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30年目の真実…松井5敬遠を高知新聞はどう伝えたか 1992年夏・明徳対星稜~紙面で振り返る「高知の高校野球」
純白。全力。正々堂々。そんなフレーズが浮かんでくるのが高校野球だが、その在り方を巡って激しい議論が湧き起こった一戦があった。1992(平成4)年夏の甲子園2回戦、明徳義塾高校(高知)対星稜高校(石川)。のちにプロ野球の巨人、メジャーリーグのヤンキースで4番を張る強打者・松井秀喜をどう封じるか。明徳の監督・馬淵史郎とその愛弟子たちが採った戦略は「敬遠」だった。しかも徹底的な…。その結果、罵声が飛び、メガホンが投げ込まれて試合は中断。明徳は見事に逃げ切ったのだが、当事者たちの思惑をはるかに超える騒ぎになった。明徳の地元・高知県内で発行している高知新聞は、この一戦をどう報じたのか。折に触れて取り沙汰される「松井5敬遠」から今年で30年。節目の夏を前に、紙面を振り返る(敬称略)。
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主人公は当然「明徳」
見出しは、記事のトーンや報道姿勢をうかがう上で重要だ。明徳対星稜を報じた8月17日付朝刊の運動面から見てみる。見開きで、上の画像は左面だ。「明徳 鮮やか先制攻撃」の横見だしが一番大きく、パンチが効いている。やはり地元の明徳が主人公だ。
続いて、「強打・松井を徹底敬遠」の縦見出し。やはりあった、敬遠の2文字。世の中的にはこちらがメインの見出しだったかもしれない。しかし高知新聞は明徳を県代表として送り出した高知県の地元紙だ。あくまでも先制攻撃を浴びせて主導権を握り、松井は敬遠で封じた、という報じ方。見出しを「徹底」敬遠としたのも、戦術的な敬遠と見るニュアンスが伝わってくる。
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