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商店街で待つ
普段、商店街の中にある宿で店番をしている。
高知の中心地から少し東側に位置し、仕出し屋や寝具店が軒を連ねる昔ながらの商店街だ。
これまで商店街で買い物をしたことはあっても、店側の視点で街を眺めるのは初めて。
フロントは歩道に面しているので、行き交う人を観察しながら、その日のゲストを待つ。
宿の両隣は金物屋と寝具店。
金物と布団の販売が本業だとは思うけれど、なぜか両店とも店先で野菜を売っている。
出勤したら、まず、その日の野菜を確認するのがわたしの日課だ。
ナス詰め放題をしていた日は、店主に「まだ入る、まだいける!」と応援されながらパズルみたいに詰め込み、袋から溢れんばかりのナスを抱えて宿に戻った。
スーパーまで行かなくても、安くて新鮮な野菜が手に入る商店街はありがたい存在だ。
商店街を歩くと、面白いものに出会うことがある。
「ご自由にどうぞ」というポップと共に、うちわやハンガー、時には浴衣の帯が無料で置いてあることも。数時間後に前を通ると量が減っているので、もらい手が見つかったのだろうと想像する。
下校時間になると、商店街は小学生の通学路に変わる。「ただいまー!!」と店に向かって大声であいさつしながら帰宅していく姿が微笑ましい。
そして、鮮魚店のおじさんはいつも赤いタオルをはちまきのように頭に巻いて颯爽と歩いてゆく。
書き始めたらキリがないくらい、ここはおもしろいものに溢れている。
「シャッターが閉まってるね」という人もいるけれど、「けっこう面白い場所なんですよ」と伝えたくて、こうして書いてみた。
野菜を吟味する主婦、
菓子店に入っていく若者、
そろばんを習いに来る子どもたち。
一日の中で時間の流れとともに顔ぶれが変わる。
高知の生活の営みが見えるのが、商店街のいいところだ。
わたしは今日も商店街を眺めながら、ゲストを待っている。
このよみものを書いたのは、
このよみものは高知県の商店街で、#高知の歩き方のZINE販売会をするにあたり、書き下ろしたものです。
当日、商店街のマップとともに、エッセイ付フリーペーパーとして配布しました。
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ポップはひとつひとつ手書きしました。
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やっぱり、紙ものを手渡してお話しする、というアナログなやりとりは楽しい。
またどこかでZINEをお渡しする機会を設けたいなと思います♪
高知暮らしの日々のつれづれを綴る #高知の歩き方
なんでもないわたしの日記エッセイです。
田舎を楽しむヒントをおすそ分け。