい」、9月21日放送分「告白のタイミング」の続編になる第3話です)

ゼミで一緒のあの娘に僕は恋をしている。

黒いショートボブの髪色はいつの間にかブルーアッシュになっていた。
彼女の髪は会うたびにころころ変わる。
少し目尻の下がった大きな瞳にしっかりした眉毛。
きれいに真っ直ぐ伸びた鼻筋に控えめな小さな鼻。
薄い上唇に反してぷっくりとした下唇。
端っこは常に上がっていて、笑うときは口を大きく開ける。
これはずっと変わらない。
彼女の笑顔を見て死なない奴いるのかよマジで。

ネイビーのボンバージャケットの下に赤いカットソーが見えて、
チェック柄のロング丈プリーツスカートを履いた足元はきれいに光を受けて輝くパテントのレースアップシューズ。
それをコツコツと鳴らして僕の隣を歩いている。
だけど彼女は僕の恋人ではない。

9月に一緒に行った「リアル脱出ゲームおそ松さん」で脱出に成功したら彼女に告白すると決めていた僕は、もちろん脱出に成功し、告白をした。

男「あの、好きです!付き合ってください!」
女「…うん、これからもよろしくね」

このやりとりだけ聞けば僕の告白は成功し、彼女は僕のガールフレンドになったように思える。
しかし実際はまだ彼女はフレンドのままだ。
大事なのはその前の彼女のセリフだった。

女「ほんとすごい!簡単に脱出成功したね?あの謎とかすぐわかるのほんとすごい」
男「…」
女「てかほんと好きだよねリアル脱出ゲーム」
男「…」
女「また行きたいなー。またやんないかなー」
男「…」
女「ねえ、聞いてる?」
男「…あの、好きです!付き合ってください」
女「…うん、これからもよろしくね」
男「え、いいの?」
女「私も大好きだしリアル脱出ゲーム。とことん付き合うよ」
男「……あああ、よ、よろしく」

僕に対する誹謗中傷は甘んじて受け入れる覚悟だ。
言い訳はしない。
ただ頭がいっぱいで告白前の彼女の言葉が聞こえてなかっただけだ。
次はうまくする。

そんなわけで彼女はまだリアル脱出ゲームを一緒に行く友達だ。
そしてこれからは僕から誘うと決めていた。

男「知ってる?かしいかえんが今年いっぱいで閉園するんだって」
女「知ってる。ちょっと切なかったもん」
男「行ったことあるんだ?」
女「もちろん。子供の頃よく家族で行ってた」
男「そっか」
女「あれでしょ、リアル脱出ゲームでしょ?」
男「あ、知ってた?」
女「うん」
男「夜のゾンビ遊園地からの脱出」
女「絶対いく」
男「いやちょっと、誘う前に」
女「誘ってくれるんでしょ?」
男「ああ、えっと、一緒に行きませんか」
女「きみたまに敬語になるよね」
男「え、そう?」
女「うん、でもそういうところ好きだよ」
男「おお、あ、りがとう、ございます」
女「ふふふ、どういたしまして。絶対行きます」

今度こそ告白するぞ、そう思っていた。
けれど、待ち合わせに現れた彼女は、ゾンビだった。

男「え、ゾンビ?」
女「うん、サイトとかちゃんと見てないの?私たちゾンビなんだよ。かしいかえんはいまゾンビの楽園になってるの」
男「そうだった」
女「ハロウィンだし」

彼女のゾンビメイクは、いわゆるハロウィンで女の子が可愛い地雷メイク的なそれではなかった。
片目は腐っていて頬や額には無数の切り傷が刻まれたくさん血が流れていた。口は大きく裂け首も切られたように血が出ていた。服は所々破れていて、泥や血がついていた。

男「僕、何もしてないや」
女「きみも顔だけメイクしてあげるよ」
男「あ、ありがとう、ございます」

脱出に成功しても、告白するのは今日じゃないな、と僕は思った。

おしまい


※こちらの小説は2021年10月12日放送(21:00~21:30)
LOVE FM こちヨロ(こちらヨーロッパ企画福岡支部)でラジオドラマとしてオンエア https://radiko.jp/share/?sid=LOVEFM&t=20211012210000

※こちヨロは土曜日13:30~14:00でも火曜日の放送をREPEAT放送でお届けしています。

リアル脱出ゲーム 全国夜の遊園地シリーズ
「夜のゾンビ遊園地からの脱出」福岡公演 

かしいかえんシルバニアガーデン
2021年10月30日~11月23日 土日祝で開催
★公式ホームページ
https://realdgame.jp/zombiepark/
★福岡公演チケット(チケットぴあ)
https://t.pia.jp/pia/ticketInformation.do?eventCd=2122510&rlsCd=001
★かしいかえんシルバニアガーデン
https://www.kashiikaen.com/

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